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オマス牧師からヒアスラに、原点に戻れと言われたニーナは、久しぶりにカロノス星系のヒアスラ・スターベースにやってくる。
もちろん、真っ先に会いに行くのは世話になった酒場のマスターである。
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SFスペースファンタジー「星々の輝き」35・パズルの謎
「久しぶりだ、ヒアスラも、カロノスも。」
ニーナは、予定通り、カロノス星系にあるヒアスラ・スターベースに来ていた。
「親父さん、元気だった?」
早速彼女は、酒場の主人に会いに来た。
「やあ、ニーナ、生きてたようだね。」
主人はカウンターの中で微笑む。
「親父さんもね。」
笑顔を返し、ニーナはカウンターに座る。
「一杯くれない?親父さんお薦めのおいしいやつ。」
「俺のとこのは全部うまいんだぞ。」
少しおどけたように言うと、主人はジョッキにビールを注いだ。
「さあ、飲みねえ、飲みねぇ。」
「ありがと。」
「た・だ・し・・・飲みつぶれないように、なっ!」
主人はニーナにそう言って、ウインクした。
「やぁーだ、親父さん、もうそんなことしないよお!」
初対面の時の事を思い出して、彼女は赤面した。
久しぶりにニーナはおいしい酒を飲んだ気がした。
父親のように思っている主人ととても気持ちよく話せ、本当に気持ちよく飲めた。
その日、ニーナは閉店後も主人の頼みで、そこで時間のたつのも忘れて話していた。
但し、今ニーナが直面している難題らしき事は、主人にまで迷惑がかかってもと思い、話すことはやめたが・・。
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ヒアスラのバーで情報収集
やはり、出入りの多いヒアスラだけはある。
ニーナはいろいろな話を、主人から聞く事ができた。
- ヒアスラ皇帝がどうやらもうすぐ退位する
- マンチーの攻撃が以前にも増して、酷くなってきている
- 議会もマンチーを撃退できる皇帝を望んでいる
- 次期皇帝の最有力候補は、コス提督。
- バスルチの事件
- ブラックハンドによるとみられる殺人事件
などなど
次の朝、ニーナはカウンターで主人と一緒に朝食を取っていた。
「あんなこと言ってまた酔いつぶれちゃった。あははは。」
ニーナは頭を掻きながら、照れ笑いをした。
「いいんだよ。昨日は俺が引き留めて飲ませたんだから。」
主人も笑った。
「失礼します、朝食お願いできますか?」
店の入り口には、帝国警備隊の略式制服を着た若い男が立っていた。
「もちろんですよ、どうぞおかけ下さい。」
主人は彼にニーナの横のイスを勧めた。
「はい。」
彼はそこに座り、ニーナに話しかける。
「おはようございます。」
「お、おはようございます。」
彼のあまりの礼儀良さに、ニーナは少し戸惑いを覚えた。
「自分の名前は、トゥームと言います。まだ単なる歩兵です。
今休暇中なので、ファーアーム中を旅してるんです。」
「私、ニーナって言います。一応、貿易商ってとこです。」
「お一人で大変でしょう。
でもいろんな所に行って、いろんな人に会うっていうのは、とても意義有ることだと思います。」
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気のいい兵士
トゥームは、ニーナに聞かれるまま、彼の出会った人たちのことを事細かく話してくれた。
その他人を疑うことをしらない彼に、ニーナは昔の自分を見ているような気がし、また、プリンセス・ブルー号に乗って旅をしていた頃を思い出していた。
周りの人は、みんないい人だと思っていたあの頃の自分を。
そして、今まで、ニーナが手に入れてなかった情報も彼から聞くことができた。
- 公妃様がブラックハンドと何やら衝突していること。
- タルゴン隊長が極秘の任務についていて、公妃の敵に捕まったらしい。
- 行方も今もってわからないのはブラックハンドの仕業ではないか。
そう、偶然にもトゥームは、タルゴン隊長の部下だった。
「隊長は、すばらしい上官でした。
自分を一人前に育ててくださったし。
それにファーアームで一番勇敢な戦士なんです。
小さな偵察艇でコルセアを倒したくらいなんですから。」
コルセアとは、大型の海賊船である。
その装備は、帝国軍の大型軍艦、タイタンに匹敵する。
タルゴン隊長のこととなると、彼の舌はどんどん熱を帯びていった。
(よほど、尊敬し、慕っているのだろう。)とニーナは思った。
「ですから、公妃様と意見が合わず退官させられた、などというのは、あり得ないのです。
隊長ほど忠実な部下はいません。
きっと、何か、やむをえない、何かがそうさせたのだと思います。」
「そうね、私もそう思う。」
そう答えた直後、ニーナの脳裏にひらめくものがあった。
「小さな偵察艇でコルセアを倒したって言ってたよね?
その偵察艇の名前は知らない?」
トゥームは残念そうに首を振った。
「極秘任務の多い隊長でしたから、そこまでは。」
「ちらっとでも聞いたことがない?ジョリーとかロジャーとか?」
ニーナはひょっとしたらタルゴン隊長が、船の前の持ち主なのでは?と思ったのである。
「すみません、小型偵察艇としか。」
しばらく考えていたトゥームはこう付け足した。
「サンレーサータイプの小型艇だったとは聞いた気がします。」
(サンレーサータイプ!)
ニーナはそれだけで確信した。
航海日誌とタルゴン隊長の現状を照らし合わせれば、パズルのピースはかなり埋まる。
「いい話をいっぱいありがとう、トゥーム。じゃ、私行くから、またね。」
「いいえ、こちらこそ、お話ができて楽しかったです。良い旅を、ニーナさん。」
「親父さん、また来るね。
トゥーム、タルゴン隊長のような、立派な隊長さんになってね。またどこかで!」
ニーナは、まだ話し足りないようなトゥームとバーの主人に別れを言うと、急いでポートに向かった。
(こうしちゃいられない、とにかく、公妃様に会わなきゃ。なんとしてでも!)
>>>SF・スペースファンタジー・星々の輝き・SpaceRogue-36-につづく
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