闇の紫玉

闇の紫玉/その34(完)・闇王誕生

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肉親のきずなをも完全に断ち切ったゼノーは、ただひたすら自分を導いてくれる銀玉の後を追う。

闇の紫玉、その34(完)・闇王誕生

このページは、異世界スリップ冒険ファンタジー【創世の竪琴】の番外編【闇の紫玉(しぎょく)】のページです。
闇王となったゼノーのお話。お読みいただければ嬉しいです。
異世界スリップ冒険ファンタジー【創世の竪琴】の番外編【闇の紫玉(しぎょく)】、お話の最初からのINDEXはこちら

闇の貴石

沼の底を、再び銀玉の後を追って数十分、ゼノーの目の前には黒銀の直径二メートル程の切り株があった。
銀玉は切り株の上で円を描いている。

「切り株の上に乗れって事ですね。」

ゼノーは切り株の中央に立った。
すると、銀玉は、その銀の光で五芒星を描き始める。
そして、すうっと再びゼノーの指に嵌まると、その輝きを増していく。

ゼノーをも包み込み、辺り一面その光で明るくなった時、その光に同調するように切り株の五芒星が輝き出した。

しばらくして指輪の輝きは収まるが、五芒星の光がゼノーを囲み、沼を切り裂くように真っ直ぐ上に伸びていく。

そして沼の漆黒の色と混ざり合うかのように、その銀色の五芒星の柱は黒銀となった。

しばらくして、その五芒星は徐々に薄れていき、そして完全に無くなると、そこにあったゼノーの姿も消えていた。

五芒星により転移したゼノーの目の前には、漆黒の闇の中に浮かぶ、紫銀の輝きを放つ闇の貴石があった。

それは、長い道のりの終点、闇の結晶、男神ラーゼスの負の心、闇の世界の創世主。

じっと見つめるゼノーの頭に低い声が響く。

『よく来た、我が半身、ゼノーよ。
我が意思を次ぎ、我が世界、この闇の世界を安定へと導くがよい。
私が闇の泥より作った、私の肉体である前闇王が消滅してから、早くも千年の時が過ぎた。
その間、この闇の世界は我が力を、そしてディーゼの力を受け、闇の活力とする王が不在であった。
故に、この世界は崩壊を始めた。
元より太陽神の手助けがあるはずもなく、破滅へと向かうばかりだった。
が、それもお前という新しい闇王を迎え、崩壊は、終局を迎えるであろう。
いや、お前の持つ未知なる力により、闇の世界は今より更に大きくなるかもしれぬ。
さあ、私に触れるがよい。私はお前に更なる力を与えよう。
その力をもって病んだこの世界を救うがよい。
さあ、ゼノー、我が半身よ。』

ゆっくりとゼノーは闇の貴石に手を延ばす。ゼノーの瞳の色、紫の貴石に。

貴石は、ゼノーの手を待ち焦がれているかのようにその輝きを増していく。

今こそ真の闇王に。
闇王としての力をこの手に、と心の中で呟きながら、ゼノーはそっと貴石に触れた。

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闇王誕生

「うわぁっ!」

ゼノーが触れた途端、貴石は眩い紫銀の光を放った。

それは、徐々に赤みを増していき、それに同調するかのように、ゼノーの瞳も赤く妖しい輝きを放っていった。

-ドクン!-

ゼノーの心臓が大きく打つ。
血管という血管の中を流れる血液が煮えたぎっているかのように思えた。
内から煮えたってくるように身体中が熱い。

身体がこの熱で溶けてしまうかもしれない、とゼノーが思った時、すうっと貴石の輝きが失せた。

そして、ゼノーの瞳も元の紫色に戻り、身体の熱さも徐々になくなっていった。

が、貴石の変化は、それで終わりではなかった。

続いて貴石は、その色を徐々に闇色へと染めていった。
ゼノーの瞳もまた同じように闇色へと変化していく。

先程の熱さの代わりに今回は、気持ちのよい冷たさがゼノーの全身を駆け巡っていた。ゼノーはその身を貴石に任せていた。

「ふう・・・」
貴石から手を離すことができたゼノーは、大きな溜息をついた。

『さあ、行くがよい、ゼノー、我が半身よ。
私は常にお前と共にある。
私はお前の力の源。私はディーゼからの力をお前に送る者。
闇の活力、魔法の源、この闇の世界の創世主。
私の意思はお前の意思であり、お前の意思は私の意思である。
心に問うがよい、さすれば、私はお前の問いに答えるだろう。
ゼノーよ、我が愛すべき闇の住民たちがお前を待っておる。
すでに暗黒の渦に巻き込まれし場所は元には戻らぬが、その渦を閉じ、崩壊がこれ以上増えるのを一時も早く阻止せねばならぬ。』

「元に戻すにはどうしたらよいのですか?」

『そうするにはディーゼのイヤリングが必要となり、それには、ディーゼの意に適う娘が必要となる。
が、今は阻止するだけでよい。・・行くがよい、我が半身よ。』

「そうですね。まず阻止しなくては。
それに闇の力を強め、人間どもをこの世界から排除しなくては。」

ゼノーは自分にそう答えると、暗黒の渦が逆巻く第四層に戻った。

暗黒の渦は第七層から第四層まで発生していた。

ゼノーはまず、その渦が一番大きい第四層から始めた。

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闇王の力

暗黒の崩壊の渦、それは、闇の世界を片っ端から吸い込んでいた。

ゼノーはその強大な引力と戦いながら、その真正面に立つと、その左耳に下がった竪琴のイヤリングを外し両手に持ち、精神を集中していった。

ゼノーが手に持ったそのイヤリングも、そして右側の剣のそれも、手に入れた時の黄金ではなく、闇王の物となったそれは、今や、黒銀の輝きを放っていた。

ゼノーの瞳が徐々に赤みを増していく。
心臓の鼓動が一際大きくなり、血が沸き立ってくる。

腰まである銀色の長い髪が少しずつ逆立ち始め、ついにはたてがみのようにゼノーの周りを覆う。

同時にその大きさを増し、自分の長身大となった竪琴をゼノーは奏で始める。

するとその音色は黒銀の光の玉を作り始め、それは徐々に大きくなっていった。

「やああああっ!」
ゼノーの2倍の大きさとなった黒銀の玉を、ゼノーは暗黒の渦に向かって放つ。

-シュオオオオオオーーー・・-

黒銀の玉を飲み込んだ暗黒の渦は、ゆっくりと縮んでいき、そして、無くなった。

が、やはり破壊された所は何もなく、ただ暗黒の異空間が広がっているのみ。
闇の住民と言えどもそこに住むことはおろか、二度と足を踏み入れる事さえもできないだろうと思えた。

ゼノーは悲しげにその空間をしばらく見つめていたが、まだしなくてはならない所があった事を思い出し、次ぎなる場所へと急いだ。

そうして、暗黒の渦を全て消滅させると、ゼノーは第七層に浮かぶ浮遊城へとその身を飛ばした。

懐かしい顔と再開

(ブラコスはいるだろうか?シアラはまだ魔方陣の中央に座したままなのだろうか?)

浮遊城の正面に立ち、輝きを放つ紫水晶で造られたそれを見上げながらゼノーは思っていた。

-ギギギギギー-

正面の大扉がゆっくりと開くと、そこには、ブラコスが立っていた。

「ブラコス。」

彼は恭しくゼノーに礼をとる。

「ご立派になられて。やはりこのブラコスの目に狂いはありませんでした。
人間界からお連れしたかいがございました、ゼノー様。」

ブラコスは、涙の溜まった自分の目をそっと手で拭うと、ゼノーに向きなおした。

「玉座の間で、主だった者が闇王様をお待ちしております。
玉座が闇王様を待っております。・・さあ、ゼノー様。」

再び礼をとったブラコスは、その大きな黒い手をゼノーに差し出した。

その手に自分の右手を重ね、ブラコスに微笑んだゼノーはゆっくりと歩き始めた。

 

-闇の紫玉・完-
最後までお読みくださりありがとうございました。m(__)m

創世の竪琴・番外編【闇の紫玉】INDEX

【創世の竪琴】に登場する黒の魔導師(闇王)ゼノーの物語です。 紫の瞳を持って生まれたばかりに、周囲から疎まれ、幼くして放浪し逃げまどうゼノーとリーの双子の兄弟。 迫害されて窮地に陥ったゼノーを暖かく迎 ...

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