闇の紫玉

闇の紫玉/その22・巨人と力比べ

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ムーンティアを持つという巨人グレンデルの住む沼にきたゼノー。
いくら呼んでも応答がないため、ゼノーは最終手段ともいえる闇の気をまとい、沼の中へ入ってみた。

闇の紫玉、その22・巨人と力比べ

このページは、異世界スリップ冒険ファンタジー【創世の竪琴】の番外編【闇の紫玉(しぎょく)】のページです。
闇王となったゼノーのお話。お読みいただければ嬉しいです。
異世界スリップ冒険ファンタジー【創世の竪琴】の番外編【闇の紫玉(しぎょく)】、お話の最初からのINDEXはこちら

巨人と対面

沼底にある屋敷。だが、屋敷の中は、水ではなく空気があった。

その造りは外側同様、内側も金銀宝石で飾られててなんとも豪奢である。その上、その調度品も全てそうだったのだ。

「龍と同じで光るものがすきなのかな?」
そんなことをふと思いながらゼノーは周囲を見渡す。

「2階からいびきが・・・」

ゼノーは館の2階からぐおーぐおーと聞こえるいびきに引かれ上がっていく。

グレンデルが寝ていると思われる部屋の前に立ち、ゼノーは薬を飲んだ。
そのままでは、ドアノブにも手が届かなかった為だ。

-コンコン-

「グレンデル?起きてくれませんか?グレンデル。」

「だーれだぁー?」
いびきが止まり、扉を開けたのは、大人の姿になったゼノーの二倍ほどの巨人だった。

ぼさぼさの緑の髪、真っ赤な瞳、口まで下がった大きな鷲鼻、牙の突き出た大きな口、茶褐色の肌。
その筋肉隆々とした身体にゼノーは一瞬どきっとした。

「ゼノーと申します。お休みの所、すみません。
少しお尋ねしたいことがありまして。」

「尋ねたい事?」

「はい。」
グレンデルはその大きな目をぎょろっと動かし、ゼノーを観察した。

「下の客間に行ってろ。」

「はい。」

バタンと扉を閉めたグレンデルにゼノーは答えると、階下へ戻った。

大人の姿になっていてもゼノーには少し大きく感じられたが、そこにあったイスに座ると静かにグレンデルを待っていた。

しばらくして、キルトを履いたグレンデルがやって来て、どかっとイスに座った。
何も身に着けていない上半身の見事な筋肉質がいかつく見える。

「何を尋ねたいんだ?」

「はい、ムーンティアの事なんですが。」

「ムーンティアか・・・」
グレンデルはその目を閉じ、じっと考え込んだ。

ゼノーは一見、ただの人間に見えたのだが、とりまいている闇の気が確かに普通ならざる者だということを現していた。

それに、例え、この闇の世界の住人であってもこの沼の底まで来るのは容易な事ではなかった。水蛇も守っている。

しかも、結界が貼ってある館の中にまで入っているのだ。

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巨人との取引

「いいだろう、その在り処を教えよう。
但しこの俺様を見事この沼から出せたらの話だ。」

目をかっと開き、ゼノーを見つめるグレンデルは、嬉しそうに見えた。

「それが出来なかったら、その命を貰うぞ!」

立ち上がったグレンデルに合わせて、ゼノーもゆっくりと立ち上がった。

「本当にあなたが、ムーンティアの在り処をご存じなら、いいでしょう。」

「俺は、嘘は付かん。」

「では、失礼します。」
軽くそう答えるとゼノーは戦おうと身構えたグレンデルに向けて両手をかざした。

「何だ、武器も持ってないのか?」
グレンデルは目を細めて笑いながら言う。

「あなたにはどんな強力な武器も効かないのしょう。
その身体は鋼鉄の刃でさえも受け付けないはずです。」

「では、どうしようと言うのだ?
その手から発する気で吹き飛ばそうとでも言うのか?お前のようなチビが?」

わっはっはっと大声で笑うとグレンデルは続けた。

「お前の身体は最高に美味そうだ。
それに、その気、その魔力は、俺の力をより強力な物としてくれるだろう。
さあ、出来るものならやってみろ!気が済むまで思う存分試すがいい。
最後は俺様の餌食となるに決まっておる。まぁ、ゆっくり待ってやるからな。」

ドスンと床に座り込むと、腕を組んであぐらをかいた。

「その言葉、後悔しないでしょうね?」

「勿論だ。どう後悔すると言うのだ?お前が闇王様とでも言うのなら、話は別だが。」

ふふんと鼻で笑うとグレンデルは、目を細めてゼノーを見た。

「貪欲なのもいいですが、もう少し頭を働かせたらどうです?
何故私がムーンティアを探しているか、考えないのですか?」

「ふん!この前もそれを聞きに来た奴がおった。
そいつは、既に俺様の血地肉となっておる。お前も直にそいつの後を追うんだ。」

「さあ、それはどうでしょうか?
最も私も一発目であなたを沼から出せるだけの自信はありませんが。」

「構わん、気が済むまでやるがいい。
どうせここまで来たんだ、俺様を倒す以外、ここからはもう出れん。
逃げることは不可能だ。」

グレンデルは、さあやって見ろと言わんばかりに目を瞑った。

「では、失礼して。」
ゼノーは両手に気を集中した。

(飛べ・・・グレンデルの身体よ、沼から飛びだせーっ!)

 

▼その23につづく…

闇の紫玉/その23・ひとめぼれの2人

魔の気でみごと巨人グレンデルを沼から飛び出させたゼノー。 勢い余って空中に飛び出たグレンデルの巨体は、岸辺で待っていたダークエルフのモーラ姫の上に落下する。 闇の紫玉、その23・ひとめぼれの2人 この ...

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