「さあ、出航だ!」広大な宇宙に一人ぽっち、天涯孤独な少女スターパイロット、ニーナ・シャピロは、漂流船「ジョリー・ロジャー号」の貨物庫にいっぱいの商品を乗せ、スターベースを出港!星系間貿易商としての船出をした。
Contents
スターベースから再び大海原(宇宙)へ!
目指すは、同じカロノス星系内にある拓殖基地「マイコン1」!
安全なスターベース内から、再びならず者とどこで出くわすか分からない広大な大海原(宇宙空間)へと躍り出る。
「ならず者とどこで出くわすか分からない」と言ったが、実は、ここカロノス星系では海賊はほとんど壊滅し、敵対しているマンチー艇も滅多に進入してこない。
だが、絶対に遭遇しないとは限らないのだ。つまり万が一の為、そういった輩に対応できる武器が必要なのである。
それらに対応すべきニーナが乗っている「ジョリー・ロジャー号」にある武器はというと、今現在では、標準装備であるガーネットレーザーのみなのである。ガーネットレーザーでは、心もとないのが実情。より攻撃力の高いレーザーや粒子ビーム、ミサイルなどで守り(攻撃?)を固めたいところである。
そして、防御は、前面シールドがあるが、前面だけでは心細い。後ろから襲ってくるのは、海賊の常とう手段でもあるからだ。
ただ、問題点は、それら装備を充実させるのには、資金がいるということ。そして、その為に貿易商として稼ぐ手段を選んだわけだ。
いわゆる、今現在のジョリー・ロジャー号は、丸裸もほぼ同然。経験が浅くても海賊を名乗っている輩には、赤子の手をひねるようなものだ。
ましてや相手がマンチー艇だったら、それこそひとたまりもない。積み荷を渡せば命だけは助けてくれる場合も有る海賊と違って、一瞬で撃破されてしまうだろう。
それらと出会わないことを祈りつつ、ニーナはスターベースを離れるとナビゲーションシステムの目的地にマイコン1をセット。船は自動航行を開始する。
そう、その出口は、拓殖基地・マイコン1近くのNスペースだ。そこまで無事行く事ができたら、あとは、たとえそこで海賊やマンチーと出会っても、基地に逃げ込めばなんとかなる。
最悪でもそれを祈りつつ、ニーナはコックピットの操縦席をゆっくりと倒した。
「果報は寝て待てっていうもんね。心配して船内をうろうろしてるより、寝ちゃっていれば…いいよね?」
眠れればという問題もあるが、ともかくニーナは眠ろうとした。
拓殖基地「マイコン1」
ニーナが今現在いるカロノス星系には、恒星カロノスを中心として、周回している地球型惑星もある。
しかし、ニーナが乗っているサンレーサー型スターシップは、スターシップそのものに自力で地上に着陸する性能はなく、宇宙空間にあるスターベースや拓殖基地の自動誘導システムによるポートへのドッキングだけである。
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拓殖基地は、宇宙空間に建設された宇宙ステーションだけでなく、時には惑星上に建設されたスペースコロニ―の場合もあるが、どちらにしても、自動誘導システムによるポートへのドッキングで宙港入りするのだ。
拓殖基地は、スターベースとは全く異なった形をしていて、真四角な輪状形の宇宙基地だ。
将来的には円形のものが増えると言われているが、今のところ真四角で、ドッキングポイントは内側にある。
しかもその内側の空間は広い。だから、ニーナは、拓殖基地ならば、スターベースの時のような失敗もないだろうと踏んでいる。いや、失敗はあったとしても通り抜けてしまうくらいで、基地のシールドに何度もぶつかって船のアーマー(保護シールド)を下げてしまうようなことはないだろうと…思っているわけだ。
ともかく、一番の問題点は、敵の攻撃なしで、スターベースや宇宙ステーション(拓殖基地)付近のNスペースに出られるかどうか…なのである。
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なんといっても、船ならなんとか操縦できるが、武器、つまりガーネットレーザーなどニーナは今まで一度たりとも扱った事などないからである。迎撃し、それなりのダメージを与えることができなければ、彼らが自分から撤退することは、絶対ありえない。
いや、海賊もマンチー艇も、撃破されるまで攻撃をしかけてくるのがこのファーアームでの常。
生き延びたければ、船体の前後をアーマー値の高いシールドで守り、強力な武器を揃え、扱う腕を上げなければならないのだ。
少しでも多く利益を生み出す商売技術と情報を得ることも必要だ。
「装備が整うまで、何も出ませんように!」
一人ぽっちのコクピットで、今はそう祈る他術はないニーナ。その前途は、目の前の宇宙空間同様、闇に包まれていた。