SFスペースファンタジー「星々の輝き」32・チーシャとの別れ

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シギュア星系を後にしたニーナたちは、デネブ星系の採掘ステーション・ロスに向かう前、アーマー修理の為、一旦フリーギルドに立ち寄る。
外見はすっかり修理アンドロイドらしく変えてはいるば、念のためチーシャは下船しない。

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SFスペースファンタジー「星々の輝き」32・チーシャとの別れ

「あんちゃん、あんちゃん!」
フリーギルド拓殖基地で修理を頼み、ポートへの通路を歩いていると、 全身錆だらけのロボットがニーナに声をかけてきた。

その押し殺したような声は、明らかにやばい事らしいとわかった。

多少警戒しつつ、ニーナは黙ったまま彼を見つめる。

裏家業への誘い?偽造通関書類・・

「しー!おいら、ロボクルックってんだ。
いい話があるんだが、のらないかい、あんち ゃん?」

「さっきから『あんちゃん、あんちゃん』ってうるさいわね!何か用?」

少年扱いされるのは、いつものことである、女だと分かって馬鹿にされるよりいいと思い、いつも勝手 にさせておくニーナだが、あまりにも『あんちゃん』と連呼され頭にきていた。

「シー!まぁ・・・そんな恐い顔すんなって、兄弟。
いい品物を持ってるんだぜ。」

「どんな品物?」
ニーナは膨れっ面をしながら聞いた。

「取り引きってのはこうだ。
前金で100クレジット払いな。
そうすればこのカバンの 中の品物を手に入れられるってわけだ。
まるまるあんたのもんだよ。
こいつはうまい取 り引きだぜ。どうだい兄弟?」

「100クレジットで?
・・でも、何が入ってるのかわからないじゃない?
がらくたなんじゃないの?」

「そんなことないって!兄弟!保証するぜ!」

信用したわけではないが、ニーナは100クレジットくらいならいいか、と思いロ ボクルックに渡した。

「そうこなくっちゃ。それでこそだぜ、兄弟。
よし、カバンに手を入れて品物をつかみ な。」

彼は、持っていたぼろぼろのカバンをニーナに差し出した。

「大丈夫だって、おかしなもんは入ってりゃしないよ。」

なかなか手を入れないニーナに笑いながら彼は言った。

バッグに手を入れてみたニーナはその底にあった小さなカードを取り出した。

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「偽造通関書類!」
彼は小さく叫んだ。

「運がいいねあんた。このカードがあれば、いちいち 隠さなくても密輸品をファーアームのどのベースにでも運べるぜ。」

カバンを小脇に抱えるとロボクルックはいんぎんに言った。

「お取り引きいただいてありがとうございます。
さてと、監視が嗅ぎつける前にさっさとずらかるか。またな。」

彼は、ニーナがそのカードをひっくり返して裏や表を見ているうちにさっさと立ち去っ てしまった。

偽造通関書類・・・今まで真面目にこつこつと商売をしてきたニーナには、必要のないものとも感じられた。

が、チーシャのすすめで、やってみることにした。

というのも、ここのところ商売より情報ばかり仕入れてて、手持ちが少なくなってきていたこともあり、実際、ちょっとピンチだった。

密輸品はスターベースで高値で売れるとサー・エルドから聞いたのをニーナは思い出す。

そして、幸い(?)ここ、フリーギルドはその手の商品は豊富に揃っているし、結構自由に売ってもくれる。

一番高額で売却できるのが、『アナガシック・ドラッグ』。

「でも、麻薬は……やっぱり抵抗あるわよねえ。」

そして、次に儲かるのが『偽造クレジット』。

「うーん、偽造クレジットならいいかな?多少流通させたって、そのせいで一気にインフレとかにはならないよねえ?」

が、麻薬売買も偽造クレジット(通貨)も重罪である。

「その次が爆薬ねえ……物騒だわ。で、武器………保護動物の中での珍種売買……は、かわいそうよねえ?」

どれもスターベース以外でや、ペット用珍種は、特定の星域で手に入るが、やはり、ここ、海賊の本拠地であるフリーギルドで買うのが一番安いという事だ。

「1回だけよ、1回だけちょっと試して…みる?」

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偽造通貨の密売

今、ニーナは偽造通関許可書の効能を試すべく、バスルチ星系からデネブ星系へとやってきていた。

まず、デネブプライム・スターベースに立ち寄り、アーマーの修理と商品(今回は密売品である偽造通貨)をさばくことにした。
そのあと、ラックスの待つロスへ 行くつもりだ。

目の前にデネブプライムが見える。
ニーナはばれやしないかとドキドキしながらドッキングした。

通常、ドッキング時に貨物庫などのスキャンという積荷チェックがあるのだが、その前に【偽造通関許可書】を提示している。

さて、ここでその偽造通関許可書が、偽物かどうかバレるかどうかドキドキのショータイム♪

・・・・・・・・・。

バレたら即捕縛される。船ごと。
そして、その保釈金は、バカ高い。

(どうか、バレませんように……)

祈ることしばし……

『デネブプライム・スターベース。
通関許可書確認。他、異常無し。下船を許可します。』

「ほーーう。」

ニーナは胸をなで下ろすとすぐ、その方面のバイヤーと連絡を取ってみた。
そしてここでサー・エルドの紹介状が活躍する。

最初は電話の向こうで、とぼけていたバイヤーも、サー・エルドの紹介だと言うとすぐ会ってくれ、無事取引終了。
その値段の破格な事!

「やっちゃった……ついに、私も罪人………」

そして、デネブ・スタープライムを発進しようとしていた時だった…

『ニーナ・シャピロ、偽造クレジット売買により逮捕する!』

「え?」

ヴィーーーー!ヴィーーー!

けたたましくなる警報とともにニーナの耳に発進直前の通信機から飛び込んできたのは、積荷監察官の声。

ポートからアンロック前だったため、逃げるに逃げられないジョリーロジャー号。

「えええーーーー?そ、そんなぁ~~~!!」

ヴィーーーー!ヴィーーー!・・・・

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幸せ一杯の恋人たち

ハッ!と不意に目覚めるニーナ。
全身は冷や汗びっしょり。手がなんだか小刻みに震えている。

「え?ここって、スターベースのポートじゃなくて、宇宙空間よね?
警報音もなってないわ・・よね?」

前面スクリーンには、静かな宇宙空間と小惑星ロスが映し出されていた。

「ゆ、夢だったんだ……よ、よかったー。」

(そういえば、確かに偽造クレジットにしようと思ったけど、結局は怖くなって買えなかったんだよね。)

夢で本当に良かったとほっと胸をなでおろすニーナ。

そして、気を取り直して、ロスのステーションに降り立つ。
まず、チーシャをそのまま船において、ニーナはラックスに会いに行く。

「こんにちは、ラックス。」
彼は相変わらすご主人の用事で基地中を走り回っていた。

「ああ、こんにちは、ニーナさん。・・・MAIDは見つかりました?」

ラックスは、ニーナを認めるとにこやかに、少し心配げに聞いてきた。

「そのことなのよ。」
ニーナは彼を星空が見える展望台に誘った。

「彼女は、自分で修理用のアンドロイドにリプログラミングして、私の船に隠れている のよ。」

「す、すばらしい!!」

ラックスがあまりにも大声で叫んだので、ニーナは慌てて彼の口をふさいだ。
幸い他には誰もいなかったが。

「それでは、私の元に送り届けて下さいますね。
オリジナルのプログラムをリストアし ますので。」

そう言ってラックスは、あらかじめ用意しておいたらしい、アパートメン トの場所を書いた地図をニーナに渡した。

「O.K!!」

ニーナは紙を受け取るとさっそくポートに行こうと、展望台から降り始めた。

「ニーナさん、ちょっと待って下さい。」
後ろでラックスが呼び止めた。

「なあに?」
振り返るニーナにラックスは、大粒の宝石を差し出した。

「向こうの隅で光っていたのを見つけたんです。
落とし物だと思いますが、ロスでは、 これくらいのディリシウムならいくらでも出ますので。」

持っていきなさい、と言うようにラックスは、ニーナの手を取るとディリシウムを握らせた。

「いいのかな?」
その美しい輝きを見ながらニーナは呟いた。

「いいですよ。他のスターベースならそうもいきませんが、ここなら少し掘れば出て来 るんですよ。誰も気にしません」

結局ニーナは、それをもらっておくことにした。

船に戻り、チーシャにラックスのことを話したニーナは、彼女をそっとそのアパートメ ントに連れていく。

するとすでに主人の用事を終えて先に来ていたラックスが、大喜びで2人を迎えてくれた。

「ああ、ありがとうございます。」

ニーナとチーシャを見た途端、彼は両手を広げて喜びを表現した。

「MAID!」
「ラックス!」

しっかりと抱き合った2人を見るニーナの瞳から、思わず涙がこぼれ落ちた。

「あなたは、私とMAIDの恩人です。
私たちは分解される日まで、このご恩を決して忘れま せん。」

そして、彼はいそいそとチーシャの手を引くと、オリジナルのプログラムをリストアす るため、部屋の奥に入っていった。

これで、ニーナにとって一番重大な密輸品を無事送り届けたわけである。

すっかり、親 しくなったチーシャと別れるのは、ニーナにとって非常につらかった。
が、彼らの幸せそうな姿を見て、これでよかったのだ、と自分に言い聞かせる。

これで元に戻り、もう船の修理をしてくれる者はいない。

戦闘にはだいぶ慣れてはきたが、チーシャがいたときよりまた苦しくなるだろうし、何といっても、また1人で旅を続けなけれ ばならない。

いっそこのままラックスに送り届けないで、ずっと船に置いておこうか、 なんて事も考えたニーナだったが・・・そうしなくて良かったと2人を見なが らつくづく感じていた。

「恋の邪魔をする奴は、馬に蹴られて死んじまえ!って言うしね・・。
あれだけ引かれ合ってる2人をみてたら そんな気も起きないし・・・。」

「幸せにね。」

そう言うとまた尋ねることを約束したニーナは2人と別れ、グリフォン 星系のオマス牧師に会う為、ロスを離れた。

牧師もだいたい予想している事とは言え、できれば話したくないニーナだったが、そうもいかない。
事実は事実として、きちんと話さなければ、オマス牧師はいつまでもニーナの報告を待つ事になるだろう。

グリフォンに行くために、通り道であるアークチュラス星系に繋がるマリーゲートに向 かうニーナの心が重いのは、チーシャと別れた寂しさだけではなかった。

 

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