SFスペースファンタジー「星々の輝き」44・コス提督の陰謀

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NSBを注射して正気に戻ったタルゴン隊長からコス提督の策略を聞き、青くなるニーナ。
頼みの綱の公妃は、皇帝をブラックハンドから守るため、帝国本国に帰っていて連絡がつかない。

再び、1人でやるしかない窮地に立たされ絶望するも、ニーナは、ファーアームの為やるしかないと開き直る。

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SFスペースファンタジー「星々の輝き」44・コス提督の陰謀

マイコン2に着くと、ニーナはさっそく基地内で狂人となってしまったタルゴン隊長を捜す。

NSBを打ち、その効き目があれば、今ファーアームに何が起きつつあるのかはっきりするはずだ。

在りし日の勇姿

「いたっ!」

幸運にも誰もいないようなステーションの奥にその姿はあった。

長い髪を振り乱し、ぼろぼろの格好をしてわけの分からない事を呟いている男。
何度目にしても、これが帝国きっての勇士の姿なのかと思うと、いたたまれない気持ちになる。

とはいえ、簡単に注射をさせてはくれないし、捕まってもくれない。
のらりくらりと逃げてしまうのである。

精神は狂ってしまっていても、鋼のように鍛えられた身体は、ニーナが引き止めようとする力などモノともせず逃げてしまう。

「すみません、タルゴン隊長。」

悪人でもない人を撃つのは気が引けたが、他に彼におとなしく注射させる手段はない。
やむなく気絶モードにセットしたレーザー銃でニーナはタルゴン隊長を撃つ。

「よし!今のうちだ!」
周囲を今一度確認してから、彼が気絶している間にNSBを打つ。

「隊長、タルゴン隊長、分かりますか?」

ニーナは、目を開けかけたその男に祈るような気持ちで問いかける。

「な・・・わ、私…は・・・・」

男の表情は明らかに変化しはじめていた。
徐々に彼の顔つきはしっかりしてきた。

それまでのみすぼらしい姿の下には、鋼のような意志が潜んでいたことが分かった。

「どうして私を助けたんだ?」

男のその確固たる意志を表すような目は、ニーナを捕らえて離さなかった。

「何か理由があるはずだ。」

「公妃様に頼まれたのです。あなたはタルゴン隊長ですね?」

何も答えず、男はその鋭い視線でじっとニーナを見つめている。

それは、自分がどういう人物か知らないから、敵か味方か決められずにいるからだとニーナにはすぐ判断できた。

だが、よくよく考えてみれば、それはニーナにも言えた。

目の前の男がタルゴン隊長の偽物ということもありうる。
なんといっても黒幕がコス提督と、ここからはニーナの予想だが、殺人秘密結社ブラックハンドの首領ビラニーである。

「フェレットは?」

それがコード名とは分からないようにニーナは聞いてみる。

「あんたの名は?」
男はふっと笑って名を聞いてきた。
警戒を解いたのが分かった。

「ニーナ・シャピロで。スターパイロットで船はジョリー・ロジャー号。
サルベージ法に則った所有権を、公妃様に認めていただきました。」

「そうか。俺がタルゴンだ。」

(やったあ!)ニーナは心の中で小躍りする。

「教えて下さい、何があったんですか?」

タルゴンは、1つ1つ思い出すように話し始めた。

「初めはすべて順調だった。
闇でサンレーサーを手に入れ、顔を変え、名前も変えた。
ガットの一味がマンチーの領域を襲撃するという情報を手に入れ、ブラザーフッドに潜入した。
そこでブラックハンドの女司祭、ビラニーがマンチー退治に高額の賞金を出した事を知った。」

「なんで、ビラニーが賞金なんかかけなくちゃいけないんですか?」

「マンチーとの戦争を始めようとしていたんだ。
だが、黒幕は他にいると思った俺は、 調査を続行した。
それがパズルの最後のピースだった。
ビラニーを影で操り、実際の命令を下している奴。
・・・そして俺はとうとう、そいつを突き止めた。
『コス』だ! ヒアスラ皇帝は高齢過ぎて戦闘の指揮は取れない、とすると、当然、コスしかいない。
そして、マンチーを撃退すれば、待っているのは、喉から手が出るほど奴が欲しがって いる『王座』なのだ。
たとえ、ファーアームを破壊し尽くしても、いや、奴はファーア ームなど破壊し尽くされればいいと思っているんだ。・・・ううっ!」

NSBの効き目が切れてきたのか、苦痛の表情がタルゴンの顔に現れてきた。

彼は、必死で 正気を保とうと、もがく。

「どうすればいいんですか?」
時間がないとニーナも焦る。

「ガットだ!スカーレット・ブラザーフッドのリーダー。
・・奴に会うんだ。襲撃を 止めさせろ!
手・・・遅れ・・・に・・・なる・・前に・・・ううっ・・・。」

「隊長っ!!」
ニーナはタルゴンの手を取ると、必死になって呼びかけた。

「はーっ・・はーっ・・」
苦しそうに息をすると、絞り出すように続けた。

「ビラニーが・・やったんだ。
彼女は俺の正体・・・を、つきとめて・・うおあ~!」

必死の抵抗も虚しく、タルゴンはまたしても錯乱状態に戻ってしまった。

「隊長!しっかりしてください!隊長!」

必死の思いで肩を揺するニーナの手を振りほどくと、のたくるようにして逃げてしまった。

「隊長っ!」

追いついたニーナの前には、先ほどまでのタルゴンはもういなかった。
いくら 呼びかけても揺すっても全く反応を示さない。

「やつらは見る・・」
ニーナが手を放すとタルゴンは、にたにたと笑い小さく呟いた。

「いつでも見ているんだ。
・・・・目・・・奴等は太陽の後ろに隠れて見てるんだ。 ハハハハハ・・・・」

その鋼の意志を表していた彼の目は、もはや視点が定まらず、ニーナをも捕らえていなかった。

「いへへへへ・・・・目・・・・」

再び狂人に戻ったタルゴンから、ニーナから少し離れたときだった…

「動くな!今し方レーザーを発射したのはお前か?」

声をした方を振り向くと、そこに銃を構えて身構えている軍人、ステーションの守備兵がいた。

(いっけない!こんな基地の片隅だから大丈夫かな?と思ってたけど、やっぱりビームだと感知器で分かっちゃうんだ?
一応、路地裏の裏の又裏だから、時間稼ぎにはなったようだけど。
こうなったら、攻撃したわけじゃないって言っても通用しないよね」)

しかも、今近づいて来つつある守備兵がコスの息がかかっている兵士だったら、正直に話すわけにもいかない。

”基地内でのいざこざは御法度”規制を、ニーナは始めて呪った。

「す、すみません!あの人が近づいてきて、怖くなって・・・つい・・・
で、でも、怪我を負わせたわけではないです。気絶モードですし・・・」

警備兵は、おぼつかない足取りでぶつぶつ呟きながら遠のいていくタルゴンを見ると、ふうとため息をつく。

「事情は了解した。だが、規則は規則だ。当局まで来ていただこう。」

「あ・・は、はい。」

ニーナが少女だということと、相手があの狂人であることから情状酌量の余地はあるが規則は規則ということで、一応通常より罰金は減額してくれたが、向こう1年間のステーションへの立ち入りを禁止された。

「いいね、1年間は何があってもここには立ち寄らぬコトだ。周回軌道に乗ると同時にステーションの防御システムが、キミの船を容赦なくビーム砲で攻撃するだろう。」

「はい、分かりました。ご迷惑をおかけしました。」

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公妃不在

公妃に報告する為、ニーナはデネブ・プライムに来ていた。

が、ここでも彼女を落胆させるような現実があった。

公妃がブラックハンドの暗殺者にもう少しで暗殺されそうになり、その事件をきっかけに公妃自身が判断して、本国に帰ったという事だった。

「とにかく、皇帝をブラックハンドの一味から守るには、同じようにテレパシーが使える公妃様がそばにいて、精神バリアをはってないと危険なんだ。
最も奴等のは陰の力、 公妃様のは陽の力だがな。」

たった1人公妃の住居に残っていたガードマンのベンガーは、ニーナの 姿を見つけるや否や、待ちかねていたように話しかけてきた。

「じゃ、じゃあもう公妃様はファーアームへはお帰りにならないんでしょうか?」
落胆を隠せないニーナは不安感に襲われる。

ベンガーは大きな手でニーナの手を握りしめた。

「ここを発たれる前に公妃様は、あなたに伝えてくれとおっしゃった。
『あなたを信じている。あなたこそ、ファーアームの 英雄だ!』と。」

「そ・・そんな・・・・」

ニーナはベンガーの手を振りほどくと、呆然として歩き始めた。

「公妃様だけが、支えだったのに。最後の詰めまでくれば、きっと援助してもらえ ると思ったのに・・・。」

(またしても1人でやらなくてはならない・・)

そう思うと、どこかへ逃げ出したくなったニーナだった。

 

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