月神の娘

続・創世の竪琴【月神の娘】18・消えた渚

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自宅の玄関先、しかも弟優司の目の前でイオルーシムの胸に飛び込んでいった渚。
その一瞬後、そこから消えた2人に、弟優司は焦って外へと飛び出すがどこにも2人の姿はない。
どういうことなんだ?どうなったんだ?姉の帰りを待ってもんもんと夜を過ごし、その翌朝…

月神の娘/18・消えた渚

このページは、異世界スリップ冒険ファンタジー【創世の竪琴】の続編、【MoonTear月神の娘】途中の展開です。
渚の異世界での冒険と恋のお話。お読みいただければ嬉しいです。
(異世界スリップ冒険ファンタジー【続・創世の竪琴・MoonTear月神の娘】お話の最初からのINDEXはこちら
月神の娘のこの前のお話は、ここをクリック

無断外泊

「優司、渚、呼んできてちょうだい。」

朝食に階下へ下りていった優司に、母親が不機嫌そうに言う。

「あんたたちって休みだというと不規則になるんだから・・・たまにはきちんと朝食取らないとだめよ?」

「はいはい。」

といってもその日は日曜日。
母親もゆっくりしている為、いつもより遅い朝食ではある。

トントントン!と階段を上がりかけ、優司はハタ!と気付いた。

「やっべーーー・・・姉貴、無断外泊かよ?・・・しかも、男ンとこ?」
くるっと向きを変え、優司はダイニングに戻る。

「あ、ごめん、母さん。確か今日は用事があるとかで・・・もう大学行ったんだった。」

「え?そう?母さん、聞いてないけど。」

「あ、うん・・・昨日の夜電話があってさ、母さんに言っておいてくれって、オレに。」

「そう。ならいいけど・・・。」

夜、男が迎えに来て出ていったなんて言ったら、大嵐になる、と優司は判断し、嘘をつくことにした。

「帰ってきたらこのお返しにたっぷりおごってもらうからな、姉貴。」

などと自分の部屋で一人でぶつぶつ言いながら、ふと優司は心配になる。

「帰ってくるのか、姉貴?」
まるでそこからかき消えたようにいなくなった渚と青年。

(ま、まさか・・・・誘拐?・・・い、いや、そうなら身代金を請求してくるよな?
それにオレん家、そんな金ないし。)

それにしても消え方が普通ではなかったと優司は一人心配になっていた。

-ピンポーーン!-

ちょうどそんなとき、洋一がやってきた。

前日は気まずい雰囲気のまま、追い返すように別れてしまったことが気になっていた。
それからゲームのことも話し合ってみたかったこともあり、顔を会わせにくかったことは確かだが、ともかく勇気を出してやって来たのである。

「あ・・確か、山崎・・さん?」

「そうだけど。えっと・・優司君だったっけ?」

「あ、うん。」

渚が姿を消したことと洋一は関係ないな、と思いながら、姉貴なら留守だよ、と言おうとした優司は、はっとひらめく。

「ち、ちょっといい?山崎さん?」

「何?」

「いいから、ちょっと。」

優司はきょとんとしている洋一を引っ張るようにして自分の部屋に連れていった。

「あ、あの・・それで、何か?」

姉貴に手を出すな!とでも怒鳴られるのか、と部屋へ入った洋一は少し焦りながら口を開いた。

「えっと・・・大したことないんだけど・・・・ちょっと気になる事があって・・。」

「気になること?」

言いにくそうに話し始めた優司に、なぜか不安を感じながら洋一は聞く。

「あ、あのさ、姉貴の知り合いで、金髪のハンサム・・・見たことないかな~?
大学の留学生か何かかもしれないんだけど?」

「金髪の?」
イスに座っていた洋一ががばっと立ち上がった。

「は?」
顔色が変わるような事なのかと優司は驚いて洋一を見上げる。

「そ、それで、どうしたんだ?ここへ来たのか?か、桂木は?」

明らかに洋一は動揺しているその様子に、優司は2人の仲は確かなんだと確信する。
が、今、問題としているのはそれではない。

「昨日の夜来て・・・」

「昨日の夜?それで桂木は?」

「あ、そ、それが・・・」

話して信じてくれるだろうか、と優司は口ごもった。
一瞬で姿が消えたなど、誰が。

「ま、まさか・・まさか奴が桂木を連れていったなんて言うんじゃないだろうな?」

「え?」

がしっと優司の肩を掴んで、大声で言った洋一に、優司は驚く。
が、渚が好きなら、焦るのも当然だと思い直す。
ともかく問題はその連れていった方法である。

「そ、それが・・・分からなくて・・。」

「分からない?」

「一瞬で消えたような気がしたんだけど・・・・
一緒にでかけたのかどうか・・分からなくて・・・」

優司のその言葉に、洋一はぐいっと顔を近づけて確認する。

「一瞬で消えた?2人一緒に?」

「あ、はい。」

あまりにも現実味のないその話に、そこで大笑いされるだろうと思っていた優司の耳に、思いがけない言葉が入った。

「あいつ・・・実力行使か?
・・・・・だけど、こんな目に付く方法で連れてっていいのか?」

「山崎さん?」

金髪の青年も、そして、一瞬で姿を消したことにも心当たりがあるような洋一の言葉に、優司は怪訝そうな表情で見つめる。

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「あ・・・・・家の人は?」

「まさか・・こんなこと両親には言えないですよ。だから、オレ困って・・。」

「だよな。」

ぐっと握っていた優司の肩から手を離し、洋一は床へ座り込んだ。

「それを知ってもどうすることもできないことも確かなんだけどな。」

大きくため息をつく洋一。

その態度に何か自分の知らない事が、しかも渚にとって重大な事が起こっていると思った優司は、事の説明を洋一に詰め寄った。

「山崎さん、何か知ってるんでしょう?
教えてください!どんなことでもいいですから!」

洋一なら知っているに違いない!優司はなかなか話そうとしない洋一に、断固として迫っていた。

 

▼月神の娘・その19へつづく

続・創世の竪琴【月神の娘】19・光の神殿

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