月神の娘

続・創世の竪琴【月神の娘】29・真の闇王、闇の貴石

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攻撃でなく捕獲。闇の女王の愛?…とか訳の分からない最終バトルに突入!
そして、その結果……

月神の娘/29・真の闇王、闇の貴石

このページは、異世界スリップ冒険ファンタジー【創世の竪琴】の続編、【MoonTear月神の娘】途中の展開です。
渚の異世界での冒険と恋のお話。お読みいただければ嬉しいです。
(異世界スリップ冒険ファンタジー【続・創世の竪琴・MoonTear月神の娘】お話の最初からのINDEXはこちら
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闇の紫玉

「うおおおおおおお・・・・・・」

-ズズズズズ・・・-

「え?」

「ん?」

5体の黒水牛を捕獲し見動きできなくすると同時にその姿は消えゆき、周囲はゆっくりと変化する。

気づくと渚とイル紫の水晶にその周囲を囲まれ、それに阻まれて、姿は見えていても別々に別れた状態となっていた。

後方で周囲に気を張り巡らしていたファラシーナやリーも水晶の壁に阻まれ、お互いの行き来はできなくなっている。

「なんだい、これ?黒水牛の動きを止めたお返しってかい?」

「イル!」

「渚!」

だが、そんなことで怯む渚とイオルーシムではなかった。
今一度剣を構えなおし、お互いの姿が見える水晶の壁に向かって渾身の一撃を加える。

-ガチッ!-

が・・・刃こぼれもしなかったが、水晶に傷もつかない。

一瞬どうしようか、と迷ったあと、2人は同時に剣を元に戻し、竪琴を手にする。

そして、お互いの意を確認すると、同時に奏で始めた。

創世の竪琴の音に乗り、金と銀の光玉が飛び、それは水晶の壁を崩して混ざり合う。

「やったっ!」

すっかり壁が取り除かれ、再び合流した彼らは喜び合う。

「あ・・あれは?」

洋一の指したそこ、彼らの目の前、暗闇の中に、紫銀に輝く人間大の結晶があった。

「あ・・・も、もしかして、これが?」

それが、バッコスから聞いた闇の大元、闇の紫玉ではないか、と思いつつ、渚はイオルーシムを見つめる。

「多分な。」

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闇の声

『我が闇世界は新しい時を迎えるであろう。』

「え?」

その紫玉から聞こえた声に、全員はっとして意識を集中する。

『我が意ではないのだが・・・そこまでの繋がりを見せられては仕方あるまい。』

「意ではない?」
イオルーシムが聞く。

『当たり前だ。だれが太陽神の加護を受けたものを闇世界に受け入れるというのだ?』

渚はイオルーシムを指さし、声が指している人物が彼なのか、と聞く。

『だが、ディーゼにとっては、我も、そして我を捨て去った太陽神も同じラーゼスなのだ。・・・仕方あるまい。』

渚の問いには答えなかったが、そうなのだと察せられた。

「じ、じゃー、偽の光の神殿も・・さっきの黒水牛もあなたが?」

『そうだ。』

それで竪琴の光が黒水牛を倒さなかったのだ、と渚は納得する。

『戻るがいい、第七層に。光は、まぶしくていかん。』

アフターフォローは失敗?

すうっと周囲が変化した。渚たちは浮遊城の中へ、そして、第七層に転移していた。

『ディーゼを本気で怒らせると、後が恐いのでな。』

転移してもしばらく彼らを覆っていたその紫玉からの闇の気は、その言葉を最後に
ふっと消えた。

「イル・・・聞いたかい?」

「ん?」

からかうような笑みをみせるファラシーナに、イオルーシムはなんのことだろう、ときょとんとする。

「本気で怒らせると恐いんだってさ?!」

「あ・・・・・」
思わずイオルーシムはちらっと渚に視線を飛ばす。

「失礼ね!誰が恐いんですって?」

「ほら・・・イル、しっかり向こうでのことをフォローしておかないと!」

「あ、ああ。」

きっと睨んだ渚に、イオルーシムとファラシーナは苦笑いを交わしていた。

「でも、どうしたら記憶が戻ったの?」

「あ、ああ・・それか・・。」
渚の問いに、イオルーシムは照れ笑いをしながら答えた。

「言っただろ?渚の打った頬が・・いや、心が痛かったって。」

「あ、うん。」

「アパートに戻って、オレ、頬を押さえながらじっと考えてたんだ。
なぜこんなにも痛みを感じるのか、そして、渚が気になるのか。」

「そうだよな。
ほかにいっぱい魅力的な女の子がいたっていうのにな?」

「う・・・・」

洋一のさりげない嫌味にイオルーシムは焦る。
が、即立ち直り、イオルーシムは洋一を見る。

「それを君が言うのか?」
洋一も同じだろう?とイオルーシムは視線を投げかける。

「う・・・」
今度焦ったのは洋一の方である。

「と、ともかく、気になって考え込んでいたんだ。渚の事を。
で、偶然にもそのとき目の前にあった月下蝶の不思議な力で、気が付くと渚の部屋に転移していた。」

「私の・・部屋に?」

「ああ。記憶を無くしていたから、何が起こったのか最初さっぱり分からなかった。
でも、ふと目の前のパソコンに気づいたんだ。」

無人ということと、付けっぱなしになっていたことから、洋一と優司が転移してきた後だと判断できた。

「で、何気なくゲームをしてた。」

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「ゲーム・・」

「創世の竪琴だった。」

はっとして渚はイオルーシムの瞳をじっと見つめる。

「冒険が進むに連れ、ぼんやりとだけど、少しずつ記憶が蘇ってきたんだ。
それから、続編らしいものもやった。」

「イル・・・」

「で、気づいたら、あの空間にいたんだ。
まだ不確かだった残りの記憶は一気に戻った。」

イオルーシムはそっと渚を引き寄せた。

「初めて会った時、言っただろ?
オレの気持ちは変わらないって。
事実、あの時からオレの気持ちは変わっちゃいない。
渚はオレのものなんだから。」

うっとりとイオルーシムの言葉に耳を傾けていた渚は、最後のその言葉で、出会ったときの記憶が蘇る。怒りと共に。

すっとイオルーシムの腕をふりほどき、渚は睨む。

「もの扱いしないでって言った事、覚えてないの?」

「あ・・だ、だから、そういう意味じゃなくて。」

「私の意志なんていっつも無視して、命令口調なんだから。」

「・・・な、渚・・そうじゃないって!」

「知らない!」

「な・・・・渚ぁ?」

くるっと背を向けた渚に、ひたすら困惑するイオルーシム。
全員苦笑いで2人を見ていた。

 

▼月神の娘・その30へつづく

続・創世の竪琴【月神の娘】30-完-異世界トリップ・冒険は続く

闇世界の最下層で闇の貴石にたどり着いた渚たち。 渚の愛(女神ディーゼの愛)が貴石の心に届いたのか、無事に一行は第七層(人間界に一番近い層)に戻る。 月神の娘/30・-完-・異世界トリップ・冒険は続く ...

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