SFスペースファンタジー「星々の輝き」48・マンチーの怒りの原因

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海賊の首領、ガットに会いコス提督の陰謀を話すニーナ。
果たしてガットはこちら側なのか?

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SFスペースファンタジー「星々の輝き」48・マンチーの怒りの原因

ライゾンという共通人物のおかげで、幾分ガットの雰囲気が柔らかくなった気がしたニーナは、本題に入ることにした。

「ガットさん、ファーアームが無くなったらどうしますか?」

ここまできたら直球で行くしかない。
駆け引きなんて未経験の自分が下手に探りをいれるより、正直に言った方が良いとニーナは判断した。

それに、海賊ということは横におけば、悪人だとは感じなかったのである。

「ファーアームが?
そうなったら、どうしようもねーだろ?」

俺たちも一緒に宇宙の藻屑だとでも言うように、ガットは少し大げさに手を広げて顔を少ししかめた。

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マンチーの大艦隊

「マンチーの大艦隊がこちらに向かってきてます。」

「ああ、しかし、事実確認はできてねーぜ?」

「事実確認はできてないかもしれないけど、おそらく事実だと思います。
で、もしマンチーと全面戦争になったらどうなると思います?」

「ふん!あいつらの習性は知ってるぜ。
おそらく、人間かマンチーか、どちらかが滅するまで奴らは攻撃の手は止めねーな。」

「ファーアームの現状はどう思ってます?
マンチーに帝国が賞金をかけていることが、この先どうなるのか、敵対がエスカレートしていくとどんな未来に繋がるのか、ガットさんなら分かってると思うんですけど。」

「なるほどな。あんたの言いたいことも分かるが、……しかし、大艦隊を送り込んでくるほどでもないだろう?小さないざこざなんざ、この宇宙にゃたくさんあるぜ?
そこを全面戦争に至るまでの理由が分からねーが。」

「はい、私もその理由が、最後のピースが分からないんです。
なぜ、マンチーがそこまでしてファーアームを襲撃しようとしてるのか。
でも、はっきりしていることもあります。」

「なんだ?」

「マンチーを攻撃するのは止めることです。
これ以上彼らを刺激しないで欲しいんです。」

「で?オレたちが止めれば、奴らも止めてくれるとでも言うのか?」

「そ、それは分かりません。
でも、ファーアームがコス提督の野望の犠牲になるなんて、ファーアームだけが貧乏くじだなんて、許せないと思いませんか?!」

「コスの野郎がどうしたって?」

(しまった!熱くなった勢いで、いきなり話を飛躍させてしまった!
もしもコス提督とつながりがあったらマズいのに)

「あいつが皇帝の座を狙ってやがるこたぁ、知ってるが、ファーアームがその犠牲になるだとぉ?」

ガットの怒りを含んだ言葉と表情に、ニーナは2人のつながりはないと判断し、ほっとした。

「マンチーがファーアームに大艦隊を送り込むほどの怒りの原因は分かってないんですが、コス提督がブラックハンドのビラニーと手を組んでその原因を作って、全面戦争を呼び込もうとしていることは、間違いないです。」

「ビラニーだと?」

ぎろりとガットの瞳がキツい輝きを放った。

「はい。聞いてくれますか?」

話して見ろと目配せするガットに、ニーナは公妃の密偵だということは隠して、タルゴン隊長ことライゾンが集めた情報を元に、コス提督の陰謀の全体像を話しはじめた。

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クロスワードパズル、最後のピース

ガットはニーナが話すその間、一言も口を挟まずに熱心に彼女の話を聞いていた。

話し終えると、彼は立ち上がり、部屋の中を行ったり来たりして、しきりに何かを考え込んでいるようだった。

「ビラニー、あの・・・魔女め!」
彼は突然拳を机に叩きつけた。

「俺は、あいつが何かを企んでいることは、分かっていた!」
ガットの顔色は怒りで真っ赤になっている。

「隠れて企みをする奴等は許せねぇんだ!
特に相手がコスだとかビラニーなんていう汚ねぇ奴ならなおさらだ!」

「ガットさん、マンチーを攻撃するのは、止めて下さい。
このままだと、本当に大変な事になってしまいます!」

ニーナは必死でガットに訴えた。

「勿論、あんたの言ってる事は正しい。」

「じゃー?」

「マンチー襲撃は中止しよう。
我々が攻撃を止めれば奴等もおとなしくなるだろう。
いずれにせよ、ビラニーには、たっぷりはずんでもらったからな。
15万クレジットも払ってくれたんだ。たかが、卵1個にな。」

ガットは再びイスに座ると言った。

「卵?」

「マンチーの卵だ。
『ギ・ゴンガー』と呼ばれていると思ったが。
あの魔女めがやたらと欲しがってたんだ。
だから俺たちゃ、マンチーの領域の中心まで探しに行ったのさ。」

「『ギ・ゴンガー』ですって?」
それを聞いて、つい大声で叫ぶニーナ。

「そ、それは、只の卵じゃないんです!
その卵の中には将来のマンチー・クイーンがいるんです!!」

ニーナがイチキから聞いたマンチーに関することを話すと、ガットはしばらく放心状態だった。

「俺は、マンチーがどんな奴か知っている。
散々戦ったからな。
もともとそんなに好戦的な種族ではないんだが、怒らせると逆上して、殺戮に走るんだ。
奴等のクイーンの卵を盗む。
次期クイーンである卵を・・・。
こんなことをすれば怒り狂って当たり前だ!
彼らにとっては、卵を失くすことは、種の滅亡を意味するんぜ。」

さすがのガットも焦りを覚えていた。

「その卵が今どこにあるか、知ってますか?」

「ああ、ビラニーの部屋だ。
彼女の部屋の作り付けの飾り棚に仕掛けがあってな、隠し金庫の中にあるはずだ。」

「取り返さないと!!」
すっくと立ち上がったニーナをガットが制した。

「待て!下手に行っても捕まるだけだ。
秘密結社のあるトローシャルは私設警備兵が守っている。
それに部屋にはビラニーがいるだろう。」

「でも・・」

「・・・だが・・そうだな・・ブラザーフッドで動けば・・・もしかすると・・・。」

「もしかすると?」

ニーナは顎に手を充て、じっと考え込むガットの顔を覗き込むようにして聞いた。

「何かいい方法が?」
ガットは、にやっと不敵な笑いを浮かべた。

「こうしよう。あんたは、トローシャルにドッグ入りする。
俺の部下の海賊が時間を見計らって襲撃をかけ、警備兵の注意を引きつけておく。
その間、部屋にはビラニー1人になるはずだ。
君は、ビラニーの部屋に行き、何とか卵を奪い返してくるんだ。分かったな!」

「は、はい。」
その”何とか”が一番難しいと思ったニーナだが、協力してくれるのは助かるし、それは自分がやるしか無いと思った。

「トローシャルの見取図を船のライブラリーに送っておくぜ。
ビラニーの部屋や隠し金庫の場所も分かるようにしておいてやる。
空調ダクトを進むんだ。ポートまでの近道も印しておいてやろう。」

「ありがとうございます!」

「気を引き締めて行けよ!
くれぐれもビラニーに見つかるんじゃないぞ!」

「はい!」

ガットの激励を受け、ニーナは、ドアを開けてポートを目指して通路を真っ直ぐ走っていく。

 

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