プチの世界・探検記

妖アパ・プチの世界・探検記1、魔の世界への入口/妖アパ二次小説

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※妖怪アパートの幽雅な日常の二次小説「妖アパ・プチの世界・探検記0」はこちらをクリックしてご覧ください。

オレ、稲葉夕士。妖怪アパートに部屋を借りてくらしている。そこは、本当に妖怪や幽霊、魔に属する者たちなどが住んでいたり行き来したりしているアパートで、人間もその中の一種族、区別なく交流している不思議な場所だ。

Contents

稲葉夕士・ざっくり解説

ごく普通の高校生だったオレは、妖怪アパートに部屋があるだかないだかわからない、たま~~にしかやってこない古本屋さんが持ってきた絵本がきっかけで、ブックマスター、といっても本屋の主じゃないぞ!魔道書使いとなった。

いや、もう拒否不可能で、勝手にその魔道書に封印されていた魔族によって、オレは主人として認められてしまったんだ。

プチは、なんていうか、タロットカードの大アルカナに模した絵が1ページずつ描かれている絵本のような感じだ。先の主人(持ち主)が亡くなって以来、その魔の力は封印されて、たんなる絵本として、時を超え、人々の手を渡り歩き、主人になるべきオレの手元に来たっつーわけなんだが……

よーわからん。オレのどこにそんな資質があったんだろう?

もしかして、妖怪アパートに来たことによって、そっちの回路が開いたのかもな?

いやいや、それも、この出会いを想定しての必然なコトだったのかもしれない。そう、妖怪アパートにオレが身を寄せるようになったことも。

まー、ともかく、龍さん(最高に霊力が高い魔導士)に言われたように行くだけなんだけどな。

『君の人生は長く、世界は果てしなく広い。肩の力を抜いていこう。』

うーん、憧れるな、龍さん。

まー、遊び半分で封印したとしか思えないプチの力は、龍さんどころか、古本屋さんや秋音さんの域まで達するには、相当な年月が必要だとは思うけどな。(笑)

「おい!稲葉!さっきから何一人頃言ってんだよ?!」

「あ、すまん、長谷。ちょっとな」

「もしかして、緊張してるのか?」

「はあ?オレが?ンなばかなわけねーだろ?!」

オレの部屋の片隅で、大きく見開きを開けてそこからここではない景色を映し出している一冊の本。畳の縁でちょうどその本の中に続く道との境界線で、オレ達、オレと親友の長谷は、立っていた。

「わたくしめもお忘れなく!」

ぴょこんとピエロのぬいぐるみに変じた0(ニュリウス)のフール、つまりオレがプチと呼んでいる魔道書、プチ・ヒエロゾイコンの案内人がオレの胸ポケットから肩の上に飛び出て叫んだ。

「おう!お前もいたな!案内人!しっかり案内頼むぜ!」

「はい、ご主人さま!このわたくしにお任せあれ!」

フールは、プチの中に封印されている魔とオレとの仲介人、連絡係り。オレが絵本から呼び出すときの、ナレーターってとこか?

「ナレーターとは、また失敬な!ご主人さまと我らが魔に属する者たちとのパイプ役でございますぞ。私めがいなければ、ご主人さまは誰一人として呼び出すことはできぬのでございますぞ?」

「へいへい、わかった、わかった。」

「わかればよろしい!」

「だけど、今はその魔族のみんなが窮地にあるんだろ?オレの助けを待っているんだよな?」

偉そうにオレの方でふんぞり返っていたフールは、ハッとしたようにその姿勢を崩し、オレを肩から見上げた。

「お急ぎください、ご主人さま!長谷様!全てはお二人の活躍にかかっているのでございます!」

「おう!」

「オレと夕士に任せときゃ、すぐ解決するさ。」

…何が起こってるのかさっぱりだが・・と長谷は言葉を続けると、オレの肩をぽん!と叩いた。

「んじゃ、いこーぜ、魔導士様!」

そして、オレ達は、本から飛び出ている小さな小道へと足を踏み入れた。

魔の世界への小道は小春日和?

「わあああああああ・・・・・」

足を踏み入れた途端に、オレ達は自分の身体が小さく縮小されていくのを感じた。

気分は…そうだな、ジェットコースターの坂のてっぺんから垂直に滑り落ちるときの気分?といったらわかってもらえるだろうか?

とはいえ、一瞬後は、オレ達はその本の小道に立っていた。

「気持ちがいいな。小春日和か秋晴れか?ってとこだな?」

「ああ、そんな感じだな。小鳥のさえずりはないが、なんか、こう、木漏れ日を感じてすがすがしい?」

「これで本当に魔の世界に繋がっているのか?」

「…だよなあ?」

オレ達は深緑のすがすがしい空気を吸いつつ、奥へ奥へと進んでいく。

カード使い・長谷?

「ところでだな、稲葉?」

「ん?なんだ、長谷、何か話したそうだが?」

「ああ、うん…実はな……」

きょろきょろっと長谷は周囲を見渡す。
大きめの切り株を発見するとオレをそこへ誘った。

「なんだよ、長谷?」

「まー、とくこれをご覧あれ」

胸ポケットから取り出したのは、布に包まれた四角いもの。

「なんだ、それ?」

オレのその問いには答えず、長谷はそこにその布を広げながら、中身を広げた。

「カードか?あ!タロットカード?」

そのカードの絵柄から判断して言うと、長谷は、チッチッチとまるでフールのようにそれを否定した。

「タロットじゃないんだな、これが。オラクルカードというやつなんだが、キレイさが売り物のオラクルカードの中で、これだけ意匠が違ってるんだ。そこが気に入ってるところなんだが。」

「へー、長谷がねえ?」

「汀がな、興味あるならとオレにくれたんだ」

「へー、汀さんが?それもまた意外なんじゃね?」

汀さんとは、長谷のお姉さんで、長谷は汀さんには、合気道でさえも買った事が無く、長谷家で底辺な長谷は、みんなに顎でこき使われているのが現状だ。

「夕士が魔導士様なんてちゃんちゃらおかしいが、現に魔道書を従えてるしな。」

「ちゃんちゃらおかしいは余計だ!」

長谷の言葉にオレは口をとがらせて反論。

「でだ…」

そんなオレの反論等どこ吹く風、長谷は、カードを今一度まとめてシャッフルすると、今度は絵柄を下にして広げた。

「不思議と結構当たるんだぜ、このカード。いや、オレの霊感?」

「ぷっ!しょってるぜ!カードなんてお遊びだろ?」

”お遊び”…オレのその言葉に長谷は明らかにむっとしたようだ。

「見てろ!夕士の傍にいるんだ、俺だって妖怪アパートの影響を受けたって悪くないだろ?」

「長谷はオヤジさんの会社を乗っ取って天下を牛耳るんだろ?そこに、そんな横道必要ねーじゃね?」

「うるさい!とにかくお前に出来てオレにできないことがあるなんざ、オレはおもいっきり気にいらねーんだよ!」

「へいへい、さいでっか、ご自由に。」

「ああ、自由にやってやるさ。」

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「どのみち、長谷のことだから、これを始めたからと言って、本筋の方の手を抜くわけないしな?どっちも極めるんだろ?」

「言うまでもない!」

自信たっぷりに断言する長谷。カードをすることは長谷らしくないが、ともかくその道を究めようとする姿勢は、いかにも長谷らしい。

オレのように流されてやるんじゃなくて。(苦笑)

[道に迷った時はこれで視てやるからな。」

「へいへい、フールがいるから大丈夫だとは思うけど、その時は頼りにしてますよ、長谷大先生。」

「よし!それじゃー、今は、オレの事でも視てみるか?今日のオレの一日」

広げたカードの上に左手を伸ばすと、長谷はどれにしようか選んでいるかのようにしばらくカードの上をスライドするようにその手を動かしていた。

「これだ!」

1枚のカードを引く。そして絵柄を見せる。

「はあ?”12 slay the Ego”だとぉ?」

カードを見てみると、何やら宝冠をかぶり大きな数珠玉の首飾りをつけた4本の手を持つどこかの密教の神様だか青鬼だかの絵。
その4本の手の中の1つは、剣を掲げ、生首まで持っている。

「んだよ、なんだか気色の悪いカードだぜ。プチの方が可愛げがあっていいぞ。」

「煩い。だからこのカードは味があっていいんだよ。」

「わかった、わかった。で、占いの結果はどうでたんだ?長谷の今日の一日は?」

「『いらないプライドは捨てろ。調子に乗って不必要なことを無理やりやろうとするな。』とさ?」

ぷっ!あはははは!

オレは思わず笑いはじめていた。

「当たってんじゃね?、長谷!すげーぜ!オレに対抗してカードになんて手を出す必要なんかないって言ってんだよな、それ?」

「しかしだな、”我を通さず場に順応しろ”という意味もあるんだぜ?」

「どっちなんだよ?」

「う~~ん・・・・・」

頭をくしゃくしゃと手でかいてから長谷はオレを見た。

「ま、お前に対抗して霊力を持とうとか思うんじゃなく、ここは順応に対応して、やってみればいい…で、よさそうだが?」

「さすが長谷様。そうきたか」

「ともかくだ……当たっていたことは当たってたんだからな、行こうぜ、稲葉。何か選択を迫られたときには、役にたてそうだ。」

「そんなもんか?」

「そんなもんさ」

ぷっ!あはははははは!

オレ達は顔を見合わせてしばらく笑いあった。

魔界に続くドア

「おお!すっげえ重厚なドア!」

「いよいよ、ここが魔界への入口か?」

小春日和の木々に囲まれた道の奥には、静まり返った建物があった。そして、道はオレ達を誘うように、その建物の玄関へと続いていた。

ごくり…

思わずつばを飲み込む。

長谷に聞えなかっただろうか?とふと横に立つ長谷を見ると、あの長谷の表情に緊張感が浮いている。いつも何があっても沈着冷静なあの長谷の顔に。

そりゃー、そうだよな、なんといってもマジに魔界への入口だからな。
非現実的、到底ありえないことだが、ここには、その言葉は通用しない。

「行くか?」

「おう!」

オレは右、瑞樹は左の扉を押し、ゆっくりとドアを押し開いていく。

ギ・・ギギギギィィィィ・・・・・

 

>>>つづく

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