妖怪アパートの幽雅な日常・小説10巻は、最後の山場。クライマックス、最高潮に盛り上がりを見せた展開…だと私的に思った。みんな…スゴイ奴らばかりで感服した。
それは、いつものごとくごちそうとアパートの住人全員での賑やかな大みそかとお正月を過ごしたあとだった。
長谷の姉の汀(みぎわ)が倒れたという急報が入る。もちろん、長谷が妖怪アパートへ来ていたからである。
Contents
鬼が、今夜も来る
「あの汀が救急車で運ばれるなんて信じられん」
といいつつも急ぎ駆けつける2人。
そして、不可思議な現象が始まった。いや、すでに始まっていたのだ。その日の夕刻、長谷の祖父、長谷家御大である長谷恭三の死亡が確認されたときに。
そして、夕士はその汀の口から直接聞いたのだ。普通でない夢を。決して汀が心配するようなストレスから来る夢ではない、と思える夢の話だった。
それは・・・
2本の角を生やした般若面のような鬼がやってくる!
その夢を汀は元旦からこっち4日連続で見ていると言うのだ。
しかも、最初は玄関をどんどん叩き、開けたらそこにいた鬼が、汀の部屋まで来るようになったという。そして、腕を掴まれ、鬼の標的は確実に汀。
ただ事ではない、単なる夢なんかではない!と直感した夕士は、急ぎ病院の屋上へ駆け上がるとプチを開き、運命の女神、3姉妹に占ってもらう。
「何かドロドロしたものを感じます」
それは、条東商の体育館に付随している倉庫の落書きを占ったもらったときと同じ占い結果。(5巻参照)
使えない…だけど、それはオレの力が足らないってことか、と、落ち込んだ夕士だったが、落ち込んでいる場合ではない。
それに、あの時の「何かドロドロとしたもの」とは、念だった。今回もその可能性はある!と夕士は確信する。
腫瘍が子宮の横に貼りついていて手術も不可能。しかもその腫瘍は胎児のようにもみえるという話を聞けば、夕士は確信する。
長谷には、そうなんでもかんでも霊や妖怪のせいにするな!とは言われたが、ともかく運よく霊能者の龍さんがいる妖怪アパートへと長谷と一緒に急ぐ。
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恭三の念
龍さんは、長谷を通して病院にいる汀を千里眼で霊視。
そして、分かった事は、
- 「普通の病気ではない」
- 「霊障でもない」
だが、
- 強い念を感じる。
- 誰かいる。
画用紙とサインペンを用意すると、龍さんはスラスラと自動書記をしていく。
そして、その結果わかったのは・・・
祖父、恭三の若いころの姿
だということだった!
夕士と長谷、その心にダイブ
つまり、祖父・恭三は、果たされてない自分の野望を果たすために、この世に強い未練を残していた。
その未練、つまり念が汀の胎児として生まれ変わろうとしていたらしいのだ。
子宮からずれているのは、4日目の夢を最後まで見ずに自力で目を覚ました汀の行動が功を奏したのだろうか?
ともかく、汀を苦しめている原因はわかった。アパートの住人以外は、誰にも離せないが。
ということで、龍さんの進言で、祖父・恭三が死ぬ間際に作り上げた精神世界へ入ることとなった。
怨念を封じる札を手に、夕士は長谷の心の扉から入って長谷と共に恭三の精神世界へと入って行く
鬼・恭三との戦い
毒々しい血のようなトンネルを抜けると、そこはもっとドロドロに真っ赤な空間。それが恭三御大の精神世界だった。
そして…それは、恭三から彼に人間ならざる力を与えていたモノを引き話封印した時だた。
最後のあがき…恭三は般若の顔だけを飛ばした。
霊体である長谷の身体を突き抜けて。
長谷が死ぬ?
コントロールができない。どれだけ自分のエネルギーを注ぎ込めばいいのか分からない。
『死ぬつもりはななんてないぜ・・』
『ただ、長谷を死なすわけにはいかないいだ』
その思いだけでヒーリングしつづける夕士。
そんな夕士の想いを汲んでか、困ったように夕士を見つめるプチの案内人フール。
そして・・・
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生きている感動
気付けばそこは病院の一室。
どうやら助かったらしい・・・そう思ったが、様子がおかしい。周囲がおかしい。
そう、夕士は半年間も意識不明だったのだ。
その間、長谷は、夕士がそうなった全責任を負っていた。
そんな長谷との再開。
夕士との再開。
お互いのぬくもりを感じ、命を感じる喜びを2人は心の底から味わう。
そして、全てのパワーを長谷に使い果たした夕士のその命の最後の砦を守ったのは、フールを初めとするプチの仲間たちだと龍さんに聞かされる。
力を使い果たしたプチは、再び封印状態に。
それを聞いて涙する夕士。
そう涙無くしては読めない10巻なのである。
拙い私の文章で書いてはいけないと思い、スーパー簡単にあらすじを書かせてもらった。m(__)m
世界冒険譚
復調した夕士は、さてどうしょうか?と将来の事を迷う。
が、思いつかないからプチ家出とか。うん、夕士らしい。
「世界旅行しねぇ?」
古本屋に言われ、そして、決意する。
すっとこどっこいの魔道師弟の世界冒険譚の原本の完成である。
古本屋との旅行のあいだに、プチも復活。夕士も一回りも二回りも大きく成長した。
ブログにあげていた記事が編集者の目にとまり、夕士はなんと、想像もしなかった職につくことになった。
そう、小説家として、人生を歩いていくことになったのだ。
そして未来へ
とはいえ、今後どうなるかは分からない。
だが、何があっても前を向いて生きていく!
夕士&夕士の周りの仲間なら間違いなくそうやって生きていくだろう!
何があっても、どんなつまづきがあっても、いまやれることに全力で取り組み、だが、肩の力を抜いて、淡々と歩いていくことだろう。
ちらり、番外編のご紹介
ラスベガス番外編とか、るり子さんの料理本とか、妖怪アパートミニガイドとか、いろいろと出ている。
文庫本の最後には、ショートショートの書き下ろしがあったりもしている。
よければ、そちらも読んでみてはいかがだろうか。
そして、「僕とおじいちゃんと魔法の塔」も。
しかし、古本屋さんと夕士の冒険譚・・・読みたかった。(遠い目)