SFスペースファンタジー「星々の輝き」30・危険エリアはダテじゃない

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偶然にも海賊の本拠地であるフリーギルドの酒場で、アンドロイドのラックスの恋人チーシャと遭遇。
船の修理用アンドロイドとして彼女をうまく乗船させたニーナは、チーシャに頼み込んで、マンチーが頻発に出現する危険な星域へ行くことにした。

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SFスペースファンタジー「星々の輝き」30・危険エリアはダテじゃない

数時間後、ジョリーロジャー号は、ニーナとチーシャを乗せて無事フリーギルドを離れた。

「ねぇ、チーシャさん・・・。」
ニーナはコクピットで横に座るチーシャに言った。

「チーシャでいいわよ。何?」

「あの・・私、他にも行きたいところがあるんだけど・・・シギュアのトローシャルとゼッドのマイコン4へ。
・・・あの・・マンチーが多いって聞いてるから・・1人じゃ行く勇気がなくって・・。」

チーシャはしばらく考えているようだった。

ニーナもそれ以上は言わず、じっとチーシャの返事を待つ。
本当なら真っ直ぐデネブ星系のロスで待っているラックスの所へ行くべきなのは十分承知していた。

「いいわよ。」
チーシャは決心したように、ニーナの方を向くと微笑んだ。

「故障したり、攻撃を受けて損害を被ったところの修理はあたしにまかせておいて!でも・・・」

2人で顔を見合わせて同時に言った。
「殺られないようにネ!!」

-ぶっ・・あはははは!!-
コクピットに2人の大きな笑い声が響きわたった。

なんとなく息が合いそうな2人。
そして、ともすると寂しくなりがちな航海が楽しくなりそうな雰囲気だった。

(一時的にしろ、頼もしい助っ人ができたわ!)
操作パネルを操作するニーナの表情は久しぶりに明るかった。

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ゼッド星系でのトラブル

チーシャの協力を得、ニーナはマンチー艇が多発するという危険な星域、ゼッド星系へとマリーゲートを通ってやってきた。

ここには、小惑星『リトラ』に、マイコン社の第4採掘ステーションのマイコン4があり、そこには、有名な引力物理学者のゾリア・プロスク博士がいる。

デネブプライムの酒場の主人から、博士がどうやらワープドライブを発明したらしい事を聞いた時から、ニーナは、本当かどうか確かめたいできるなら、体験してみたい、と思っていた。

それと、もしかしたら、博士が以前発明した、ワームホールでの腐食を防ぐという『ヌルダンパー』を手に入れることができるかも知れない、そう思ったからだった。

1月10日

海賊は、まだ賞金も制定されないうちからマンチーを襲った・・・・・何故?

ここのマップにもやはりメッセージは残されていた。

「ふーん・・・そう言うわけだったの?」

それまでの経緯をニーナから聞いたチーシャは、それまでの航海日誌を読みながら言った。

「フリー・ギルドにいると色々な情報が、それこそ、ありとあらゆる情報が入ってくるのよ。
あたしもいろいろ耳にしたけど・・。このことだけは、どうもわからないわ。」

「まだまだ、情報不足よね。」
ニーナは自分自身に言い聞かせるように言った。

「あまり気を落とさないで、いつか、道が開けるわ・・
そう、あたしと、ラックスのように。ねっ!」

「ん。」
そう言いかけた時だった、敵の攻撃を知らせる警報がなった。

-フィンフィンフィン!-

「行くわよ!!」

自動航行から手動に切り換えると共に、ニーナは迎撃態勢に移った。

TACを起動させる。

「バルチャーだ!!」

TACスクリーンはマンチーの大型戦闘艦であるバルチャーを写していた。

「修理ならまかせて!がんばって!!」

チーシャは、ウインクするとコクピットを離れ、エンジンルームに向かう。

「オッケー!」

久しぶりの戦闘だ。今まで幸運すぎた。
ニーナは緊張しながらも必死で攻防に入った。

破損に次ぐ破損

「むむ、こ、こいつはぁ・・・」

敵の攻撃を避けながら、ビ-ム砲やミサイルを発射する。

バルチャ-はワスプと違って動きは少し遅いが、その分防御力もある。
敵のECM(目標かく乱装置)でミサイルもなかなか命中しない。

ワスプとの戦いは何度か経験し、だいたいのこつは掴んだニ-ナだったが、バルチャ-はそうはさせてくれないらしい。

ナビスクリ-ンとTACスクリ-ンを交互に見続け、攻撃する。

「げげーっ!!前部シ-ルドが破壊されたあ!!」

「くそぉっ!!」
必死で攻防するニ-ナ。

TACは無情にも次々とダメ-ジを受けたことを表す。

「『ECM破損』・・『後部シ-ルド破損』・・・『ビーム砲破損』ちょっと、ちょっと、少しは手加減してくれたって・・・ああーん、ビ-ム砲が使えないなんてー。」

土台無理なお願いである。

ミサイルは例え敵のECMを破壊しても、命中させるのには技術が必要だ。
それにこの船には10発しか乗せられない。

「と、とにかく、なんとかミサイルでせめてECMを破壊しなくっちゃ!」

破壊しなくては、こっちが破壊される!
必死で修理していてくれるチーシャ。
寄り道を快く承諾してくれた彼女の恩に報うためにも生き残らなくてはならない!

とにかく、なんとか確実に着弾させようと必死に攻防を繰り返す。

「やったー!『敵ECM破壊』!よーし、あとは残ってるミサイルで!!」

ちらりと計器を見る。

「残りあと7発・・・何とか命中して、お願い!!」

祈るような気持ちでひたすら攻防を繰り返していた。

「え?『エンジン破損』・・・ええっ~!?」

画面を見たニ-ナはもう真っ青。でも戦うしかない!

「ちょっと、いくらあたしでも一度に直せる限度があるんだよ!」

インターフォンからのチーシャの声は、明らかに焦って、そして、頭にきている。
その口調は、フリーギルドにいたときの強い口調に戻っている。

「あんたに懸けたんだからね。もっと身を引き締めてやんな!!」

「うるさいっ!やってるわよっ!!」

人の愚痴を聞いている場合じゃない、本人の方がよほど焦っているのである。

(こんなところで宇宙の藻屑になりたくない!なるわけにはいかないのよっ!)

辺境のそのまた辺境のゼッド星系、味方の援助はまずもって期待できない。
ニーナは決死の覚悟で操作を続けた。

九死に一生

「ふーーーーー、」

数十分後、ぼろぼろになりながらも、何とか敵を破壊し、ジョリーロジャー号は再び自動航行に移っていた。

チ-シャはまだ修理を続けている。
「ごめんね、チーシャ。」

インターフォンから彼女に話し掛けるニ-ナ。
「気にしない、気にしない!あたしは、この為に乗ってきたんだから。」

喉元過ぎれば何とやら・・・、戦闘中のきつい言い方はお互い無くなっていた。

そして、無事にリトラのマイコン4に到着。
と言ってもリトラは、小惑星地帯にある為、周りの宇宙空間には、巨大な瓦礫や氷の塊が飛んでいて、ドッキングには相当苦労した。

ロースピードで避けながら進んできたのだが、結構ダメ-ジも受けてしまった。
残りアーマーも少ないというのに、それはそれで、ヒヤヒヤでスリル満点の航海。

もっともそれまでにシールドやエンジンはチーシャが直してくれていたので、本当に随分助かった。

チーシャが乗っていなかったらと思うとぞっとする。
同行を頼んで大正解。
そして、快諾してくれ、大活躍してくれたチーシャに心から感謝だ。

マイコン4では、なんとかゾリア・プロスク博士を探しだすことに成功。
ワームホールの腐食成分をゼロにしてくれる”ヌルダンパー”を作ってもらう約束を取り付けた。

引き替え条件は、今博士が研究しているワープ航法に必要な”転換コイル”だ。

マンチー艇の襲撃があまりにも増え、辺境地であるここゼッド星系に帝国からの便は途絶えてしまい、ファーアーム内には、出回ってない(製造所もない)からである。

入手は不可能とも思いながら、博士はそれでも万が一にもあり得るかもしれないと、転換コイルと塗るダンパーの引き替え条件としたのである。

 

そして、チーシャが唯一直せない船のアーマーをマイコン4で修理してもらうと、ニーナは次の目的地へと向かった。

 

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