SFスペースファンタジー「星々の輝き」24・航海日記とアベンスター公妃

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グリフォン星系にある採掘ステーションで知り合ったオマス牧師。
彼から奥さんの捜索を引き受けると、次の星系デネブへと向かうことにした。

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SFスペースファンタジー「星々の輝き」24・航海日記とアベンスター公妃

アークチュラスからデネブに繋がるマリーゲートは両方とも星雲の中にあった。
これは、宇宙空間に発生するガスと塵の雲で、ここでも腐食性のガスが充満している。

ガスや塵の固まりで船の進行が妨げられ、思い通りに進むことは、至難の業。
しかも、マリーゲートに入ると同時に必要なスピードまで加速しなければならない。

「まったく!ワームホール内だけでもアーマーが下がるってのに!!」

このマリーゲート以外で行くには、他の星系をぐるっと回らなくてはならず、日数を要する。
そんなことはしていられない。

近づくマリーゲートと行く手をふさぐガスや塵の固まりに細心の注意を払いながら、彼女は慎重に操作し続けた。

が・・・その奮闘も虚しく1度目のジャンプは失敗。

それでも2度目には、なんとかワームホール突入に成功、ワームホールの輪潜りも上々の首尾で、デネブ星系空間に出ることができた。

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「ターボブースターがいるわね。」
ターボブースターがあれば、今回のように、ロースピードで邪魔になるものを避けていて、ゲート前で一気にワームホール突入に必要はスピードまで加速できる。
今回はその必要性をヒシヒシと感じた。

デネブには、皇帝の妃、アベンスター公妃の住居があるデネブの統治基地であるスターベース『デネブプライム』と採掘ステーション『ロス』がある小惑星『ネロ』がある。

ニーナはまず、マイコン2で仕入れた鉱石を売るため、そして、もしかして、公妃とこの船の前の持ち主とは、何らかのつながりがあるのでは、と思い、それを確認するために、デネブプライムに目標をセットした。

航海日誌と公妃

そして、ここにも航海日誌が1つあった。

1月3日

整形外科医はすばらしい腕だ。
公妃に顔を変えたことを伝えておかなければ

「やっぱり、公妃様と関係があるんだ。
整形外科医って・・確かロスに腕利きの女医さんがいるって聞いたことあるけど・・彼女のことかな?」

(絶対公妃様に会うべきだ。でも、会って下さるだろうか?)

とても気さくな方だという情報を得ていたが、とはいっても公妃が簡単に一般人に会うとは思えない。

不安はあったが、ニーナはデネブプライムに着くとすぐ商品を降ろし、アベンスター公妃に会うため、公妃の住居エリアへと足を向けた。

その入口には、こう書かれた、提示板があった。

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公妃アベンスターに拝謁を望む者は、まず、公妃付きボディーガードのベンカーに会って許可を得なければならない。

(ボディーガードねぇ・・・。)
ニーナはそう思いながら、とにかくエリアへの通路を進んだ。

とても気さくと噂されるだけあって、公妃の住居エリアだというのに警戒らしき警戒を布いてなかった。

ただ1人ボディーガードがいるのみ。

おそらくゲートでそのボディーガードに会えるのだろうと判断したニーナは急ぎ足で進んでいた。

「そこで止まってくれ。」
ゲートの前、戦闘用のアーマーに身を包んだ大きな緑色の生き物に声をかけられる。

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「公妃様とはどういうつき合いだ?」

「え?えっと・・その・・・」
不意の問いかけでニーナがどう答えようか迷っていると、いきなりその生き物は、彼女をつまみ上げ、ゲートとは反対に放り投げた。

「ここは、お前のような者が来る所ではない。帰れ、帰れ!」

「で、でも、あの・・・・あ、あの、せめてボディーガードさんに・・」

「私がそうだ。」

じろっと睨むとニーナの相手などする気はないとでもいうように、ゲート内に入って行ってしまった。

ニーナの言葉には全く耳を貸すようすはなかった。

そして、ゲートのドアはしっかりと閉ざされ、全く開く様子はない。

「そりゃー、簡単に入らせてもらえるとは思ってなかったけど・・・せめて話だけでも聞いてくれればいいのに。・・・・きさくとは言っても、やっぱり住む世界が違うのよねー。」

仕方なく彼女は、バーへ行き、空腹と喉の乾きを潤すことにした。

酒場での噂話

「プロスク教授の発明の事は、ご存じですか?」

カウンターに座るとバーの主人がすぐニーナに話しかけた。

「今は、宇宙空間をワープできる船を造っているらしいんですが。」

「ワープって、本当の長距離ワープ?」

「そうですよ。でも、無理なんじゃないでしょうかねぇ。
人間は光速を越えられないようにできてるんですよ。
だいたい、あの博士は、ワームホールでの腐食を防ぐ『ヌルダンパー』の時でも、口ばかりで、未だに販売はおろか、製造だってされてないんですからね。何を飲まれますか?」

主人はどうやらプロスク博士が気に入らないらしい。

が、どうやら話好きらしく、彼は、何か情報をとバー中を聞き回っていたニーナに、海賊の事など、知っている限りの事を話してくれた。

「シーッ!それと、大きな声じゃ言えませんが、貴族がまた1人殺られたらしいですよ。
ブラックハンドの仕業だってもっぱらの噂なんですが、いったいどうして、この頃こう物騒なんだか。お代わりはどうですか?」

なんだか教えてもらう代わりに呑まされているような気もしないではなかったが。
案外したたか者なのかもしれない、と彼女は思った。

「そのブラックハンドはやっぱりシギュア星系のトローシャルにあるんですか?」

彼女はお代わりを注いでもらいながら、尋ねてみる。

「そうらしいですよ。
まぁ、表向きは、宗教団体ってことになってるらしいんですけどね。
かかわり合いにならない方がいいですよ、じっと見つめただけで、発狂させたり、意のままに操って、殺したりするそうですから。
そうそう、何光年離れていようと、その力はおよぶんだそうですよ。
信じられないような事ですが・・・・おおっと、こんな事を話してること事態も、奴等には分かるらしいですよ。くわばらくわばら」

そう言って主人は口を塞ぐ仕草をすると、それ以上何も話してくれなくなってしまった。

「ふう・・・公妃様には会えそうもないし・・・どうしようか?」

「こんにちは。」

ため息をついているニーナの肩を、軽く叩いた人がいた。
慌てて振り返ったそこに一人の若い女性がにこっと笑いかけた。

 

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