SFスペースファンタジー「星々の輝き」20・瀕死の初勝利

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カロノス星系へ戻ろうとマリーゲートに向かったニーナの行く手に帝国と敵対しているマンチーの俊足艇ワスプが現れた。
その敏捷さに手も足も出ないニーナ。
が、ここで死ぬわけにはいかない。彼女はやけっぱちとも言える下手な鉄砲も数打ちゃ当たるの考えに添い、レザービームを打ちまくって迎撃した。
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Contents

瀕死の初勝利!

情報を的確に素早く読みとり、その瞬間に分析とそれに見合った行動。
それがこれほと過酷なこととは、この時、始めて知った。

両手にじっとりと吹き出てくる汗、
一瞬の気も抜けない状態が小一時間ほど続いただろうか。

-バシューンッ!-

幸運にも粉々に砕け散り、宇宙の塵と化したのは、ジョリー・ロジャー号でなく、ワスプの方だった。

「ふーーーーーー・・・・」

メインスクリーンに粉々に砕け散ったワスプの残骸を補足し、そして、TACシステムでエリア内に敵のいないことを確認するとようやく彼女は緊張を解き、ほっとした。

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「う・・アーマー130・・・」

アーマーの数値を見て一瞬(?)固まる。

とにかくヒアスラに帰らなければならない。
気を抜くには、無事ワームホールを抜けてから・・・いや、スターベースについてからだ!

ともすれば、今の戦闘で気力を使い切ってしまったため、脱力感に襲われそうなニーナだったが、そんな甘い事を言ってもいられない。

今一度、自分を奮い立たせると、彼女は、マリーゲートに目標をセットした。

「どうかもう何も出ませんように・・・・」

自動航行に入ったというのに、いつものように、眠る気にもならず、彼女は祈るようにメインスクリーンを見つめていた。

そして、マリーゲート。
オレンジ色にきらめくゲートをしばし眺め、ニーナは深呼吸する。

「いつもよりスピードアップしなくちゃ腐食ガスにとかされてしまう。失敗は許されない。」

ごくりとつばを飲み込むと、操縦パネルに手を乗せる。

「行っくよーーー!」

無事カロノス星系へ

なんとか、残りのアーマーでワームホールを通過、無事ヒアスラ・スターベースに着くことができた。

「アーマー、50か・・・ぼろぼろね、これじゃあ。・・九死に一生ってところじゃないの・・。よく帰って来れたものねー・・・。」

自分ながらつくづく感心していた。
戦闘中、何度もうダメだと思ったことか。

そして、もしかしたらホール内で溶けてなくなるかもしれない、という不安と恐怖。

その不安は、どうにか当たらずにすんだが・・・ずたぼろになったのは、愛挺ジョリー・ロジャー号のみでなく、ニーナ自身も、心身共に疲れ切り、ずたぼろになっていた。

おかげで、せっかくグリフォンで儲けたお金も修理代やら何やらで吹っ飛んでしまった。

ワスプ撃退の賞金である、64クレジットなどは、無いよりまし、焼け石に水、といったところ。

(でも、ないよりいいし、命あっての物種っていうから、また儲ければいいよね。)

そう思い直して、再び奮起する彼女。

「あの戦闘から生き残れたんだ・・これくらい何ともないって!」

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コツコツとステージアップ

しばらくマンチーはいらないと、少し懲りてしまった彼女は、船が直ってからも暫くは同じ星系内のそれまで何度か行った小惑星地帯にあるマイコン1拓殖基地との貿易に専念した。

マイコン1で商品を売ってすぐUターン、再び、その繰り返し。

ステーションに立ち寄ると、気分転換に酒場に行くニーナだが、彼女は、どうもマイコン1の酒場には苦手意識があった。入りづらいのである。

その分、ヒアスラスターベースの酒場には、結構入り浸りだが。
主人と懇意になったこともあり、ニーナにとって、ヒアスラの酒場は別格なのだろう。

それにマイコン1の酒場では、最初入った時、元宮廷音楽師とかいう男に、いい情報を教えてやるからとか言われて、散々おごらせられ、結局山ほどの愚痴を聞かされただけ、という苦い体験がある。

彼女はそう感じてもないようだが、それが起因の1つのようでもあった。

とにかく、その元宮廷音楽師は、ずっとそこに住み着いているらしく、酒場を訪れる人毎に、うまいこと話を持ちかけてはおごらせているらしい。

もっとも、各ステーションの酒場に置いてある、『ハイブ』とかいうゲームのBGMがうるさいだけで、気に入らない、という彼の意見には、賛成だった。

そうして、再びグリフォン星系とカロノス星系間の貿易も始めたニーナは、徐々に収入を増やしていき、船の装備もどんどん充実していった。

ビーム砲も一番強力な『粒子ビーム』にし、前部シールドを補強、後部にもシールドを取りつけた。

それに、相手のミサイルをかく乱させる『ECM』(ElectronicCouterMeasure)』も取りつけた。
それは、X線の陰極のテクノロジーを応用し、敵のレーダーを妨害する装置であり、敵のミサイルのエネルギー探知機を邪魔する物だ。

レベルは、25%、50%それに75%の3段階がある。
これは、ミサイルを妨害し、避けることができる成功率を表している。
破格の値段なので、ひとまずニーナは50%のECMを取りつけた。

過信は禁物だが、これで幾分航行が楽になるはずだ。

彼女は、TACのシステム欄に『c/f/a/e/b/m』と表示されているのを、満足気に見ていた。

そこには、ECMを表す『c』後部シールドを表す『a』が追加表示されている。
まだまだ全て最高といったわけではないが、最初の頃に比べれば、数段の違いだ。

「さあ、もっと、もっと、頑張るわよ、ロジャー!」

コントロールパネルを操作するニーナの手が軽やかに踊る。

(そろそろブルー号のみんなの仇を取るための情報収集も始めないと・・。)

彼女がパイロット見習いとして乗船していたプリンセス・ブルー号。
時にはきびしくも、やさしく暖かかったクルーの顔が浮かぶ。
彼女の手は踊りを止め、瞳はスクリーンに映る宇宙空間の中にクルーたちの面影を見つめていた。

 

>>>SF・スペースファンタジー・星々の輝き・SpaceRogue-21-につづく

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