SFスペースファンタジー「星々の輝き」15・賄賂のお礼

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SF・スペースファンタジー「星々の輝き」は、宇宙ひとりぽっちの少女ニーナが大活躍する英雄・冒険譚です。
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高価な品物、それもヤバゲな人物からの預かり物を持っているというわけで、寄り道もせず、ニーナはそのまままっすぐヒアスラ・スターベースへと向かう。

「途中、何も出ませんように!無事ヒアスラに着きますように!」

身勝手だと自分でも思いつつ、コクピットで神頼みしつつ発進。
その祈りが届いたのか、マイコン1に来る時は、あと一発受ければ木っ端みじんに爆破されていたときと違い、一度僚船と出会っただけで、すんなりヒアスラに着く事ができた。

事実は、ニーナに司令官への賄賂を頼んだサー・エルドの手下(しかも柄の悪い?)が、ニーナの船を守っていたからだったのだが、この時点では、まだそこまでの情報は入手していない。

「ラッキー♪何事もなくヒアスラに着けたーー!」

入港手続きを急いで済ませると、サー・エルドから渡された箱を持って帝国政務次官オフィスへと向かう。

(さぁ、どうやって渡そう。聞いたところによるとオレリアン氏は結構堅物だって言うし、上手く受け取ってくれるといいんだけど・・・。)

歩きながら考えていたニーナだったが、考えていても始まらないと意を決し、オフィスへと入って行く。

「ええーい、当たって砕けろだっ!」

-シュン!-

ドアが開くと、真面目&型物で通っているオレリアン氏は、奥のデスクに当然のように座っていた。
ニーナが入って行くと、これまた当然のごとく目を通していた書類から、その視線を入室してきた人物に注ぐ。

穏やかな眼光だが、確かな威圧感もある。
それは、サー・エルドのときに感じた狡猾さではなく、凛とした空気を醸し出している。
いかにも帝国の上級軍人といったところだろうか。

「こんにちは、確か、ニーナ・シャピロさん、でしたよね。」

「あ、はい。」

ニーナが声をかける前に声をかけてきたこともだが、一介のしかも一度あっただけの自分のことを覚えているとは思わず、少なからずニーナは驚いた。

(記憶力がいいんだ。ヘマしたら一生睨まれそう……)

「何かお困りのことでも?」

緊張が高まったにーナに相反して、オレリアン氏は変わらず、そしてあくまで紳士的だ。

「は、はい、あの・・・実は、サー・エルドからプレゼントを預かって来たんですが・・・。」

ニーナは氏と軽く握手をすると、例の彫像の入った木の箱を恐る恐る差し出した。

様子を見てからとも思ったが、後回しにすればするほど言い出せずに終わってしまいそうだったからだ。

「なんですか、これは?賄賂のつもりですか?」

が、オレリアン氏の顔つきが急に険しくなった。
口調もそれまでニーナが聞いたことのない厳しさを感じさせる。

どうやら堅物という噂は本当らしい。
そして、サー・エルドとの間に何かあったのも確か。

「え、ええと・・・その・・そう。
・・じゃなくて・・・と、とんでもない!」

彼女は次にどう言うか、氏の顔色を伺いながら言葉を探した。

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「賄賂というのは、よこしまな願いを聞いてもらう為のものですが、これにはそういう目論見はありません。
・・え~っと・・そ、そう!尊敬に値する司令官への、サー・エルドからの心を込めた贈り物です。
決してそのような後ろ暗いものではありません。
事実、私はお渡しするようにと言付かってきただけで、他には何も聞いてきてないですから。」

「ふむ・・なるほど……」

私の持つ箱をじっと見つめながら腕組みをすると、オレリアンはしばし考える。

「中身は何か聞いてきたかね?」

「あ、いえ。なにも。」

値段があってない高級品とは聞いたが、ここは言わない方がいいとニーナは判断した。

「わかりました。あなたのピュアな瞳を信じ、彼からのプレゼントを受け取りましょう。」

「あ、はい、ありがとうございます。」

ほっと胸をなでおろしたニーナを見つめると、オレリアンは、にこっと笑みを浮かべ、ニーナから箱を受け取り、デスクの上に置く。

「さて、賄賂でなくば、時限爆弾…などではないでしょうな?」

「ま、まさか?」

「ははは、そう青くならないでもいいですよ、冗談です。」

冗談に聞えなかったと思いつつ、ニーナは、オレリアンが箱の紐を解いていくのを見ていた。

「おお!」

中からは精巧な金細工の施された彫像が出てきた。

「これは…なんとみごとな!あなたは、これがどういうものか分かるかね?」

「あ、いえ、ただ、見事な作りで、高級品なんだろうなということくらいで。」

「そうか。なるほど、彼は、欲のない君を代理に立てたことで、自分自身の潔白を証明したのだな。」

「はあ、そういうこと…になるんでしょうか。」

「これは、間違いなくティスリング期の物だ。サー・エルドは芸術にすばらしい鑑賞眼を持っているらしい。これほどの物を私に譲ってくれるとは…」

悪い気はしないといった表情で、オレリアンはその彫像とサー・エルドを誉めた。

「で、では、私は。無事お届けしたことをサー・エルドに報告しないといけませんので。」

「うむ。無事な旅を。」

「ありがとうございます。」

ニーナは、ほっとすると共に、オレリアンの気が変わらないうちに、と思い、何かまだ話たげな氏に慌てて挨拶するとオフィスを後にした。

ヒアスラ・スターベースからの道中は、またしても不思議に平穏で何事もなく無事に拓殖基地マイコン1へと着く。

「おお、戻ってきたか。こっちには、君が私の頼みを上手くやりとげてくれたという情報が入ってるぞ。いやいや、本当にありがとう!」

サー・エルドはニーナの顔を見るなり、嬉しそうに抱きついてきた。

「い、いえ、どういたしまして。私は頼まれたことをしただけですので。」

慌てて彼女は卿を押しのける。
サー・エルドのその全身に染みついた葉巻の香りと脂ぎった体臭がたまらなかった。

が、上機嫌な卿はそんな彼女に気分を害することもなく、イスを勧めると執事に飲み物を持ってこさせた。

「それじゃ、約束だからな、オレの署名入りの紹介状、それからちょいと儲かる商売のコツというやつを教えてやろう。」

「ありがとうございます!」

各ステーションでの特産物や高値で売れる商品、流行、そして、上手くやれば『密輸』なども金になるということを卿は、ニーナに教えた。

「じゃーな、がんばるんだぜ、ぼうず。おっと、それと『スティルス・ボックス』をやろう。」

「『スティルス・ボックス?』」

「ああ、船のエンジン部に取りつけるといいぜ。なーに取りつけは簡単だ。このコードが刺さるところに刺すだけだからな。」

「あ、はい。」

「ま、仕上げは見てのお楽しみというもんだ。コントロールパネルにスティルスのオン・オフの表示が出るだろうから、ヤバイ時、そうだな、海賊船から逃げるときにでもスイッチを入れてみな。」

「あ、はい。わかりました。やってみます。」

見ただけでは、機械の箱というだけでさっぱり分からなかったが、とにかくニーナは丁寧にお礼を言うと、船に戻った。

「星系外ステーションでも通用するっていう紹介状もらったし。これで、カロノス星系外のステーションに行っても、袖にされる事はないわ。」

ニーナは、ヒアスラへ向かう愛船ジョリー・ロジャー号のコクピットで、サー・エルドから聞いた儲けのコツの極秘情報をまとめていた。

広大なファーアーム星系群が、彼女を待っている!(のかな?)

 

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