SFスペースファンタジー「星々の輝き」49・秘密結社に潜入

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海賊ギルド「ブラザー・フッド」の協力を得て、秘密結社の首領ビラニーの部屋へ潜入、マンチークイーンの卵奪回を試みるニーナ。
相手は心を読み、制御するという魔女。果たして上手く運ぶだろうか?

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SFスペースファンタジー「星々の輝き」49・秘密結社に潜入

ニーナが、秘密結社ブランクハンドの本拠地である拓殖基地・トローシャルにドッキングするやいなや、約束通り海賊の一群が 基地を襲撃してきた。

基地中に警報ブザーが鳴り響き、警備兵は迎撃体制に移る。
勿論、基地内の警備は手薄となっている。

マインド・コントロールに注意せよ!

「よし!行くよ!」
相手は、精神操作ができる司祭。
腰が引けそうになる自分を叱咤し、ひとまず空調ダクトより手っ取り早く進める通路を奥へと向かう。

一般区(といってもブラックハンドの息はかかっているのだが)を抜けるあたりで空調ダクトに潜り込む。

あとは、探査ウォッチに表示させた見取り図と照らし合わせながら、ブラックハンドの首領・女司祭ビラニーの部屋に向かう。
残念ながら空調ダクトから直には室内に入れない仕様になっている。

「よし!ここの出口だ!」
熱探査機で付近に警備兵や信者がいないかどうか確認してから、ビラニーの個室近くの空調ダクト開閉口から通路へと出る。

その一角は、基地全体を覆っている異様な重苦しい空気が、一段と濃く重圧さを感じた。
それは、常にどこかから誰かに見張られているような気配もした。

が、そんなことを気にしている暇はないニーナは、ビラニーの隙を狙おうと、ドアの外で身構える。
警備兵はいないとは言え、マインド・コントロールができるビラニーがいては、すぐに入るわけにもいかない。
こうして部屋の外で内部を伺っていることさえ、ビラニーに気取られていそうで怖い。

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「何故じゃ、何故海賊どもが襲って来なくてはならないのじゃ!」

しわがれた老婆のよ うな声がしたかと思うと、いきなりドアが開き、ビラニーと思われる女司祭が出ていく。
どうやら周囲の気配を探っている様子もなさそうだ。

「チャンスだ!」

ドアで思いきり顔をぶつけられたニーナだったが、その痛みを堪え、 そっと、部屋の中に足を忍ばせた。

誰もいないその部屋は、怖いほど静まり返っている。

ニーナは、教えてもらった通り、隠し金庫のある飾り棚を目指して、奥の小部屋へと真っ直ぐに向かった。

が、その部屋のドアには鍵が掛かっていた。

普通のドアノブの為、ニーナの持っているキー・カードでは開かない!

(ど、どうしよう?せっかくここまで来られたのにビラニーが戻ってきたら・・・)

彼女は焦った。いつビラニーが戻るか分からない。
そうなったら最後だが、ここは出直すしかないのだろうか?そう思っていたときだった。

「ニーナ!」

小さな声だが、急に後ろで名前を呼ばれ、びくっとして、彼女は振り向い た。

そこにいたのは、修理ロボットのリズだった。
その手には何か小さな機械のような 物が乗っていた。

「これを使ってみて。」
それは、オプトマグネティックのロックメカだった。

さっそく ニーナはそれをドアノブにセットし、引っ張ってみた。

すると、開きそうもなかったのが、 嘘のように、カチっと音がして、簡単に開いた。

(やったっ!

リズと視線を合わせると、急いで中に入り、飾り棚の組み棚を動かして、隠し金庫を見つける。

(えっと、ここの番号は・・・)
旧型の隠し金庫であるそれは、ダイヤル式。
ニーナはガットから聞いた番号を回す。

ーカシュー

(おっけー、開いたわ!このカプセルね?)

中にあった銀色のカプセルを取り出すとカバンに仕舞う。
後は、見つからずに、無事ここから出るのみ。

幸い、まだビラニーは帰ってきた気配ない。
ニーナとリズは慎重に足を運んだ。

金庫があった部屋から出て、もう少しで廊下に出れるという時だった、ドアノブがガチャリと回される音がした。ビラニ ーが戻って来たのだ。

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ニーナとリズは慌てて、それぞれ目に付いた家具の陰に隠れる。

「そこにいるのは、誰じゃ?」
見えないはずなのに、部屋にはいると同時に、本棚の横に隠れていたニーナを指し、詰問するビラニー。

ニーナはその言葉に引き寄せられるようにして、ビラニーの前に姿を現す。

「私は女司祭、ビラニーじゃ。
お前は何者じゃ?ここで、何をしていたのじゃ?」

腰が曲がり、弱々しく見えたその老女は、その風貌とは相反して、突き刺すような赤い 白子の瞳を持っていた。
そして、それは鉄のような厳しさに燃えていた。

「入団テストをしに来たのか?」

「い、いいえ。」

「それでは、何か別の目的があるのじゃな。」

ニーナは答に困った。後ろに隠し持っている卵が気になった。

(見つからなければいいけど。)

「しゃべらなくとも良い。
私はお前の思念を読むことができる。」

ビラニーは瞼の下からすくい上げるように、ニーナを見た。

彼女の冷たい視線は、ニーナの心を凍らせてしまうかのように思われた。
が、突然ビラニーが、いらだたしげに叫んだ。

「テレパシー・シールドだね。
不信心者めが!今すぐそれを外しなさい!」

(え?…そ、そっか、オマス牧師からもらった『サイオニクス・シールド』だ!)

ニーナは答える代わりに、ビラニーを睨む。

「愚かな奴め。
シールドで私の力は防げても、ここの兵隊達を防ぐ事はできまい。」

ビラニーが壁のブザーを押そうと手を伸ばした隙に、ニーナは、身体を少し移動させ た。

「そ・・それは・・・おのれ、それが目的か!!
だが、このビラニー様の目を盗 むことはできぬ。
さあ、それを返すのじゃ!」

カプセルが入ったカバンを見つけたビラニーは叫んだ。

ビラニーの目は、ニーナの目を捕らえて放さない。
それはまるで蛇に睨まれ硬直したカエル。

サイオニクス・シールドをしているとはいえ、 ビラニーの精神波はニーナの精神を圧迫していった。

ニーナは卵の入ったカプセルをしっかと抱えつつ、自分に言い聞かせていた。
「負けるもんか!」

ビラニーの白く濁った目が赤く光っているかのように見えた。
(の、飲み込まれそう・・だけど、ここで負けては・・・)

ニーナの脳裏に狂人となってしまったタルゴンの姿が浮かんだ。

「ええい、いまいましい、シールドめ!」

自分の意の通りにならないニーナにしびれを切らしたビラニーは、再び壁の警報ブザーに手を伸ば した。

と、その時、ビラニーに突進した小さな影があった。

-ドスン・・ガタタンー

「な?だ、誰じゃ?!」

不意に突進されたため、よけることができずその場に横倒しになるビラニー。

「リズ!!」

「ニーナ!今のうちだよ!!」

2人は、倒れて「警備兵!警備兵!」と叫ぶビラニーが、なかなか起きあがれないでいるうちに、さっさと逃げ出した。

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マンチークイーンの卵、無事奪回

「サイオニクス・シールドって、すっごい物だったんだね。」

無事トローシャルを出たニーナはコクピットでリズと話をしていた。

「ん、そうだね。もしそれがなかったら・・。」

「今頃、自分から、宇宙に身を投げてたってとこだね。」

「もしくは、タルゴン隊長みたいに・・。」

「ん。・・でもさぁ、リズがロックメカを作って持ってきてくれて、助かったよ。
ど うにも開かなくって困ってたんだ。」

「多分そうじゃないかと思ってさ!
あり合わせのパーツだけど、急いで組み立てたんだ。」

リズは得意そうに胸を張って威張ってみせた。

「それくらい気づかなくっちゃ!」

「はいはい、リズ、様々です。」

ははははは!!2人して大笑いをした。

「さて、ガットに会ってこれからのことを決めよう。」

ニーナは、協力してくれたセクター内の海賊船に挨拶を送ると、自動航行に切り替え、横に置いたカプセルに目をやった。

「さあ、王女様、本国までお送りしますからね!!」

 

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