SFスペースファンタジー「星々の輝き」19・ゲート前の大スクランブル

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SF・スペースファンタジー「星々の輝き」は、宇宙ひとりぽっちの少女ニーナが大活躍する英雄・冒険譚。

初めての星系外、グリフォン星系。その酒場で、初めての地球外生命ヴェーダと会い、ついおかしなものを買ってしまったニーナ。
お土産を買い、カロノス星系へと再びマリーゲートに向かう。
2回目はもう大丈夫…とは言えない。再び緊張の星系感ジャンプにチャレンジする♪
SpaceRogue、前の話はこちらから


(イメージです。マリーゲートは六角柱のオレンジ色に輝く星系間ジャンプゲートです)

Contents

星系間ジャンプの入口・マリーゲートに向かいながら

ニーナは採掘ステーション内の酒場で出会った異種族のことを考えていた。

(うーーん、どう考えても、宇宙版メディーサよねえ?
蛇のように太くはないけど、くねくね動いている触覚12…でしょ?その先には目があるんだし……気づいた瞬間、本当はびびってたんだよね。身体は全身光沢のあるオレンジ色だったし……)

思いっきり自分の固定概念からの偏見だと分かっているから、そういう態度は出さなかったつもりのニーナだが、凝視してしまったのは、まー、相手がそういうことに慣れているのか気にしないようだったからよしとしよう。

(12の部分からなる集合有機体って言ってたけど、じゃー、あの12のうようよしてる触覚の1つ1つが、子供時代はバラバラってことになるんだよね?成長すると1つに合体して生活……喧嘩しないのかな?行きたい方向とか、やりたいこととか?)

そんなことを考えていられるのも、船の自動航行システムのおかげだ。
マリーゲートの位置を選択するだけで、一番近いコースを進んでくれる。

…ただし、攻撃をしかけられるとシステムは自動的に解除され、船はNスペースと呼んでいる通常航行空間に戻され、手動に切り替わる。

言ってる傍からスクランブル

-フィ-ン!フィ-ン!フィ-ン!-

「スクランブルだっ!」

コクピットで仮眠を取っていたニ-ナは、けたたましい警報機の音で目が覚める。

コンソール右のトラフィック・ディスプレイに支線を流すと、オレンジ色に点滅している。それは、何者かによる攻撃を意味している。

「あと少しでマリーゲートだったのに。」

慌ててTACを起動させ、コンソールの中央、メインスクリーンの真下のTACスクリーンにセクター内の探索可能なターゲットを写し出させる。

「ワスプだ!!」

帝国と敵対している異種族、マンチーの戦闘挺である。
ニーナにとっては忘れもしない、プリンセス・ブルー号を消滅させた仇でもある。

彼らは、理由も何もなく例え商船だろうとおかまいなしに襲ってくる。
ワスプは、同じマンチーの戦闘挺でも重装備のバルチャーとは異なり、シールドもない小型の戦艦だが、その驚異的な速さと機動性は、目を見張るものがある。

こちらから来ると思えばあちらから、いや、真後ろから・・といった具合で、その攻撃パターンを予期することも捕捉することさえも困難なのだ。

加えて彼らは、好戦的ときている。

そのカミカゼ作戦は、例え、瀕死の状態になっても逃げることを知らず、又、こちらの降伏に応じるなんてことも絶対に有り得ない。

とにかく、破壊してしまうか、破壊されるか・・それまで戦闘終了はない。一瞬たりとも息は抜けない。

(みんなの為にも生き抜かなくっちゃ!)

そう思ったニ-ナは、全身を駆け抜ける緊張感と共に、すぐさま迎撃体制に移った。

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はじめてのワスプ艇との戦闘

-フィ-ン!フィ-ン!フィ-ン!-

警報ブザーは、まるでニーナを急かしているように感じられた。
ニーナにとっては始めてのワスプとのスクランブル・・緊張するのも無理もなかった。

そして、ここには、以前海賊の襲撃から命からがらで逃げ込んだ開拓ベースはない。

TACのデータ・モードでそのスクリーンに相手の状態を表示させる。
そこには敵の船影とデータが表示されていた。

  • 船名 :ワスプ
  • RAN:(距離)3250
  • TAC:(戦略分析) CLOSE(接近戦)
  • ARM:(アーマー)180
  • SYS:(搭載システム) e/b/m

「なるほどね~・・、ワスプとの距離が3250。
敵の作戦は、至近距離からの攻撃。
で、そのため、現在急速に接近中・・か。
アーマーは180、搭載システムのエンジン、ビーム砲、ミサイル、全て良好・・・。
ふむふむ~~~・・・。」

とため息をついている場合ではない。
こうしている間も急速に接近してきている。

メインスクリーンを素早く確認すると、ニーナは続いて自分の船の状態を表示させる。

  • 船名: サンレーサー
  • ARM(アーマー): 280
  • SYS(搭載システム): f/e/b/m

グリフォン星系には、修理する工場がない。
アーマーは、来た時ワームホールの腐食性ガスによって下がった数値のままだ。

『f』は、前部シールド、『e』は、エンジン、『b』は、ビーム砲、『m』は、ミサイル発射筒の状態を表している。

それぞれダメージを受け、故障すると文字が反転するようになっている。

そして、現在『m』が反転文字で現れていた。
つまりミサイル発射筒が破壊されたということを意味していた。

それまで、マンチーに遭わずにきたこと事態が、おかしいと言っていいほどの幸運なのだ。

勿論、海賊船とは、すれちがった事もあったが、サー・エルドにもらった『スティルス・ボックス』のおかげで、向こうのレーダーが同じ海賊船と判断する為、攻撃を仕掛けられた事はなかった。

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「よーーーし、コンディションオールグリーン!(…じゃないけど)、やってやろうじゃないの?!」

と、やる気満々、気合いを入れた時だった・・・。

-ズガガガーーーン!-

ものすごい音共にシートから放りだされるかと思うくらいの激しい衝撃が彼女を襲った。

「きゃあっ!」

シートベルトを装備しているため、放り出されはしないが、思わず声が出てしまうのは仕方ないと思われた。

「な・・何?・・急に・・こ、こんな・・・」

慌ててメインスクリーンを見る。が、ワスプの姿はどこにも見えない。

「え・・?ど、どこにいるの?」

-ズガガーーン!-

きょろきょろしている内に第2波が彼女を襲った。

「と、とにかく敵の位置を把握しないと・・・」

こんなちょこまかと動かれる戦闘は初めての彼女。
とにかく落ち着くよう自分に言い聞かせ、TACビューが示す敵船の位置を正面に据えるべく奮闘を開始した。

「迎撃開始よ!」

頼れるのは己の腕・・・と敵のミス?・・とにかく、機敏性を誇るマンチーのワスプ。

右からと思えば左へ、左から接近してくると思えば、後ろから、前から上から下から・・・まるで彼女をからかって遊んでいるように近づいては離れ、離れては、接近してくる。どこからともなく・・異常なほどの猛スピードで。

一応船内の一室にトレーニングルームがある。
彼女も今まで何度となく訓練してきた。
が、そんなもの単なるシューティングのお遊びだったと思えるほどの攻撃だった。

幸いにもビーム砲はまだ破壊されてない。
それは彼女にとって本当に幸運だった。

実のところ、ミサイル庫はまだ空のままだったし、第一照準が合わせづらい。

まだまだ現在のニーナの腕では、使いこなせそうもなかったため、ミサイル発射筒が壊されていても今は関係ない。

それにビーム砲の方は、既にガーネット・レーザーからより強力なサファイア・レーザーにグレードアップさせてあったし、照準も発射するタイミングもこちらの方がずっと合わせやすいのである。

…な・の・に、相手のスピードにまったく追いつけなかった。

スクリーンにその船影を捕らえたかと思うと、一瞬にして消え去る。
しかもその方向は様々で、完全に予測不可能。

必死の思いで、コントロール・パネルのボタンを操作していたニーナだったが、ついに切れた・・・。

「わかったわよぉ・・・・やってやろうじゃん!ここで負けたら、元も子もないんだからね!」

すうっと大きく息を吸うと、今一度レーザー砲が無事なことを確認し、迎撃に移った。

「下手な鉄砲も数打ちゃ当たるーーーっ!」

-ビイイイイイイイイイイイイイイーーーー!-
-ビイイイイイイイイイイイイイイーーーー!-
-ビイイイイイイイイイイイイイイーーーー!-

船を旋回させながら、ビーム砲をうち続けるという、やけっぱちな戦法・・・。

もはや、彼女にはこれしか思い浮かばなかった・・・。

それでもからかうかの如く飛び続けるワスプ。

-ガガーーン!-

「やったーっ!当たったーっ!」

と喜びを味わっている間など到底ない・・彼女は、ただひたすらメインスクリーンとTACビュー、そしてワスプの残存アーマーを示すインジケーターを交互に見続けていた。

ロジャー号の残存アーマーなど確認している暇は・・・・ない・・・。

敵は1艇のみ。増えないうちになんとか決着をつけたい。

「来るならこぉ~~~~い!」

ともかく、操縦パネルの上で手をせわしく踊らせて、ニーナは船の操縦とビーム砲を打ち続けるという待ったなしの実地戦闘訓練(ではないけど)をしていた。

「こんなところで死ぬもんかーーー!」

 

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