SFスペースファンタジー「星々の輝き」42・硬直の恐怖

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小惑星バスルチにあるステーションのポートに1人降り立つニーナ。
伝え聞くバスルチの怪物への恐怖が彼女を襲い、支配する。

「い、行かなくちゃ!ま、前に進まなくちゃ!」
自分に言い聞かせ、前へと進む。決死の覚悟と共に。

自分の、自分たちの、そしてファーアームの未来のために。

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SFスペースファンタジー「星々の輝き」42・硬直の恐怖

-シャー-

(ほっ・・・・)
再びドアが閉まる音がし、怪物がそのまま去ったらしいと判断したニーナは、ほっと胸をなで下ろした。

が、目的はこれからなのだ。
ニーナは、ごくん!と唾を飲み込むと、探知機を 見ながらドアに近づいた。

-シャーー-

タイミングを逃してもいけない。
今回はすぐ部屋から出た。

ドアが開くと同時にニーナは通路の両奥を確認する。
視界、探知機ともに異常はなかった。

が、静まり返ったその通路は、静かだからこそ、一層不気味に思 われた。

足音を立てないように、だが、なるべく早く走り、一番奥の部屋を目指す。
物陰に潜み、周囲を探知機で確認しつつ、慌てない、急がないと自分に言い聞かせながら確実に奥へと進んでいく。

「ラッキー…ここまで見つからずに来られたわ。」

目的のドアの横、ロッカーの陰に隠れて、彼女は今一度周囲とそして部屋の中を探査機で確認する。

「どうやら中にはいないみたいね。」

(後少し・・アーメン!)

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発見!NSブースター

別にクリスチャンではないニーナだが、唱えられずにはいられい。
すばやく部屋に入る。と同時に金庫を探す。

「あったっ!」

ニーナは小声で叫んだ。
ティブの言った通り、その横にロッカ ーがある。
彼女は一目散に走り寄るとロッカーを開けた。

「あった!これだ!」

NSブースターを鷲掴みにすると急いでバッグにしまう。
そして、 すばやく物陰に身を潜めると、再び目と探知機で周囲を確認する。

「何とか手に入れたんだ。どうか出ませんように・・・。」

彼女は祈った。
心臓は破裂するかと思うくらい大きく打っている。
銃を握る手が両足が極度の恐怖と緊張で震えている。

「ここで、急いでしまって、怪物に出くわしたら元も子もない、慎重に、慎重に。」

彼女はともすると、走り出したくなる自分に言い聞かせながら、部屋を出ると、再び慎重に、物陰に隠れつつ、一歩一歩出口へと向かう。

長く暗い時間が、まるで永遠と続く気がした。
その恐怖に大声を出して発狂したい衝動を抑え、ひたすら慎重に進む。

「あと少し・・・よーし、通路は?・・O.K・・・」
来たときとは反対に、出口に向かって少しずつ・・。

「ほーーぅ・・通路の向こう側、O.K」

彼女には時を刻むのが、とてつもなく遅く感じられた。

「よし!あとちょっと!」

もう少しで基地から出れる、そう思った時だった。
探知機が その外側に生命反応があることを示した。

怪物の追跡

「なんで?なんで今更?ここまで調子よく来られたのに?
・・・あと、ちょっとなのに・・・。」

ドアを開けようとしていたニーナは慌てて物陰に隠れた。

-シャ、シャー-

そのドアが開いた。
確かにドアの向こう、意外にも建物の外にいたのだ、怪物が。

(こっちに来ませんように・・お願い、どこかへ行っちゃってーー!)

ニーナの必死の願いが聞き届けられたのか、幸運にも怪物はドアから中には入って来ず、そのまま外を歩いて行った。

「入って来ないのは、いいけど・・外にいられちゃ、船に戻れないよお。」

(お願い、神様っ!)

ニーナは必死に祈っていた。
1分が1時間、いや、それ以上に思えた。

このままここにいても、また別の怪物が別方向から入ってくるとも限らないのだ。

-シャーー・・-

しばらくするとニーナの目の前のドアではないドアが開く音がした。

「基地内へ入ってくれた?
・・・それとも別の怪物が・・・外へ出た?
ど、どっち?」

急いで探知機で調べる。
一応、基地の外も含め、探知できる範囲内には反応はない。

「こ、ここは…もう出るしかないよねえ?」
(きっと向こうのドアから入ってくれたんだ。)

そう思ったら、迷っている余裕は無い。

ニーナは物陰から飛び出るとすぐドアから外へと出る。
視界には、怪物らしき姿もない!

「よし!」

後は、ただ一目散に船へと走るのみ!

周囲のスキャンも、目視なんてこともせず、ひたすら目の前のポートに停泊している『ジョリーロジャー号』だけを捕らえ、ひた走る。

「もう少しでステップだ!」

そう思った時、背後でドアが開く音がした。
が、彼女には振り向く余裕はない。とにかく突っ走る。

(大丈夫!ドアからここまで結構距離があるんだから!)

そう思いつつもティブの叫び声が脳裏に響く。

『見つかった!と思ったらすぐ傍まで来てやがるんだ!』

生きた心地がしないというのは、このことなんだと改めてニーナは感じていた。

急がないといけないのに足が思うように動かないような感覚。
走っているつもりなのに、自分の動きがまるでスローモーションのように感じられた。

怪物がいつそこまで追いついてくるのかわからない。
なぜだかすぐ背後まで迫ってきているような気配がする。

が、後ろを振り返って確認する余裕など皆無だ。
ともかく、船に逃げ込むことだけを考え、恐怖でこわばってしまっている自分の身体を必死で動かす。

これ以上無い死にものぐるいという状況。

やっとステップに上がる手すりに手がかかる。
その手すりをぐっと片手で握り、上がり始める。

後ろはどうなのか、怪物は?…いや、まだきっとここまで来ていない。
そう自分に言い聞かせながら、ドアへと急ぐ。

-ガコン!-

「リズ!」
「ニーナ!」

船のドアの内側でニーナを待っていてくれたリズがドアを開けてくれると同時に、ニーナの手を引っ張り中へと滑り込ませる。

船内に倒れ込むように入るその瞬間、ふと振り返ったニーナの視野に、世にも恐ろしい姿をした怪物が、船のステップを上りはじめている怪物の姿が入った!

その姿と比べるとナーシー星系で会ったシシャザーンなどは、かわいいものだとニーナは思った。

シシャと同じように爬虫類系のように思えたが、耳まで裂けた大きな口には、 ものすごく長く鋭い牙がある。
目は退化してしまっているかのように、小さな ものが耳のすぐ横にある。
金属かとも思われる光沢のある皮膚は真っ黒、そして、その細長い骨 と皮だけのような手が・・するどい爪が、ニーナに向かって伸ばされてきていた。

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宇宙へ逃げろ!

ーガコン!…バシュー!ー

リズが即座にドアを閉め、二重ロックする。

勢い余って滑り込みセーフよろしく床に突っ伏したニーナだったが、そんな状況にいつまでも甘んじているわけにはいかない。

痛みなど感じているヒマもなく、すっくと起き上がるとリズに目配せしてコクピットへと急ぐ。

「ええーーーい、お前なんか落っこちてしまえーっ!!」

「発っ進ーっ!」

-ウィィィィィーーーーーーーー・・・・-

「ふーーーーーっ・・・」

宇宙空間と小惑星バスルチを映すメインスクリーンを見つめ、大きく息を吐くニーナ。

「そうだ!船の外壁にへばりついている…とか、ない?どこかから侵入してる…とか?」

リバイバル映画のシーンがニーナの脳裏によみがえる。
恐怖はいまだにニーナの心に残存していた。

「船内に侵入者無し!船外にも反応ないよ!」

計器で船内外を調べていたリズが声を大きくして報告する。

「もう大丈夫だよ、ニーナ!」

ふ~~~~・・・・・・

リズの報告を聞き、ニーナは、改めて安堵の息を吐く。

「ハッ!NSBは?NSブースターは?」

「足下にあるでしょ?」

「え?あ、そうだった?」

どうやら無意識にコクピットまで持ってきて足下に置いたようだった。

「よ、良かったーーーーーーー。」

「やったね、ニーナ!まるで、幸運の星の元に生まれたみたいだねー、ニーナは。」

恐怖と極度の緊張のせいだろう、もう安全地帯にいるというのに、ニーナの手も身体もまだガタガタ震えている。

「喉がもうカラカラよ。お水ちょうだい。」

気づけば喉が乾ききっている。
彼女は、リズから受け取ったコップの水を一気に飲み干した。

「お代わり!」

2杯、3杯、4杯と立て続けに飲んでようやく乾きと震えが収まってきた。
「ふーーーーー」

「大丈夫?」
コップを片づけながらリズが聞いた。

「うん・・もう、大丈夫!」
そう言った彼女の声はまだまだ震えている。

「よし!」

ばちん!と自分を落ち着かせるため、両手でほほを叩く。

「じゃ、自動航行の間、ちょっと一休みして、それから、タルゴン隊長のいるアークチュラスにまっしぐらだ!!」

まっしぐらといっても、バスルチ星系と直接繋がっているワームホールは無いため、デネブ星系経由になる。

そのデネブに繋がるマリーゲートに目的地をセットすると、ニーナはシートを倒し、眠りに入った。

ついさっきの悪夢を見ないようにと祈りながら・・・

 

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