SFスペースファンタジー「星々の輝き」18・初めてのグリフォン星系

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SF・スペースファンタジー「星々の輝き」は、宇宙ひとりぽっちの少女ニーナが大活躍する英雄・冒険譚。

マリーゲートなるワームホールを使って星系外へ出ることにしたニーナ。
どきどきのはじめての星系間ジャンプは失敗に終わったが、今回は、より準備周到にしてのリベンジ!のお話です。
SpaceRogue、前の話はこちらから


(イメージです。マリーゲートは六角柱のオレンジ色に輝く星系間ジャンプゲートです)

Contents

急がば回れ!船のアーマーを最高値に!

はじめての星系間ジャンプに失敗後、二度目の失敗はするまいと、2ヶ月間ニーナはカロノス星系内でこつこつと頑張った。

もちろん、ヒアスラ・スターベースの酒場の親父は、ジャンプ失敗して帰ってきたニーナを馬鹿にすることはなく、暖かくいつものように笑顔で迎えてくれた。

そして、ようやくのこと、船のアーマーを最高の500ユニットまであげることができたのだ。

「じゃ、おやじさん、今度こそ成功してくるからね!
次に会う時は、お土産にグリフォン星系の地酒と特産物、こっちでは手に入らないおいしいものを持ってくるから!」

「おお!期待して待ってるよ!楽しんできな!」

再び星系間ジャンプに挑戦!


(イメージです。マリーゲートは六角柱のオレンジ色に輝く星系間ジャンプゲートです)

ワームホールが続く入口であるマリーゲートに入る為には、21m/sec以上のスピードを維持することが必要だ。

そして、ゲートに入った瞬間、自分がワームホールの変化に対応して航行できるスピード、今のところ10m/secに即落とさないと、ワームホールの輪くぐり失敗で元の宇宙空間に戻されてしまう。

一瞬たりとも気が抜けない真剣勝負なのである。

「よーーーし!今度こそ!…ニーナ、いっきまあーーーーーーーす!」

ニーナは、コクピットのメインスクリーンに映し出されるマリーゲートの入口をにらむと、スピードメーターの確認もしつつ、操作パネルに手を置く。

そして、失敗すること2回・・。

歯ぎしりをかみながら、このままでは戻れないと3度目の挑戦。
そう、アーマーが最高値にまで上げたおかげで、ワームホール内の腐食ガスに侵されても、まだまだジャンプに挑戦するアーマー値があるからだ。

そして、その3回目……

「やったっ!抜けたっー!!」
まだ幾分震えの残る手を上げ、ニーナはばんざいをしていた。

右へ左へ、下降気味、上昇気味、2時方向、8時方向と、その自由きままに曲がりくねるワームホールにさんざん翻弄されての結果だった。

最後には船自体をも回転させ、ニーナ自身目が回り、また駄目か、と思ったとき、船は最後の輪をくぐり抜け、無事、グリフォン星系へと出ていたのである。

グリフォン星系に到着

メインスクリーンには、漆黒の静寂に覆われた宇宙空間。
静かに光放つ星々とマリーゲートが映っていた。

「ふーーーーー・・・。」

今一度大きく深呼吸すると、ニーナはまだ震えている手でナビゲーション・コントロールのスクリーンにマップを写し出し、エリアを確認する。

そして、間違いなく自分がグリフォン星系にいると確信し、胸をなで下ろす。

「アーマーは300と少し・・・か。
なるべくなら敵に遭いませんように。」

祈るように呟くとニーナはグリフォン星系でただ1つのステーション、コンベック・イースト社の採掘ステーションのある小惑星『ファントム』にコースをセットした。

そう、今回は宇宙空間にあるスターベースでも採掘ステーションでもなく、惑星、つまり地上に建設された宇宙コロニーの採掘ステーションなのである。

とはいっても、惑星上の採掘ステーションも、自動誘導で着陸できるようになっている。

違う点は、薄いとはいえ一応惑星を取り囲んでいる大気圏への突入があるのみだ。

コクピットのスクリーンに映し出された小惑星ファントムを目視で確認すると、ニーナはその周回軌道に乗る。

そして、ステーションと連絡を取り、着陸の許可を取ると大気圏に突入。
そのまま数秒後には、自動誘導により、船はゆっくりとステーションに引き寄せられていく。

ファーアーム内の資源が豊富な小惑星に建設された採掘ステーションは、何処でも同じ造りである。透明なドームに守られたごく小規模な、そして簡素なステーションだ。

ここ、コンベック・イースト社の採掘ステーションも例外ではない。

その豊富な資源の採掘に多くの坑夫がそこで働いているが、観光的な物は何もない為、星間旅行者も滅多に立ち寄らない。

ニーナの様な、いやもっと柄の悪い商人が立ち寄るのみである。

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小惑星ファントム、採掘ステーション内「不潔酒場」

観光地とは到底言えないが、ここの「不潔酒場」は有名なのである。

名前からして、どうも気が進まなかったが、種々多様な人種がいるということは、その分情報もそうなのだ、と思い直し、スーパーコンピュータを仕入値の2倍で売って、ほくほくのニーナは、とにかく酒場を覗いてみることにした。

『不潔酒場』の名の通り、そこは小汚い酒場だった。

煙草の煙とアルコ-ル、食べ物の臭いそして男たちの臭いが充満していた。

坑夫に商人、それに、お尋ね者のような、うさんくさい奴、加えて、人間以外の知的生物で賑わっていた。

何か情報をと思い、ここへ来たニーナだったが、その異様な雰囲気に圧倒されて、なるべくかかわり合いにならないように、と目立たないようにカウンターに座った。

ふと気づくと少し離れたイスに、鈍く光るオレンジ色の肌をした変な生き物がいた。

たくさんの触覚が頭に付いていて、チューチューと音をたててビールをすすっている。
目は12個もある。
初めて人類以外の知的生命体を見た彼女は、失礼だとは思いつつ、じろじろ見てしまっていた。

「こんにちは、ヒューマン、我々と一緒にいっぱいいかがですか?」

ニーナの視線に気づいたのか、彼女の方を向くと、話しかけてきた。

「我々?」

イスには1人しか座ってないのに、と思い彼女は聞き返した。

「そうです、我々はアーセラスと言います。
12の部分からなる集合有機体で、成長すると互いに1つに合体して生活します。
これが、我ら種族の生き方なんです。ビールはいかがですか?」

12で1つの彼らは、その12の目でニーナを観察しているようである。

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「い、いただきます。」

有無を言わさない雰囲気にのまれて、ニーナはついそう答えてしまった。

「ヴェーダと呼んで下さい。ところで、ご存じですか、ヒューマン。」
ヴェーダはニーナにジョッキを渡しながら言った。

「我々アーセラスはバイオプロダクトの専門家なのです。
生きた組織を使って様々な種類の便利な品を創り上げるのです。
1つお目にかけましょうか?」

「どんなものなんですか?」

(生きた組織を使って?そんなことができるのかな?)

ニーナはくねくねうねる彼らの触覚に半分気を取られながら聞いた。

(もう少し太かったら、まるでメデューサの蛇みたい・・・色は違うけど・・)

「これは、『アメーバ・コンタクトレンズ』で、強い光から目を守るのに有効です。
新星を観察するときなど大変便利です。
強い光を浴びると、アメーバが目の神経組織に潜り込むので、受容体が閉ざされ、結果的に目が守られるわけです。
250クレジットにまけておきますが・・・。」

ヴェーダはカバンから小さなカプセルを取り出すと、ニーナに見せる。

「う~~ん・・もらっておこうかな?」

中は見えないし、アメーバが目の神経組織に潜り込むなんて気持ちも悪い。

が、12個の目は催眠波でも出しているのか、どうも彼らにのまれてしまったようで、買わないと悪い気になっていた。

ヴェーダは、嬉しそうにカプセルを開けると、ごく小さな燐光色のディスクを2枚取り出し、それを手早くニーナの耳に入れた。
その前に手に取って見てみようとするニーナにお構いなしに・・・。

有無を言わさずとは正にこのことだ。

ニーナはアメーバが神経組織に潜り込む際の奇妙な吸われるような感覚(ヴェーダによる)を味わった。

そして、視界が急に薄暗くなり、このまま見えなくなるのでは、とニーナの頭を心配が過ぎった時、彼女の目は再び通常通り普通に周りの景色を写していた。

「それじゃ、そろそろ行くとしよう。さよなら、ヒューマン。」

ヴェーダはニーナから代金を受け取るとご機嫌よく酒場を出ていった。

「?」
初めのおかしな感じさえなければ、どこも変わったとこがない。
ニーナはだまされた様な気もしていた。

どうもこの酒場の雰囲気は肌が合わないようで落ち着かない。

彼女はヴェーダにおごってもらったまだ手も付けていなかったビールを一気に飲み干すと、酒場を後にした。

ステーション内のポートから一番遠いところに坑夫の宿舎がある。

その向こうが採掘場なのだが、知り合いもいないニーナはそこへ行くことは止め、仲買人から鉱石『ディリシウム』を買うと再びカロノス星系のヒアスラへ向かうべく、マリーゲートを目指した。

もちろん、ヒアスラ/スターベースの酒場のマスターへのお土産を買うことも忘れずに。

>>>SF・スペースファンタジー・星々の輝き・SpaceRogue-19-につづく

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