SFファンタジー・SpaceRogue星々の輝き5・スターベースは怪しげな人物で溢れてる?

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アーマー残量(船のシールド数値)0にはなったものの、なんとか無事ヒアスラ・スターベースにドッグインできたニーナは、極度の緊張によりのどの渇きを覚えて、プリンセス・ブルー号のみんなから聞いていたバー「トゥエルブ・スラスター」に向かった。

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ヒアスラの居酒屋、トゥエルブ・スラスターにようこそ!!

あった!ここだ!

店の出入り口のドアの横にある看板を見つけたニーナはさっそく中に入る。

-シュン!-

わいわいがやがや…

そこは、宇宙から集まってきた人々でごったがえしていた。
人相は決していいとは思えない輩が多く、人間とは明らかに種族が違う人種もいるが、今のニーナはそんなことは関係はない。まっすぐカウンターへと歩いて行く。

「こんにちは、お急ぎですか?急がば回れ、情報はいかがです?

そんなニーナに声をかけた輩がいた。

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怪しげなバーキリーの商人

「え?」

行く手を阻まれるようにして声をかけられたから立ち止まらないわけにはいかない。なんとも商売上手である。

[誰?」

不意のことだったため、思わず本音とした言いようのないセリフがニーナの口から飛び出す。

「これは、これは失礼いたしました。」

深くフードをかぶったニーナよりも小柄な男は手もみをしながら、足止めに成功したことに満足するかのようににやりとあまり印象の良くない笑みを浮かべた。

「これは、これは。人間の方ですね。初めまして。私は貿易商を営んでおりますバーキリのイチキと申します。ここへは初めて立ち寄られたんでしょうか?」

「えっ?は、はい、そうですけど・・」

その男は、160cmほどの彼女より一回りも小さく痩せている。顔は人間のもののようともは虫類がかかったようなものとも言えるが、目は、まさに猫のギョロ目である。

丁寧にお辞儀をし、再び顔を上げると、にやっとしたようにニーナを見た。
その何一つ見逃さないぞとでも言っているような目が光る。

「私の売り物は知識です。重大な秘密や正確で非常に有益な知識を売っております。何かお知りになりたいことはございませんでしょうか?」

言葉とは対照的にへへへと下品に薄ら笑いを浮かべイチキは手を揉んだ。

「うーん・・聞きたいことはあるけど・・」

「あるけど?」イチキの目が一段と光った。

「クレジットが足りるかどうか、それに今あるのは私の商売の資本金ってとこだから、あんまり使うわけにはいかないのよ。」

「では、誠に残念ではございますが、今回は取引なしということで。」
彼の目はあくまで取引しないと損だよと言っているようである。

「ちょ、ちょっと、待って。せっかくなんだしぃ・・。」
慌ててニーナは彼を引き留める。

「けっこう、けっこう。」
イチキはしてやったりというように目を細めながらにやっと笑った。

「で、あなたはどのようなことを知りたいのですか?」

「じゃぁ、まず、ジョリー・ロジャー号の事について」

彼女は今自分が乗っている船について聞いてみることにした。聞きたいことは山ほどあるが、まずは、こんな状況に陥った原因であるスターシップの情報を少しでも得られるのならと。

「申し訳ありませんが、それについては、取り引きできるような情報を持っておりません。」
少しも申し訳なさそうな表情はないが、それでもイチキの答え方は丁寧だ。

「なんでも知っているんじゃないの?」
ニーナの口調が無意識に強くなった。

「さほど重要と思われないようなことには感知しておりませんので。それはごく個人的な事かと思われますので。はい。」
にやっと浮かべた薄ら笑いにニーナは異様な恐怖心がわき上がってくるのを押さえることができない。

「じゃ、じゃぁ、マンチーの事は?」

彼女の母船を一瞬にして消し去った異種族マンチー、謎とともに決して忘れることのできない、いわば仇なのだ。両親のいない彼女にとって家族同然のいやそれ以上だったのだ、プリンセス・ブルー号のクルー達は。

それを、ただの貨物船にすぎないブルー号を寄って集って一瞬にして消し去ったのだ。たとえ、帝国と反目しているとは言え、普通では考えられない事。だから、その理由、たとえ小さなヒントでもいい、彼女はほしかった。

イチキはひょいとおじぎをすると満足げに話し出した。

「マンチー、マンチーですか、彼らはうちのお得意さまです。私はマンチー星に行った事もあるくらいです。確かに貴重な情報です。これはクレジットではお譲りすることはできません。珍しい品物とならお取り替えいたしましょう。何か持っておられますか?」

「何かって言われても、珍しい物どころか身の回りの物さえもなくって・・。」

今彼女の手元にあるのは、ジョリー・ロジャー号とその船内にあった備品だけだ。クルーの服以外自分自身の衣服さえない状態なのだ。そしてわずか1500クレジットのお金。

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彼は揉み手を止め、一瞥するといんぎんに言った。

「では仕方ありませんね。この取り引きはなかったという事で。」

「え?ちょ……」

彼女が何か言おうとしている間にイチキはさっさとバーを出ていってしまった。

(なによ?自分から声をかけておいて…)

そう心の中で呟いてはみたが、相手は情報を売ることが商売。こちらがその対価を持ってなければ仕方がない。

(それにしてもああまで手をひっくり返すように慇懃にならなくても……次回はいいお客さんになるのかもしれないのになぁ……)

そんなことを思いながら、ニーナはともかく飲み物をもらおうとカウンターへと歩を進めた。

 

>>>【バー「トゥエルブ・スラスター」の気のいい親父さん】につづく

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