闇の紫玉

闇の紫玉/その17・自称勇者ご一行様

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フェアリーの女王と出会い、ムーンティアも手に入れたゼノーは、そのムーンティアでテニスをしていたフェアリーの姉妹の案内で、闇世界第6層に降りた。

闇の紫玉、その17・自称勇者ご一行様

このページは、異世界スリップ冒険ファンタジー【創世の竪琴】の番外編【闇の紫玉(しぎょく)】のページです。
闇王となったゼノーのお話。お読みいただければ嬉しいです。
異世界スリップ冒険ファンタジー【創世の竪琴】の番外編【闇の紫玉(しぎょく)】、お話の最初からのINDEXはこちら

闇世界・第六層、勇者ご一行様

第六層でゼノーはダークエルフを捕まえた自称勇者ご一行様と、ばったり出会った。

なるほど、第六層まで来れるだけあって、自称とは言え、その力は尋常ではないとゼノーは感じた。

戦士と修業僧のその十分に鍛練された身体には無数の傷痕があった。

がそれにも増して、恐ろしい程の闘気が立ち上がっていた。
魔物たちが恐れるはずだ、とゼノーは思った。

そして、もう一人、女の魔技がいた。
この魔技も相当の魔力を持っている事が彼女を取り巻く気で分かった。

「何だ、何だ、坊やじゃないか、よくこんな所まで来れたな?
仲間とはぐれたのかい?」

戦士がゼノーを見るとすぐに言った。

「ちょっと待て!こんな所にこんな子供が一人でおれるわけない!
こいつは、人間の皮をかぶったモンスターじゃないのか?」

修業僧が叫んで、ゼノーに近づこうとした戦士を止めた。

「違いないよ!お気をつけ!見てごらん、あの目を!」

魔技はゼノーの瞳を指し示してそう叫ぶと、両手を胸で合わせ呪文を唱え始めた。

「ファイラとの盟約に基づき、我、全てを焼きつくさん・・・『赤龍焦炎!』」

真紅の炎龍がゼノー目掛けて突進する。

「ダークフラウ!」
魔技が放った炎龍がゼノーを覆わんとした時、暗黒の炎がゼノーの全身を包み、次の瞬間、赤い炎は消え去った。

「な、な・・・」
驚いて呆然とする勇者たちとは反対にゼノーは落ちついていた。

「返すよ。」
ぽつりとゼノーが呟くと、暗黒の炎は巨大な黒龍となり、あっと言う間に魔技を包み込んだ。

「きゃあ!」

戦士と修業僧に行動を起こす時間は全くなかった。

一瞬後、その黒い炎は彼女の姿と共に消えた。
そして彼女が立っていたと思われる場所には、小さな玉が光っていた。

それを見たゼノーは嬉しそうに微笑んだ。

パワーアップしたゼノー

ゼノーは第七層と六層を繋ぐ異次元空間を通る為に、その前に闇の力を自由に制御できなくてはならなかった。

そして、その入口の前で数日間精神を集中し続けた結果、完全に身につけたのだった。

「ガ、ガキだと思っていたら、とんでもない奴だ!」

勇者はその大剣を構え、修業僧は身構える。

「偶然の賜物、願ってもないこの素敵な贈り物に、闇王自ら、お前たちに祝福を与えよう。光栄に思うがいい!」

闇王としての自覚と自信がゼノーの内に生まれ始めていた。

「うるさいっ!人間の敵めっ!」

一瞬にして魔技を倒した事と、その闇の闘気に闇王ではないにしても、強大な力を持つ魔物だと確信した勇者は燃えた。

「やあああああっ!」

勇者がその大剣を頭上高く掲げ、拳の技を発しようと構える修業僧と共に、ゼノーに向かって突進してくる。

「お前たちが勝手に決めつけているだけだ。
私たちの世界にまで来て横柄な口は利かないでほしいな。」

ゼノーはにこりと笑うと右手を天にかざした。

-ドドーーン!-

その瞬間、怒りの轟きとも思える音とともに、天からの閃光が勇者と修業僧を包み込み、一瞬にして彼らは消え去った。

「こんなものかな、人間なんて。」

呟きながら、ゼノーは、彼が手にするのを待っているかのように、輝きを発している銀玉に手を延ばした。

「これで、3つ。あと4つ・・・か。第五層への道はどこだろう?」

ふと振り返るとそこにゼノーが助けたダークエルフの少女が立っていた。
その目は恐怖に脅え、全身が震えていた。

「お前・・」
ゼノーが何か声をかけようとした時、彼女は逃げるようにその姿を消した。

どうしたんだろう、と思いながらゼノーはゆっくりと歩き始めた。

 

▼その18につづく…

創世の竪琴・番外編【闇の紫玉】INDEX

【創世の竪琴】に登場する黒の魔導師(闇王)ゼノーの物語です。 紫の瞳を持って生まれたばかりに、周囲から疎まれ、幼くして放浪し逃げまどうゼノーとリーの双子の兄弟。 迫害されて窮地に陥ったゼノーを暖かく迎 ...

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