「やっぱりこの小型艇は、サンレーサーだったんだ」
将来は自分の船を持ちたいと思うのは見習いのスターパイロットでも同じ事。
なので、ニーナももれず、スターシップのパンフレットは持っていた。その中の記憶から今自分が乗っているスターシップの種類をそう判断していた。
それはともかく、何をするにつけ、ひとまずスターベースに行かなければならない。その為には基本はきちんと押さえなければならない。パンフレットで見た事があるからといって、やみくもに操縦し始めるのは素人のすることだ。
そんなことを自分に言い聞かせつつ、コクピット内で船に関する書類が入っていそうな場所を探して見つけたのが、まさに探していたそれ、船の取り扱い説明書だった。
Contents
サンレーサー偵察機、ジョリー・ロジャー号
- 全長12m
- 排水量14t
- アーマー(超電導セラミック製):300ユニット
(500ユニットまでグレードアップ可) - ビーム砲:ガーネット・レーザー(10mw/ns)
(オプションでグレードアップ可) - ミサイル:スタンダード発射筒
- シールド:前1(グレードアップ可)
- ECM:オプション装備
- 推進力:ラジオニクス冷却溶解炉 無原子炉ドライブ
- 加 速:0.20G標準
(ターボ・ブースターへのグレードアップ可) - 旋回(°/sec):45
- 積荷用ポッド:4基(8基まで増設可)
「名前は、『ジョリー・ロジャー号』か。
よし!ボク、ニーナっていうんだ、これからよろしくな!
で?なるほど、アーマーは、超電導セラミック製で、衝突や熱によるダメージを構造全体に均等に広げるんだ。何々?500ユニットまでグレードアップ可…なんだ。命にかかわるアーマーだから、グレードアップしたいけど、でも今武器庫、空っぽなんだよね。
それに、ガーネット・レーザーじゃ、心細いよ。レーザーもグレードアップしたいし、フォースシールドが前面だけだから、後ろにも必要だよねー。
ECM(Electroniccoutermeasure)レーダー妨害装置(敵のミサイルのエネルギー探知機妨害装置)はオプションかー。
そんな資金ないよーーー」
オーマイガー!と叫びたい気分のニーナ。
しかし、叫んでも誰も何もしてくれない。解決方は、ない。
手元にある資金は、たったの1500クレジット。
しかし、0よりはいい。これで多少なりとも何かを仕入れて、需要のあるところへ持って行って売ることはできる。
「そう、往復それが見込める販路を見つければ、確実に貯金はできる!」
貿易商と何でも屋
「よし!一番手っ取り早い方法、貿易商でもしていこう!あとは、何か頼まれれば引きうけて手間賃とか」
あまり儲からないかもしれないとは思ったが、海賊やハンター業もムリだということは分かっている。プリンセス・ブルー号で多少は武器の扱い方も習ったが、一人で敵を撃破するだけの、いや、敵の攻撃を防ぎきれるかどうかも、正直言って怪しい。
不幸中の幸いにも、ここはカロノス星系。ひとまず第一に必要としている”スターパイロットのライセンス”は、星系内にあるヒアスラ・スターベースで入手できるはずだった。
そして、貿易業に必要不可欠な通関手続き申請書も一緒に手に入れる事ができる。
「IDチップと通商組合の会員証は持ってるから、手続きはできるはず。」
ふう、と上を向いてニーナは大きく深く、呼吸をする。
「よし!行き先は決まった!あとは、無事にスターベースに着く事を祈って、進むのみだ!」
操縦方法も念の為マニュアルで確認すると、ニーナはフロントスクリーンにマップを映し出す。
「ここからだと、自動航行で6日くらい…か。」
ナビゲーションコントロールパネルを操作して、目的地をヒアスラ・スターベースにセットする。
「自動航行だから、寝てても着くんだけど……」
そのまま倒せばベッドにもなるリクライニングシートの背もたれにギシッと上体を預けると、意図しないにもかかわらず、大きなため息が出た。
そう、海賊や敵であるマンチー艇の攻撃さえなければ、平穏無事に自動航行でスターベースまで着ける…はず。
「神様…お願い……プリンセス・ブルーのみんな……キャプテン、ジャン…お願い、守って!」
行く行くは、自分ひとりで操縦しつつ、戦闘もできるようにはなりたいが、それには練習が必要だ。そして、今は練習している時でも状況でもない。
まずは、必要なものの入手。そして、ヒアスラ・スターベース付近なら、マンチーもめったに出ないし、海賊も他の宙域よりもうんと少ないはずなのである。…ゼロとは言えないが。