誤解がきっかけでダークエルフの国の貴賓客となったゼノー。
国王には、なにやら算段があるらしかった。
闇の紫玉、その20・成人した姿でのバースデー
このページは、異世界スリップ冒険ファンタジー【創世の竪琴】の番外編【闇の紫玉(しぎょく)】のページです。
闇王となったゼノーのお話。お読みいただければ嬉しいです。
(異世界スリップ冒険ファンタジー【創世の竪琴】の番外編【闇の紫玉(しぎょく)】、お話の最初からのINDEXはこちら)
舞踏会
半年が過ぎ、城ではゼノーの誕生日を祝って盛大な舞踏会が開かれ、城にはエルフだけでなく、いろいろな種族が集まっていた。
「ゼノー様。」
大広間に行こうとしていたゼノーをモーラが呼び止めた。
「何か?」
「ゼノー様、お願いがあります。」
「何ですか?私にできる事ですか?」
「あの、お怒りにならないで下さいね。私と一緒に来ていただきたい所がありますの。」
何のことだか見当がつかなかったゼノーだが、ともかくモーラの後についていく。
そこは、城の北の塔の最上階だった。
そこには年老いたダークエルフの老魔法使いがいた。
「ゼノー様、本当にお怒りになられません?」
「怒ろうにも私には姫が何をしようとしていのか、分かりません。」
懇願するように目をじっと見つめるモーラに、ゼノーは怒らない事を約束した。
「あの・・つまり、ゼノー様のお姿を・・」
「私の姿を?」
「は、はい。あの、今のままでは、いえ、決してゼノー様に威厳がないという事ではありません。
でも・・・あ、あの、今日はこの第五層だけでなく、他の層からも来訪者があると聞いております。
ですから・・・あの・・その御姿を成人された時の御姿に・・。」
真っ赤になってモーラは話した。
ゼノーの怒りに触れることを覚悟して。
「そうですね。それもいいでしょう。」
ゼノーは、今の姿よりその方が説得力があるだろうと判断していた。
闇の力を読み取り、相当な魔力を持つ者と判断はしても、この姿ではなかなか信じない者もいるに違いない。
最初ここでもそうだったように。
怒りを買うことを覚悟で言ったモーラは、ほっと胸をなで下ろすとその老魔法使いを紹介する。
彼女はモーラにとって大々叔母に当たる、齢千百歳のダークエルフだった。
「再び闇王様にお逢いできるとは・・・・」
嬉し涙を流した老婆は、何やら真っ黒な飲み物が入ったカップをゼノーに渡す。「@おっと…」
その異様な臭いにゼノーは思わずカップを落とすところだった。
「一気にお飲みなされ。」
モーラとその老婆に見つめられ、ゼノーは鼻をつまむと一気に喉に流し込んだ。
それは臭いだけでなく、苦さも半端ではなかった。
「ふーーーーーー・・」
何とか飲み干したゼノーは体が温かくなってくるのを感じた。
2人が見つめる中、ゼノーの体が徐々に大きくなっていった。
「うぷっ・・き、気持ち悪い。」
急激な体の変化に酔ったのか、しばらく何とも言えないその気持ち悪さにゼノーは丸くなってじっとしていた。
「落ちついたかの?」
「は、はい。」
「おお・・・闇王様じゃ。・・・まさしく闇王様。」
立ち上がったゼノーの姿を見て、老婆は涙を流して嬉しがる。
そして、それはモーラも同じだった。
これで、ゼノーと踊ってもおかしくない・・誰にもゼノーを渡さない、と。
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より闇王らしく
大広間では、客人が続々と集まってきていた。
そして、ゼノーがデクアスヴァル王とモーラ姫と共に現れると、歓声が沸き上がった。
透き通るような白い肌。
月光を思い出させる長く腰まである銀の髪、妖しく光る紫の瞳、そして、そのすらりとした長身を取り巻く闇の気。
その夜、そこに来た者は老若男女問わず、全員ゼノーの虜となっていた。
待ち焦がれた闇王、闇のパワーがそこにあった。
勿論、モーラがぴったりとゼノーに寄り添っていたという事は言うまでもない。
何しろ、自分と身の丈が釣り合うようにと、怒りを覚悟で老婆に会わせたほどだ。
が、ゼノーが淡い期待を抱いていたムーンティアについての情報は全く得られなかった。
翌日、ゼノーは一人で北の塔の老婆を尋ねていた。
舞踏会での経験で、その容姿も必要な条件だと思ったからだ。
運良く老婆からその薬とムーンティアについての情報を得ると、デクアスヴァル王とモーラ姫が必死になって引き止めるのも聞かず、ダークエルフの国から遥か西の、ムーンティアを持っているかもしれないという巨人グレンデルの住む、底無しの沼に向かった。
▼その21につづく…
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闇の紫玉/その21・沼底に住む巨人グレンデル
沼底に住む巨人がムーンティアを持っているらしいと情報を得たゼノーは、見つかれば一緒に行くというだろうダークエルフの姫に内緒で城を出をその沼へ向かう。 闇の紫玉、その21・沼底に住む巨人グレンデル この ...