SFスペースファンタジー「星々の輝き」26・アンドロイドの恋

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デネブ星系に来たニーナは、いつもどおり酒場で情報収集後、航海日誌に書かれてあった整形外科医が誰なのかを突き止めるため、ひとまず腕の良い整形外科医がいるというデネブ星系内の小惑星ネロにある採掘ステーションネロへと向かう。

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SFスペースファンタジー「星々の輝き」26・アンドロイドの恋

ニーナは、小惑星『ネロ』の採掘ステーション、ロスに来ていた。
確かここに腕のいい整形外科医がいると聞いてきたのだ。

基地はそんなに大きくはなく、案内で聞くとすぐ整形外科クリニックの場所は分かった。

「『ドクター・エラシアス・フェラー/美容整形医』・・ここだわ!」
その看板を見つけ、ニーナは期待に胸を躍らせながら入ってみる。

全盲の整形外科医

「こんにちは。」
看護師はいなかった。
狭い待合室には患者さえ誰もいない。

「ホントにここが腕のいい整形外科医の医院?」
ニーナは自分が騙されたのかも、と思うほどそこはしーんとしていた。

「あ・・あのーー」
受付のガラス窓をそっと開け、ニーナは声をかけてみた。

窓口のところに机があるだけで、奥はそのまま診察室らしい。
そこから部屋の内部が見える。
診察台とイス、そしてドクターのものと思われる机とアームチェアー。

そして、壁には、おそらくここで手術したであろう患者の術前と術後の写真が飾ってある。

「すみませ~~ん、どなたかいらっしゃいませんか?」

-パタン-

窓口からは見えなかったが、どうやら横に扉があり、その奥にも部屋があるらしい。
そこから1人の女性が出てきた。

「はい?急患でしょうか?今日はもう終了したのですが・・。」

「は?い、いえ・・違いますけど・・。」
なるほど診療時間が過ぎていたのなら、誰もいないのも理解できる。

「けど・・?」
彼女はニーナの口調から何かを敏感に察したようだ。

「少しお聞きしたいことがありまして。」

「整形のご相談でしたら、明日にでもまた診療時間にいらして下さい。」

「い、いえ、そうじゃないんですけど・・
あ、あの、どうしても知りたい事で・・大切なことなんです。
できたら診療時間じゃない方がいいんです。」

ニーナは必死になって訴えた。

「そうですか、では…どうぞ。」

真剣さが功を奏したのか、女性は診察室へ入れてくれた。

「あなたの顔に触れられるくらい近くまで来て下さい。」
ドクター用のイスに座ったことで、ニーナは彼女が整形外科医本人だと察した。

「は・・はい。」
いすに座ったままニーナが近づくと、彼女は手を伸ばし物慣れた手つきで、ニーナの顔を触り始めた。

(ああ、この人、目が・・。)
ようやくニーナは、彼女が全盲なのだということに気づいた。

全盲の整形外科医!信じられない事だったが、その疑問はすぐ消え失せた。

彼女はニーナの顔を入念に触ると、机の上に用意してあった粘土でみるみるうちにニーナの顔を作っていった。

ニーナは目を丸くして、自分の顔を象っていく粘土を見つめる。

「なかなか強い、意志のしっかりした、いい顔ね。」

「あ、ありがとうございます。」

「それで、ご用件は?」

「は、はい。あの、私ニーナ・シャピロといいます。
実は、・・先生が手術した患者さんの事でお聞きしたいんですけど。」

個人的な情報だ、話してくれるだろうか、と心配しながらも一応ニーナは聞いてみる。

「私は、今まで王室関係の方とか、軍の英雄や海賊、またはスパイに至るまで手術をしました。
秘密は厳守しておりますので。」

すまなそうに言う彼女に、何とか教えてもらおうと、ニーナは粘る。

「あの・・別に手術後の写真を見せてくれ、なんて言いません。
手術したかどうかだけでいいんです。」

「困りましたね。何か特別な理由があるようですが。」

やはり目の見えない分感が働くのだろうか、ニーナの口調から特別な理由があるらしいと感じ、彼女はしばらく考え込んでいた。

その間、ニーナは真剣な面もちでじっと彼女を見つめていた。
そして、それをも感じたのか、根負けしたかのように彼女はため息をつい後、ニーナに聞いた。

「その方のお名前は?」

「えっとぉ・・名前・・あ、あの、公妃様の部下の中で手術した人っていないでしょうか?」

「さあ・・・確かに患者さんの職業も聞いてはいますが、それが果たして本当なのかどうかは、わかりませんし、中にはおっしゃらない方もみえますので。」

「そうとは思いますけど、その中に公妃様の部下とか言ってみえた人はいなかったでしょうか?」
藁をもつかむ思いで聞くニーナ。

「いなかったように思います。」

「じ、じゃー、ジョリー・ロジャー号という船のクルーとかは?」

「ジョリー・ロジャー号ですか・・・記憶はいい方と思うのですが、覚えがありませんね。」

「そ、そうですか・・。」

あまりにも情報がなさすぎる。
結局、今の情報のみでは無理と思ったニーナは、丁寧に礼を述べ、諦めて診察室を後にした。

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アンドロイドの恋

その帰り道、彼女は執事の服を真似たユニフォームを着た人間型男性アンドロイドとぶつかってしまった。

「ご主人様に言われて私を連れ戻しに来たのですか?」

しりもちをついてしまったニーナを引き起こしながらアンドロイドは言った。

「ご主人様?」
意味が分からないニーナは聞き返す。

「ああ、失礼致しました。何でもありません。」
そう謝った彼は、いかにも悲しそうだった。

「あ、あの・・ご主人様って?連れ戻すって?」

その悲しそうな表情が気になり、ついまた聞き返す。

「ボルグ・スログソーン様です。厳しい方でした。
私がいくらお仕えしても満足しては下さいませんでした。」

「何か、悲しい事でも?」

「えっ、私が・・そう見えますか?」
彼は驚いたようだった。

「ええ、とても。」

「そうですか、そんなに表情にでているとは、思いませんでした。
実際あの娘(こ)が行ってしまうまで、私は喜びで満ちていたのですが。
長い話です。お急ぎなのではないでしょうか?」

急いでいると言えば、そうだ、と思いながら、ニーナは答えた。
「いえ、別に。」

「たかが、アンドロイドの悲しみに同情してくださるとは、お優しい方ですね。」

そう言ってそのアンドロイド『LUX-23A』は、自己紹介した後、ニーナに彼の恋人である人間型のメイドロボット『MAIDー77』との恋物語を語った。

「・・・・とにかく、インターフェースが引き合ったんです。
上手くいってたんです、私たちは。
なのに、ハウスキーパーとして購入した彼女を、ご主人様は気に入らないからと言って、ゴミ処理用にリプログラミングしようとなされたんです。」

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彼は大きくため息をついた。

「考えられますか?私たちアンドロイドにも誇りがあります。
MAIDは逃げる以外方法がなかったんです。
怒ったご主人様は賞金をかけたんです、不良アンドロイドだとおっしゃって。
最後にはスパイの嫌疑さえかけたんです。
彼女は決してそのような事ができるアンドロイドじゃありません。
それは、ご主人様もご存じのはずなのです。」

彼は、自分の両手をじっと見つめた。

「もし、MAIDが見つかったら、私に彼女の分解処分の命が下るでしょう。
そして、私は自分の意志とは反してても、そうしなくてはならないのです。
私はご主人様に忠実に従うよう、プログラムされていますので。」

彼は、自分の両手を見ながら、悲しげな目で言った。

その悲しげなLUXについつい同情の念を駆られ、結局ニーナはMAIDー77を探しだし、こっそり彼の所に連れてくることを約束してしまった。

「ふーーーん、女性型アンドロイドねー。
外見もどこにいるのかも、分からないけど、会ったら彼の名前を言うのね。
そうすれば向こうから話してくるわけで・・。」

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『お人好しなのもいい加減にしとくんだぜ。』

またまた頼み事を安易に引き受けてしまったニーナの脳裏に、マイコン2で会ったケールの顔が浮かんでた。

「だって、引き受けちゃったものは、しょうがないでしょ!」

 

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