スペース・デリバラー営業日誌5・アナログ航路は大渋滞

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宇宙空間や異空間のコロニーへの配達に使う航路は、現在、アナログ・ADSL、光航路の3つがある。

そして、それぞれその航路を使うことのできるスペースカーは限られていて、最高速度もそれに準じている。
しかも免許が必要なため、航路に合ったスペースカーを購入すればOKというわけではない。

そして、久美子と千里の場合は、一般的に取得するスペースカー免許ファーストクラスのアナログ航路なのである。

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今日も定時帰宅は無理?・・・アナログ航路は大渋滞!

「ねー、この渋滞っていつまで続くのよぉ?」

「さ~?どうなんだろう?一般路だから交通情報なんて流れないし・・・」

久美子と千里は、とあるアナログ航路で大渋滞に巻き込まれていた。

「あ~あ・・・先週のB級ライセンス試験に合格してたら・・・」

大きくため息をつきながら久美子がうんざりした表情でつぶやいた。

「仕方ないわよ。残業に次ぐ残業で、家で勉強する元気なんてなかったもん。」

「そうよねー・・・ああっ!」

クエリーシステムで航路状況を見ていた千里は大声を上げると同時に、前方を航路斜め上から映し出しているそのシステムの画面を指さす。

「どうしたの?」

「こ、これ!これ見てよ!5台前の車の車種ナンバー!」

「車種ナンバーがどうか・・・・ええっ~~~?!」

画面をのぞき込んだ久美子も驚いて大声を上げた。

「ち、ちょっと・・・・こんなのがいるからただでさえ遅いスピードがますます遅くなるのよぉ~~!」

「それにさ、この路、結構その手の車が多いみたいなのよ。」

「そ、それじゃ、いつになったらスピードを出せるのかわからないじゃない?」

ふ~~・・・っと2人は大きくため息をついていた。

5台前に走っていた車。それは、2人が乗っているアナログカーと同じランクではあるが、最速スピードが彼女たちの車の約半分という旧車種もいいところ・・・骨董品と言ってもいいような代物だった。

「今時イッチョンチョン(144bps)車はないでしょぉ~~?」

そうなのである、久美子たちの車は、異空間移動に使われている車種の中でも一番遅い種類の車、そしてその種類の中にも車種があるのである。

が、同じアナログカーの為、同じ航路を利用することになる。次元移動航路では、通常の住空間で使用している自動車と違って追い越しができない為、遅い車種が前を走っているといくらそれ以上スピードがでる車でもそのスピードは限られてしまうのである。

「あ~あ・・それに加えてこの渋滞でしょ?なに?このスピード?98bpsよ?98っ!」

スピードゲージを見つつ、千里が文句を言う。

「これだってアナログだけど、一応その中では最速カーなのに・・・・」

1kbpsフレキシブル、それが彼女たちの車の車種だった。

現在、遅いものから、144,288,336,540,そして1000(1k)といった車種がこのアナログ航路用として使われている。

「さすが異次元の片田舎と言われるエリアだけあるわね?」

「でも、片田舎って言ったってADSL航路だって通っているのよ?」

「光はまだでもね?」

そう言いながら、2人はライセンスがないせいでこの大混雑しているアナログ航路を行くしかなかったことを思い出して、互いを見合って苦笑いした。

「今日も時間内帰社は無理かな~?」

「無理なんじゃない?」

「悪くすると・・・・日付変わるかもね?」

「課長がまた頭を噴火させて待ってる・・・・」

久美子はふるふると頭を横に振って続けた。

「いくらなんでも日付が変わるまでオフィスで待ってはいないわよね?」

「そうね~・・・いい加減帰るんじゃない?」

「ね~?」
再び見合って二人は大きくため息をつく。

「・・・・・はあ~あ・・・・・」
課長の怒った顔が2人の瞼に写っていた。

「ふ~~・・・ようやくエリア分岐点が近距離クエリーシステムで認識できたわ~。」

「あと少しでこの渋滞も終わるのね?」

「そう、あと少し・・・・それでも30分くらいはかかりそうね?」

「・・・・・・」

渋滞を通過すれば気持ちよく最速で

-シュ~~~ン!-

そして、その30分後、分岐点から続く配達先コロニーまでのトンネルを2人の車はアナログカー最速スピードで突っ走っていた。

「これから行く今日の最後の荷物の配達先ってさ、滅多に訪問者も旅行者もないって聞いたコロニーらしいんだけど・・・どんなところなのかしらね?」

「そうねー・・・通販会社の商品よね?」

「うん。受取人は、サー・ブラック・ウィング・・・・いかにも怪しげじゃない?」

少し不安そうな表情で言った久美子を珍しく千里がたしなめる。

「なに言ってるの?どういう人かわからないのに、お客様をおかしな先入観で見ちゃだめよ?」

「ご、ごめん・・・」

「少しは社員としての自覚を持ちなさい!」

「は~い・・・って、でも、この場合お客様って通販会社でしょ?」

「う"・・・・」
久美子のつっこみに千里はぎくっとする。

「だ、だから・・・・お客様である通販会社の商品を買ってくれるってことは、お客様のお客様でしょ?・・だから、結局はそうなるじゃないの?」

焦りながらとっさに思いついた言葉を早口にまくしてた千里に、久美子は少し意地悪そうに軽く笑った。

「そういうことにしておいてあげるわ。それに私も悪口は好きじゃないし。」

「そうそう。会ってみると意外といい人なのかもしれないし?」

「意外は余分なんじゃない?千里?そういうのがおかしな先入観っていうのよ?」

「う"・・・・」
自分の言ったことを言われ、千里は口ごもった。

「ま、まー、とにかくぅ、片田舎と言われようがなんだろうが、1つのコロニーの持ち主なのよ。」

「そうそう。コロニーの持ち主っていうことは・・・」

「そう、持ち主っていうことはぁ・・・・」

コロニーにより大小さまざまではあるが、いわゆるその土地(コロニー)の地主なのである。個人でももてないことはないが、ほとんどが法人である事が、それに対する代価の高さを物語っている。

小さいものでも1000世帯。
大きいものならの万の世帯が収容可能なのである。

つまり、コロニーのオーナーということは、それ相応なお金持ちということでもあった。

「でもさ、分譲しないで一人で住んでるなんて珍しいわよね?」

「そうよね?マンションの1フロアを買い切りっていう感覚なのかしら?」

「違うわよ!島1つ買い取ったって言った方があってない?」

「そ、そうね。小さくてもコロニーだもんね。」

「うん。」

建築会社など法人がオーナーの場合が多いが、個人で買う場合もある。

通常、コロニーのオーナーが個人であってもそこに住むとともに、分譲地として売り出す。そしてそれをコロニーの維持費に充てるのである。

つまり、領主と領民のような関係と言えば早いかもしれない。(もっとも昔の領主のような権限はない。)

「よっぽどお金持ちなのかしら?」

「さ~?どうなのかな~?」

「な、なによ、千里?」
にやにやと自分を見ている千里に久美子は何が言いたいんだ、と聞く。

「久美子って玉の輿願望だった?」

「や、やーね!そんなんじゃないわよ。」
焦って言い訳する久美子。

「やっぱり人物が第一でしょ?人間は心よ、心っ!」

「ふ~~ん・・」

「な、なによ、千里・・・まだ何か言いたいわけ?」

「とかなんとかきれい事言っててさ?」

「嘘は言ってないわよ!だっていくらお金持ちでもやっぱり愛する人でないと。」

「ふ~~ん。じゃ、貧乏でも愛しあっていればOK?」

「そ、それは・・・ね、・・そうだけど・・・・でも・・」

「でも?」

「でも・・・ないよりあった方がいいと思わない?」
2人は見合ってふふっと小さく笑った。

そして・・・・その次元トンネルを抜けた2人の視野に入ったのは、青空と、どこまでも広がる真っ黒な森。

「な、なーにこの森?」

「ねーねー、黒の森って・・・もしかしてここのオーナーって闇王ゼノー?」

「ぷっ!」
千里の言葉に久美子は勢い良く吹き出した。

「まーたぁ。千里も好きねー。
そんな創作上の人物がいるわけないじゃない?!」
(参照:異世界スリップ冒険ファンタジー・創世の竪琴

「えへへっ」

少し呆れたような表情の久美子に千里は頭をかいて照れる。

「でも、ホントに真っ黒な森ね。」

「うん。深緑っていっても、これほど黒に近い緑なんて・・」

木々の密度が少し低いようなところでは、木々の葉は陽の光を濃い緑色の輝きをはじき返していたことから、本当の黒ではないらしいと判断できた。

「で・・・この森のどこに受取人のお屋敷があるっていうの?」

「・・・・・」

窓から下を眺め見る2人。その眼下に家らしきものはどこにも見あたらない。

「あっ!あれっ!」

しばらく森の上空を飛び続けていると、1カ所むき出しの地面が顔をだしている場所を発見した。

「お屋敷もあるし。あそこでいいのよね?」

「そうよね?きっとそうよ!」

そこは森の中にぽっかりと口を開けているような空間。
木々に覆われた屋敷の玄関先のようだった。

「なんとなく怪しげな雰囲気じゃない?」

少し気味の悪そうな顔つきで呟いた久美子の肩を千里はぽん!と軽く叩く。

「何言ってるのよ?仮にもオーナーよ?時空建設局が許可したってことは、人物も保証されてるんじゃない?」

「あっ!そうか・・そうだったわね?」

「まー・・・多少変わってるような気はするけど・・・・」

正面部分が見えているのみ。あとは鬱蒼としげる木々によってすっぽりと囲まれているその屋敷は、造りは確かに立派であったが、お世辞にも素敵とは言い難かった。

「さて、仕事、仕事!」

「うん!じゃあ、「着陸するわよ!」

「オッケー!」

不安を振り切り、2人はわざとらしく元気な声を張り上げる。

この仕事に就かなければできないこと、それは、見ず知らずの地への旅行、普通なら会えるはずのない人物との出会い。

今日の配達先はどのような場所なのか、そして、どんな人物と出会えるのか、その楽しみはこの仕事の醍醐味とも言えた。

宇宙の果て、異次元の果て、・・・夢を乗せて駆けめぐる。

時には海賊(ハッカー)や暴走族(デベロッパー)の襲撃といったハプニングにも見舞われることもあるが、そこがまた魅力でもある。

相手がどんな人物か、心配になることもあるが、単なる配達人なのである。受取人から危害が加えられるようなことは、まずもってないと言っていいだろう。

たとえ、今回のような怪しげな家だったとしても。

「でもさ・・私が玄関ベル鳴らすから千里、手渡してくれない?」

「や~よ。順番でいくと今度は久美子の方でしょ?」

「だって~・・・近づいてきたら、怪しさが増してきた感じしない?」

「う、うん・・・・」

ゆっくりと垂直に降下していく車の窓からは、上から感じた以上に大きな屋敷がみえていた。

正面玄関の真上には、今にも飛び立んばかりの真っ黒な鳥の剥製があった。

さて、今回の出会いは、どんな出会いなのか?

少なくとも2人のあこがれ、中世風コロニーでハンサムと運命の出会い・・では、なさそうでもあるが・・・会ってみないことには、それも言い切れない。

千里と久美子は、少しびくびくしながらデリバリーカーのドアを開けて外へ出、荷物を手にすると玄関へと向かった。

 

つづきは…未定です。/^^;;;

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