月神の娘

続・創世の竪琴【月神の娘】30-完-異世界トリップ・冒険は続く

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闇世界の最下層で闇の貴石にたどり着いた渚たち。
渚の愛(女神ディーゼの愛)が貴石の心に届いたのか、無事に一行は第七層(人間界に一番近い層)に戻る。

月神の娘/30・-完-・異世界トリップ・冒険は続く

このページは、異世界スリップ冒険ファンタジー【創世の竪琴】の続編、【MoonTear月神の娘】途中の展開です。
渚の異世界での冒険と恋のお話。お読みいただければ嬉しいです。
(異世界スリップ冒険ファンタジー【続・創世の竪琴・MoonTear月神の娘】お話の最初からのINDEXはこちら
月神の娘のこの前のお話は、ここをクリック

共にあってこそ陰と陽

こうしてなんとなくあっけなく、世界の危機という最大の危惧も消え、事件は終着を迎えた。

が・・・闇王は不在のままである。

イオルーシムは太陽神の加護により、光が強すぎて闇王にはなれそうにもなかったし、リーと優司は、闇へ変換できるものの、それは一人ではできないし、闇王とも言えなかった。

もっとも、最初の頃より変換力も、そして、2人揃わなくてもできるようになったが、渚がいないとだめなのである。

渚と心を合わせて念ずることで以前より強い闇を、そして、優司とリーの2人がそろっていなくてもそれが可能となった。

闇世界の修復は、イオルーシムと渚が行った。

弾き手の願った世界を創世するという竪琴。
そこにあるべき姿を思い描きながら弾けば闇世界は闇世界のまま。

ただ、それが闇の気ではない為、続けてそうすることは、闇世界に亀裂を走らせ、ひいては崩壊に繋がってしまう。
少しずつ、一部ずつ修復させていくことでそれを避けることにした。

修復がほんの少しずつでも、無の空間による崩壊はリーと優司のおかげで止まっているのだからそれでも支障は何もない。

ともかく、人間界との接点は、強力な闇結界で完全にシャットダウン。

闇世界にいた人間は強制送還され、二度と入り込めることはできなくなった。
いきなり人間界に送還されパニック状態に陥った人間もいるようだが、そこまで感知はしない。

そして、人間界へ売られていった闇の住人たちもその気を辿り、呼び戻すことにした。
渚の願い、魔物と人間が仲良く、は無理だったが、一応平和な結末ではある。

異世界トリップ、日帰り冒険

そして・・・・

「姉貴!今日も行くんだろ?」

夕方、学校から帰って来るなり渚の部屋のドアをいきなり開け、優司が顔を出す。

「今日もって・・・優司、あなたも来るの?」

「だって、リーさん一人に任せっきりなんて悪いだろ?」

「それは分かるけど、いい?あなた、受験生なのよ?
少しは勉強に身を入れないと!」

「姉貴?お袋のようなこと言うなよな?
口うるさいと嫌われるぞ?」

「き、嫌われるって・・・」

「やー。」

優司の後ろから入ってきたイオルーシムを見て、渚は真っ赤になる。

「大丈夫、勉強はオレが見るから。」

「イルさんってすっげー難しい数式でも、スラスラ解いちゃうんだぜ?
姉貴と違って頼りになるんだ。」

「どうせ私は数学が苦手よ。」

「渚、拗ねてもかわいいけど、できたら笑ってほしいな。」

「え?あ・・・・」
イオルーシムの言葉に、渚はまたしても真っ赤になる。

(やっぱ口うるさい姉貴を黙らせるには兄貴(イオルーシム)を連れてくるのが一番だよな?)

にやりと心の中でVサインの優司は、その夜も異世界の冒険が楽しめるとるんるん気分。
闇の気を使って術もあまり強力なものではないにしろ、一応使えるようになってきた優司は、それが試したくて仕方がない。
勿論、こっちの世界では使えないのだが。

時には闇世界を探索することもあるが、まだ当分は、人間界へ売られていった魔族の探索という立派な名目もあった。

「やー、桂木!今晩も行く?」

「え?・・・ぶ、部長も?」
ひょいっとドアから洋一が入ってくる。

「優司くん一人で冒険させるのもなんだろ?
ファラシーナやリーだっていつも一緒だとは限らないんだし。だから・・・。」

「山崎さんは自分が冒険したいだけだろ?」

笑いながら優司が言う。

洋一が太極拳を始めたことは優司は知っていた。

こちらの世界ではなんの変哲も無い感じだが、向こうで思いっきり気合いをこめて気を放つと、確かに効力があるのである。

もっともまだ習い始めたばかりなので、50発に1発くらいなのだが、それも鍛錬次第で腕は上がるはずだと思えた。

だから、自分と同じく技を試して腕をあげたいんじゃないかな、と優司は思っている。

冒険そのものも確かに面白いし、同行者が、いや、お互い力がついて来れば、また冒険も一段と楽しいものになるはずだ。(もちろん安全性も高まる)

「いいだろ?楽しみを独り占めしなくってもさ?」

「そりゃそうだけどさ。」
優司は明るく笑って洋一にOKサインを出す。

もっとも洋一の第一の目的は、渚とイオルーシムの仲を邪魔することでもある。
それ以上2人の仲が発展しないように。

「山崎さんって、意外にしつこいんだね?」

「しつこさだけが、オレの取り柄だからな?
いつ、どう転ぶかまだ分からないだろ?
プログラマーの根気強さと忍耐力を甘くみちゃいけないぜ?」

小声で言い合い、優司と洋一は笑みを交わす。

それは、渚とイオルーシムを見ていると、別れることは考えられないことでもあり、一応は認めた洋一だが、本心は完全には納得していなかった。

自分自身納得し、割り切れるその日まで、素直に自分の心に従い、2人の邪魔をしようと洋一は思っていた。

が、それは、ともするとイオルーシムが大学で渚以外の女の子に目がいきそうなときがあると感じた洋一の最後のあがきでもあった。

「人生、いつ、どう転ぶか分からないさ。
それにオレにはこれがある!」

渚のゲーム好きは相変わらずである。

洋一は渚の好きそうなゲームを作ったり、市販されているのを買っては、渚に会いに行く。
そのゲームの説明に渚が熱中している間は、やきもちを妬くのはイオルーシムの方なのである。

さて、女神の微笑みはどちらに?

 

月神の娘-完-

最後まで読んで下さりありがとうございました。
m(__)m

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