月神の娘

続・創世の竪琴【月神の娘】28・ようやく合流

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いよいよ敵と決戦?!闇世界の最下層へ降りた渚ら5人。
足下さえ見えない暗がりも、女神ディーゼの竪琴さえあれば道は開ける!

月神の娘/28・ようやく合流

このページは、異世界スリップ冒険ファンタジー【創世の竪琴】の続編、【MoonTear月神の娘】途中の展開です。
渚の異世界での冒険と恋のお話。お読みいただければ嬉しいです。
(異世界スリップ冒険ファンタジー【続・創世の竪琴・MoonTear月神の娘】お話の最初からのINDEXはこちら
月神の娘のこの前のお話は、ここをクリック

闇の最下層へ

浮遊城で最下層へと転移し、その地を踏みしめる。

「本当に真っ暗だな。」

「そうね。部長と優司はお城にいた方がいいんじゃない?」

「そうだな。」

最悪でも足を引っ張るようなことはしたくなかった。
洋一と優司は目配せして城へと戻ろうとした。その時・・・

-ズズン!-

「わあっ!」
暗闇の向こうから突如放たれた爆風で、全員吹き飛ばされる。

「渚、大丈夫かい?」

「優司、部長、大丈夫?」

「あ、ああ・・なんとか。桂木は?」

「私は大丈夫よ。」

「オレも・・ちょっとぶったくらいで。」

「あたいはなんてことないさ。」

「私も大丈夫です。」

暗闇の中でお互いを確認しあい、声を頼りに渚たちは集まる。

「誰が?」

「やっぱ、例の・・魔族?」

「とにかく、バラバラにならない方がいいみたい。」

「うん。」

「そうですね。」

が、その爆風は連続して襲ってきた。
しかも方向がバラバラで次はいったいどっちから来るのか分からない。

「渚、こうなったら竪琴だよ!」

「そ、そうね。」

イヤリングに手をあて、竪琴を手にし、渚は弾き始める。

-ポロロロロ・・・ポロンポロロ・・・-

「あ・・周囲の闇が・・」

完全には明るくはならないが、暗闇も薄らぎ、数歩離れたところまで確認できるようになってきた。

「な、なんだ・・あれ?」

「げ・・・・」

周囲は、見るからに恐ろしげな水牛が5体。
2本足で立ち、敵意むき出しの真っ赤な瞳が全身に恐怖の旋律を走らせた。

かざしたその大きな片手から放たれた波動が渚たちを襲ってきていたらしい。

鋭く長く伸びた爪のあるその手も全身も闇色で、バッコスよりはるか巨体であり、そして、彼から感じられるようなやさしさや温かさは、当然のごとくまるっきりない。

「来るよっ!」
ファラシーナが叫んだ。

その弾道を読み、リーは渚と優司を、そしてファラシーナは、洋一を移動させる。

が、5体が交代で放つそれを完全に避けきるのは無理というものだった。

「リー!お願い!」

「分かりました!」

リーが方円守護の術を唱える。
渚はその中央で竪琴を奏でる。

が・・・・黒水牛に変化はみられない。

魔族と話し合いに来たつもりの渚は、確かに黒水牛を倒そうと思って竪琴を弾いたのではないが、それでも、攻撃を止めてくれるようにと願いながら弾いたつもりである。

「なぜ・・女神の竪琴が効かないの?」

竪琴の音に乗り、光玉が彼らに向かって飛んでいくのに、彼らに触れると同時にそれはまるでシャボン玉がパチン!とはじけるようにに消えてしまう。

「な、なぜ?」
焦る渚たち。

「それは、奴らが闇の大元が放った者だからさ。」

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颯爽と?勇者登場?

「え?」
全員が振り返ったそこに、イオルーシムが立っていた。

「イル!」

「渚。」

ばつの悪そうな笑みをみせ、イオルーシムは渚に歩み寄る。

「ちょいと、イル!今まで何してたんだよ!
渚を一人にしておいて!それでよく恋人が務まってるもんだね?」

「あ、ああ・・そう言われると・・立つ瀬がないな・・。」

ファラシーナの険しい顔を見、イオルーシムは苦笑する。
が、その片手には徐々に大きくなってきている火球があった。

「いけないっ!次が来るよっ!」

そんな事を言ってイオルーシムを責めている時ではなかった。
弾道を見極め移動しようとしたファラシーナを、イオルーシムは軽く肩を叩いて止める。

「イル?」

「渚。」

まだ呆然としてイオルーシムを見つめていた渚をぐいっと手元に引き寄せ、イオルーシムは襲いかかろうとしている爆風弾を睨む。

「神龍ファイラとの盟約に基づき、我、全てを焼きつくさん・・・『赤龍焦炎!』」

ゴゴ~~~ッ!とイオルーシムの片手の火球から2頭の真っ赤な龍が飛び出す。
それは、交互に交差しながら、目標に向かっていく。

「す、すげぇ~・・・」

「特撮みたいだ・・・。」

闇を裂き飛んでいく火龍。
それは映画のスクリーンで見た魔法。
いや、現実に目の辺りにしているそれは、迫力が違っていた。

「よし!もう一発!・・『赤龍雷撃!』」

火花散る黄玉がイルの手のひらから躍り出、それは雷龍となって現れ、黒水牛に襲いかかっていく。

「グオ~~~・・・・」
もだえ苦しむ黒水牛。確かに効果はあった。

「イル?」

その様子を見ながら、渚は自分を片手で抱えているイオルーシムを見上げていた。

「大丈夫だったか、渚。」

多少これで敵の攻撃も止まるだろうと判断し、イオルーシムは渚を見つめて微笑む。

「あ、うん。」

「悪かったな。遅くなって。」

「あ、ううん・・私は・・・・。」

「オレさ・・・渚にひっぱたかれた頬がいつまでも痛くて・・
いや、たぶん痛みを感じていたのは心だったと思う。」

「え?じゃー、やっぱりあれはイルだったの?」

「ご、ごめん・・・。」

イオルーシムはばつの悪そうな表情で、渚から視線を避ける。

「だけど・・渚だけだから・・」

「え?」

「オレには、渚だけだから・・何があっても。」

「イル。」

渚を愛しそうに見つめ、イオルーシムは、再び前方を睨む。

「だから、オレから離れるな。
オレの傍にいるんだぞ。いいな、渚!?」

「あ・・何よ、その命令口調?!」

「なんだよ、いけないか?渚はオレのことが好きなんだろ?
あの時の怒った顔、すごかったぞ?」

渚の口調を受け、イオルーシムの口調も自然と荒くなっていた。

「イル?!・・だ、だって、あ、あれは・・・
イルが悪いんじゃない!
何よ、女の子に囲まれてでれでれしちゃって、みっともないったらっ!」

「しょうがないだろ?記憶がなかったんだし。」

「記憶が無いときはその人の本性が出るのよ、知ってた?」

「なんだよ、それ?
渚はオレが女たらしの方がいいって言うのか?」

「そんな事言ってないでしょ?」

「じゃー、なんだよ?」

「ぷぷっ・・あ、姉貴らしいや・・・・・」

「か、桂木・・・・」

ギャラリーがいる中、しかも周囲を敵に囲まれている中で、渚とイオルーシムは言い合っていた。
それは、ある種、完璧2人の世界。
優司も洋一も呆れ返る他はない。

ファラシーナとリーは、見慣れた光景なので呆れてはいるが、あんなものだろうと思っているため軽く苦笑。

「なんだい、いないと思ったら、渚を向こうの世界まで追いかけていったまではいいとして、記憶を無くして、女の子たちとよろしくやってたってのかい?」

優司からかいつまんで事情を説明してもらい、あきれ果てた顔をしたファラシーナに、優司と洋一はこくんと頷く。

「でも、イルならもてたんだろうねーーー。」

再び優司と洋一は、うんうん!と頷く。

「・・っと・・・・どうやら復活したらしいな。行くぞ、渚!」

シュッと自分の耳についているイヤリングから男神のソードを取り出すイオルーシム、と同じく女神のソードを取り出す渚。

「離れるなよ。」
イルの言葉に目で答え、渚はムーンソードを持ち直す。
「行くぞ!」

「待って!」

「な………」

2人で同時攻撃をしようとしていたイルは出鼻をくじかれ身体から力が抜ける。

「なんだよ、渚?この期に及んで不満なのか?」

「不満はいっぱいあるけど…」

「・・・」

「そうじゃないの。」

「じゃー、なんだよ?」

「だって、女神様の竪琴の玉が彼らを攻撃どころか、はじかれてしまうんだもん。」

「それが?」

「だから、平和的解決でいきましょ?いつかのイルの場合のように」

「はあ?あれは、オレだから良かったんだぞ。
あいつらに効くと思うか?」

「いいの。効かなくても。攻撃は必要ないのよ、きっと。」

「じゃー、渚はどうしたいっていうんだ?」

「うん、あのね……」

渚はイルに耳を貸させると、ごにょごにょとささやく。

「…分かった。渚がそう言うんなら協力するよ。
だけど、奴らが渚を手にかけようとしたら、オレは迷い無く奴らを切り裂く。いいな?」

「うん。」

確信は無いが、きっと大丈夫という感じが渚の心にはあった。

「じゃ、行きましょ♪」

「ああ。」

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闇を司る女神の愛

向かってくる黒水牛に2人は男神と女神の剣をかかげて突進していく。
剣の切っ先から流れ出るような筋ができ、それは金と銀の光が交差した帯となって黒水牛を取り囲んでいく。

「あは♪こうなったらあたいたちの出番はないね。
っていうか、攻撃しないって何なのさ?」

「そうですね。2人に任せておけば大丈夫そうですので、もしも傷でも負ったら回復魔法でもここから送ることにしましょう。」

「そうだね。」

「そ、そんなんでいいのか?」

イルと渚にも呆れたが、最終バトル的な戦闘を予想していた洋一と優司は、あっけにとられる。

「ま、見ててごらん♪そこが渚の普通じゃないところなんだよ。
いいねえ、闇の女王の愛だよ。」

「愛?」

「そ♪闇を司る女神の愛♪」

念のため、周囲にも注意を払いつつ、リーとファラシーナな目の前で繰り広げられている水牛捕獲作戦を見つめる。
どちらかがほんのちょっとでも傷を受ければ即座に治すべく精神を集中して。

「だけど…すげー・・・カッコいい、・・姉貴・・・。」

王女様ルックもいいと思ったが、こっちも断然カッコいい、と優司はひたすら感心する。

相手の攻撃を避けて動く渚とイルの太刀さばきに添って、金の剣筋と銀の金筋が巨大な闇水牛を確実に捕らえて行く。

洋一は、あうんの呼吸で攻防を繰り返している2人に、心が沈んでいくのを感じていた。結局、渚の心には入り込めなかった・・。

 

▼月神の娘・その29へつづく

続・創世の竪琴【月神の娘】29・真の闇王、闇の貴石

攻撃でなく捕獲。闇の女王の愛?…とか訳の分からない最終バトルに突入! そして、その結果…… 月神の娘/29・真の闇王、闇の貴石 このページは、異世界スリップ冒険ファンタジー【創世の竪琴】の続編、【Mo ...

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