SFスペースファンタジー「星々の輝き」14・お使いは賄賂贈呈

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宇宙ひとりぽっちの少女ニーナの大冒険。SF・スペースファンタジー「星々の輝き」SpaceRogue、前の話はこちらから

カロノス星系・拓殖基地「マイコン1」にある酒場の主人からもらった”うまい話の元になる紹介状”を握りしめ、ニーナは一般エリアの置くにあるスペシャルエリアへと向かう。

特に、通路の途中で関所のようなところがあるわけでもなく、普通に通路はつながっていたが、途中でまるで世界の仕切りのような感じの1枚のドアを通り抜けると、そこは、見事は金世界。

「うわああ・・なにこれぇ?趣味悪ぅ~~」

思わずニーナの口からそんな言葉がこぼれでたのも頷けるだろうか。とにかく、床も壁も天井も周囲見渡す限り黄金なのである。

(なんとなくだけど・・・・自分もキンキラづくしの成金おやじとの遭遇になりそうだけど…)

などという、言わせる人に言わせれば、それはニーナの偏見でしかないだろうが、そんな人物を想像しながら、あまりにものキンキラにため息が出るのを止められず、めまいがするのも止められず、だが、とにかくまっすぐ通路を進んでいた。

何があろうと”後戻り”という文字は今のニーナの頭の中にはなかったからである。

と、通路の行き止まりに立派な門が見えてきた。もちろん黄金の輝きを放っている。
そして、その左サイドに、黄金のアンドロイドが1体、直立不動で立っていた。

「えーっと…アンドロイドに見えるけど、単なる飾りものかな?どっちだろ?」

「失敬な!」

「え?あ…ごめんなさい。黄金の像じゃなかったんだ」

飾り物とも思ったその黄金のアンドロイドから不満の声をかけられ、慌ててニーナは謝る。

「そんなことより、キミは何者だ?身分証明書はあるのか?何しにここに来た?」

「えっと、酒場の親父さんから紹介状をもらってきたんだけどな。仕事をくれるとかでさ?」

ペラリと招待状をアンドロイドの目の前にちらつかせるニーナ。

「もっとしっかり見せてくれないか。スキャンしてこちらが持っているデータを照合する。」

「それより、中に入らせてくれれば簡単じゃない。」

「キミは、私に職務怠慢罪を着させて金の塊に溶かしたいんですかね?」

「あ、いえ、そ、そんなことは。」

「ふむ…ちょっと待っていたまえ。」

データバンクにアクセスする音なのかなんなのかニーナには判断がつかなかったが、ともかくウィーーとかチロロロリンとか小さく音を立て、ともかく招待状の照合をしているようだった。

「ふむ、怪しい点はない。では、入ってよろしい。」

ーシュンー

アンドロイドがそう言うと同時にドアが開いた。

「あ、うん、ありがとう」

「ご武運を」

「うん、あり・・・え?」

なぜご武運をなのか聞こうと、アンドロイドを振り返った時は、ニーナが入ってきた玄関のドアは完全に閉まっていた。

「えーっと…」

ドアの前に立てば開くかな?と思って立ってみたが、開く気配はなく、ニーナもそれ以上深く考えずに、まっすぐ前に続いている廊下を進んだ。

「ぼうず、何しに来た?」

「え?」

相変わらず金ぴかに囲まれた円形状に広がっている広間らしきところに出、前面と左右に一つずつあるドアのうち、どれに進めばいいのか迷っているニーナの背後で、ドスのきいた声が響く。

「あ、あの・・・あ、あなたがサー・エルドですか?」

ここまで金ぴかにしている大金持ちからニーナが連想していた格好とは違い過ぎていた。

「ここは、他の誰でもない、サー・エルドの邸宅だからな、本人がいるに決まっているだろう?」

「え、ええ、まー、そうですが・・・」

ニーナが想像したのは2種類のお金持ちだった。
片方は品の良い紳士、そして、もう片方は、金になることならなんでもやる悪代官的な金持ち。

とはいえ、怪しげな仕事をくれる人物だから、後者の方だとは踏んでいたが、実際に会ってみて、全身から放たれる威圧感(黒い)と狡猾さでぎらついている瞳には、思わず蛇ににらまれたカエル状態になった。

「酒場の親父の紹介だってな?」

「あ、はい、そうです」

「それじゃ、無碍にもできんか。しかし、ケツの青いヒヨッコにしか見えねーが、大丈夫か、ぼうず?」

「大丈夫です!なんといってもヒアスラのオレリアン司令官とは面識があります。」

「ほう…面識…か。」

手にしていた高級そうな葉巻を一口吸うと、ぽわっと雲の輪っかを吹き出す。

「ま、そこに座んな、ぼうず。」

あごで指されたホールの一角にあった応接セットのソファに、どぎまぎしながら座るニーナ。

「わあああ!」

座ったとたんにその気持ちの良いクッションに思わず声を上げる。

「ふっかふか~~~♪」

「ぷっ!」

「え?」

「ぶわっはっはっはっは!」

「あ…し、失礼しました。ぼく、こんなふかふかのソファに座ったの始めてなんで」

「がっはっは…いや、いいってことよ!しかし、玉が縮み上がってるかと思いきや、ソファの柔らかさに声あげるたあ、ぼうず、お前ぇ、末はきっと大物になるぜ?」

「え?、そ、そうでしょうか?」

「まー、そんなことはどうでもいいが。…頼みたい仕事というのは、これだ」

葉巻を加えたままそう言いつつ、サー・エルドは、応接セットの後ろにあったサイドボードから箱を取り出してテーブルに置いた。

「これをヒアスラのオレリアン司令官に届けてもらいたいんだ。」

「これ…ですか?」

「ちょいと司令官と行き違いがあってなー、オレの船団が航行しづらい状態になってしまってるんだ。」

「はあ…」

「詫びようと何度も面会を申し出たり、わびを届けたりしたんだが、全部断られてしまってだな…」

「はあ…」
ウソっぽいな、とニーナは感じた。

「ただでとは言わん。無事司令官に詫びの品を渡すことができたら、ぼうずが今後貿易商として宇宙でやっていくのにこれ以上ない有利で有り難い特別な切り札をやろう。」

「特別な切り札?」

「そうだ。」

にやりと口端をあげるサー・エルド。狡猾さが一段と増した気がする。

「もちろん、駄賃もはずむが、紹介状を一筆書いてやる。」

「紹介状を?」

「そうだ。オレ様の紹介状がありゃ、このファーアームで商売に困ることはない。いくら金を積んでも手に入らないとっておきの切り札だ。」

(でも、司令官にはおべっか使わないといけないんだよね、と思いつつ、ニーナは素直に頷いた)

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「分かりました。必ず司令官にお渡しします」

「中身は値段があってないような工芸品だが…間違ってもネコババしようなんて気は起こさないことだな。」

「と、当然です!」

ギラリと一段とにらみをきかせたその威圧感にニーナは口ごもる。

「まー、そん時ゃ、そん時でウサギ狩りを楽しむだけだがな?オレの部下どもがな。」

「う、ウサギ狩りですか……」

「ぼうずなら、きっと金持ちの変態親父あたりが良い金出そうだしなあ?」

「え?あ、い、いえいえ、ぼく…いや、オレは一度引き受けたことはきちんとやり遂げるのがモットーだから!」

「そうか、そいつは良かったぜ。」

「じ、じゃー、ぼ…オレはこれで。今からヒアスラに向かいます」

「おお、頼んだぜ。良い報告待ってるからな」

失敗したら命がない…いや、あっても集団リンチか、どこかへ売り飛ばされるか、とにかく、無事に受け取ってもらわなくてはと、冷や汗を感じながら、ニーナはしっか!と賄賂の箱を両手で抱え、愛船へと足早で向う。

(そういえば、オレリアン司令官は堅物で融通が利かないって、ヒアスラの(バーの)親父さんが言ってたっけ。……だ、大丈夫…かな?)

脳裏の片隅をよぎった不安を払いのけようと、足早に歩きながらニーナはブンブンを頭を横に振る。

(後戻りはできない!無事に仕事を終えることだけを考えるんだ!)

さて、ニーナの明日は、どんな明日なのか?

 

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