SFスペースファンタジー「星々の輝き」46・マンチーの意外性

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公妃と会うことができず、肩を落して通い慣れた酒場へやってきたニーナ。
親しい酒場の店主や陽気な海賊崩れのフリッチと話す内にモチベーションも上がってきたようだ。

そう!今更引き下がれない!

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SFスペースファンタジー「星々の輝き」46・マンチーの意外性

フリッチが酒場から立ち去り、入れ代わりにニーナに話しかけたのは、バーキリの商人、イチキだった。

深くフードをかぶっていて顔が確認できない、一種異様な雰囲気を漂わせているバーキリの承認は、マンチーもその顧客であるというコトを聞いたことがある。

以前もニーナは、マンチーのことを聞いたことがあるのだが、お金では教えられないと断られてしまっていた。

今回は、ラックスにもらった大粒のディリシウムで聞き出すことができた。

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マンチーの意外な習性

「え?うそぉ?!だって船影が見えると同時に攻撃してくるんだよ?」

「いいえ、ウソでも作り話でもありません。マンチーはことのほかおとなしい種族です。」

「えーーーー?どこが?」

「それは、あなたが本来のマンチー人を知らないからです。
そして、今帝国とマンチーは敵対しているからなのです。」

「じゃ、敵対してなかったら?」

「攻撃を仕掛けてくるようなことはありません。
よろしいですか?マンチーは肉食性の蟻の一種なのです。
高度な文明を築き上げるほど、かなり進化していますが、未だに祖先の特性が潜在しています。
強い社会的階級制度と、どん欲なまでの勤勉さ、そして、女王への深い尊敬などです。」

「じゃあ、噂通り?」
詳しいことまでは、知れ渡ってないにしても、こ のファーアーム内での噂によると、マンチーは蟻だということだった。

それをネタにして各ステーションのバーにおいて有るテレビゲーム『HIVE』は作られている。
もっともあのゲームに出てくるのは、完全なる蟻だが。

「そう言えばそうだということになりますが、しかし、彼らには高い教養と知性があり ます。
普段は、ここで言われているような凶暴さは、決してありません。
ですが、圧迫されると悪い面の特性が強調されるのです。
他者に対する強迫観念や、群れたがる本能、そして 攻撃本能です。」

バイオメカ着用のマンチーのパイロットです。
黒く光沢のある蟻を連想させる肌を覆っています。

「一杯、よろしいですか?」

「え?あ・・・ど、どうぞ。」

イチキはニーナのおごりのビールをちびちび飲みながら話を続けた。

「マンチーの行動に最も深い影響を与えるのが、マンチー・クイーンです。
女王は『大 地の母』と呼ばれ、最高指導者であり、その子どもへと地位を引き継がれていきます。
クイーンはその長い生涯が終わりに近づいてくると、『ギ・ゴンガー』つまり、生命をもたらすという意味ですが、そういう名前の卵を産みます。
その卵が孵化すると次のクイーンが誕生するのです。
この生と死のサイクルは、これまでの歴史で何者にも邪魔されることなく営まれてきました。」

イチキはぐいっとビールを飲み干すとニーナに笑いかけた。

「お代わりしてもよろしいですか?」

「親父さん、お代わりやって!」
クレジットが底をつきかけていたニーナは、半分自棄になっていた。

イチキは満足そうにお代わりのビールに口を付けるとまた話し始めた。

「マンチーは大変結束が固く、種の進化を妨げる内戦や仲間割れなどをほとんどしません。
ですから彼らは急速な進歩を遂げています。
彼らが最初のスターシップを造ったのは、まだわずか3世紀前の事なのです。
彼らは今日では27の星系を統治しており、そ の数は、ファーアームの人口を遥かに上回っております。」

「へー、27の星系ってすごいね?」

「はい。私は彼らの国、『ジャ・カー ン』に行ったことがあります。
その時に目にした彼らのエンジニアリングや文化には、 非常に感銘を受けました。」

「その『ジャ・カーン』という国は、どこにあるの?」

イチキは勝手にビールを追加オーダーすると話始めた。

「宇宙座標で言って『GC、3409』です。
マリーゲートはありませんので、Nス ペースで行くしか方法はありません。
そうですね、だいたい亜光速最高スピードの70 で18~9カ月はかかります。」

「そんなにかかるの?」

「はい、それも順調に行ってですが。
と言うのは、今、この帝国の中にマンチーに戦争を仕掛けている者がいるのです。
気が狂っているか、あるいは、何かよこしまな計画を持っているとしか考えられませんが、そのせいで、殺気だっている彼らは、彼らの認識 コードを持たない船を片っ端から攻撃しているのです。」

戦争の仕掛け人の情報を得ているニーナは、こっくりと大きく頷く。

「マンチーとの戦争が起これば、 勝っても負けても大勢の犠牲者を出すことでしょう。
いずれにせよ、負けた方は、その人口のほとんどが死に絶える事は明らかですが、それがどちら側かは分かりません。
彼らを突き動かすのは種の危機という恐怖からくる祖先の本能なのです。
敵対したものを滅するか、自分たちが滅亡するか、そのどちらかに達するまで攻撃の手は止めません。」

「じゃー、もし、帝国と全面戦争になったら・・・」

「最低でもファーアームを星単位、星系ごとつぶしていくでしょう。」

「停戦とかは不可能なの?」

「女王の絶対命令を受けて戦争に突入するわけです。
ですので、女王と直接交渉し、こちらに敵意が無いこととそれに至った謝罪を受け入れてもらわない限り、攻撃は止むことはありません。」

「・・・・・・」

「本来は、実におとなしい種族なのです。
敵対さえしなければ。」

イチキは、念を押すように言葉を残すと、次の客を捜しにカウンターを離れて行った。

「そういえば、シシャザーンのボルフも言ってたっけ・・・」

「マンチーとの争いも、避けようと思えば、簡単に避けられるものだ。
お前達2つの種は、競い合うような共通点がない。
人間の不合理な恐れが、マンチーとの闘いに油を注いでいるのだ。」

「不合理な恐れ・・・」

ニーナは、ボルフの時のように、彼らの理性にかけるしかないな、と思った。

「何とか、戦争は避けなくちゃ。
でも、どうやって?おとなしいマンチーの戦闘本能に火をつけた原因はなに?」

ジグソーパズルの最後のピースがまだ不明だった。

「うーーん、だから、ひとまずタルゴン隊長に言われたとおり、ガットよね?」

頭の中で今までのことを整理していたら、いつの間にか夜も更けていた。

バーに残っているのが自分だけだということを確認すると、ニーナはようやく自分の父のように思っているバーの主人に話した。
今まであったこと全てを。

そして、どうあってもやらなくてはいけないのだが、その一歩が踏みだせなくて、顔を出したとき沈んでいたと。

「そんな事が起きているとは・・・。」
話を聞き終わり、主人は答える術がなかった。

普通の人に話したのなら「そんな馬鹿な!」と一笑に付されてしまうところなのだろうが、バーの主人はニーナの性格をよく知っていた。

そして、職業柄いろいろな情報が入る彼は、戦争の危機を感じていた上に、ニーナと一緒にイチキの話も聞いていたからだ。

「できるなら、何とかしてやりたいんだが・・・。」

「ううん、いいんだ。
親父さんに聞いてもらったら、すっきりしたよ!」
ニーナは微笑んだ。

「やってみる。
私にできるかどうか分からないけど・・・とにかく、やれるだけやってみる!」

「分かった、ニーナがそう言うんだ。
俺も男だ、逃げるような真似はしない!
最悪の場合は、ファーアームと心中してやるさ!
・・大丈夫!ニーナならできる!!
頑張ってく れ!祈ってるぞ!!」

主人は大きく頷くと、ニーナを元気づけるかのようにぐっと握りしめた拳を彼女の目の前に掲げる。

「ん!行ってくる!」

ニーナはそう言うと、主人にまた来ることを約束してバーを後にする。
無事うまくいったら、主人がニーナの気の済むまでおごる約束をして。

そして、バスルチ星系に向かう彼女の顔に、今や迷いはなかった。
決断と勇気に満ちた顔だった。

 

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