闇の紫玉

闇の紫玉/その33・完全なる決別

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太陽神殿で女神ディーゼから科せられた闇王となるべく試練を難なく終え、ゼノーは再び闇へと帰る。心地よい闇へと。

闇の紫玉、その33・完全なる決別

このページは、異世界スリップ冒険ファンタジー【創世の竪琴】の番外編【闇の紫玉(しぎょく)】のページです。
闇王となったゼノーのお話。お読みいただければ嬉しいです。
異世界スリップ冒険ファンタジー【創世の竪琴】の番外編【闇の紫玉(しぎょく)】、お話の最初からのINDEXはこちら

幸せそうな弟との再会

闇世界へ戻ったとほっとしたその次の瞬間、不意に周りが明るくなった。
その眩しさにゼノーは思わず細めた目に手をかざす。

そこは、沼の中でも水中でもなかった。
どこかの泉の畔にいつの間にか立っている自分にゼノーは気づく。

「キャッ、キャッ・・あははははっ!」

子供の笑い声がする。ゼノーが辺りを見渡していると、十歳くらいの赤毛を左右で三つ編みにした少女が森の中から勢い良く走ってきた。

-ボスッ!-

後ろを振り向きながら走ってきたその子は、勢い余ってゼノーにぶつかった。

「ご、ごめんなさい。」

転んだその少女はゼノーにそのまん丸の緑の瞳を向けて謝ると、慌てて起き上がり衣服に付いた砂をパンパンと勢い良く払った。

「ヨーキム、だから走っちゃいけないって言っただろ?」

少女を見ていたゼノーは、聞き覚えのある少年の声にはっとしてその方を見た。

森の中からやはり10歳くらいの少年が藪をかけ分けながら出てきた。

「そんなに急ぐ事ないんだから。」
と、ゼノーと少年の目が会った。

2人はしばらく呆然とお互いを見つめ合う。

風にさらさらなびく銀色のショートカットの髪、真っ青な瞳、少年は間違いなくリーだった。

ゼノーは思いがけないこの出逢いに声もでなかった。
ただ、じっと見つめていた。

が、その表情は驚いている事など微塵も表れず、穏やかだった。

リーもまた驚いていた。
目の前にいる青年は確かにゼノーよりずっと大人だった。

ゼノーであるはずがない、が、長さは随分長いが、自分と同じさらさらの銀の髪、そして何よりも青年の瞳がゼノーのあの紫の瞳のそれそのものだった。

「あ・・あの・・・」
立ち止まったリーもまた言葉を無くし、じっとゼノーを見つめていた。

「どうしたの、リー?」
ヨーキムが不思議そうな顔をして2人の顔を交互に見た。

年齢は随分差があるが、その顔つきが、あまりにも良く似ていた為だ。

「兄様・・・」
しばらくして、か細い声で呟いたリーは、全身が震え、真っ青な顔をして今にも倒れそうに見えた。

「リー、精霊たちが騒いでるよ。」
ヨーキムが辺りを見渡しながら言った。
が、リーの耳には何も入らない。

「リー、私じゃ何て言っているのか分からないよ。
リーなら分かるでしょ?」

ヨーキムがリーに駆け寄ってそう言っても、リーには精霊に耳を傾ける余裕など全くなかった。
相変わらず、呆然とゼノーを見つめていた。

その驚愕し恐怖の目で自分をじっと見つめるリーに、ゼノーは失望感と絶望感を味わった。

(あなたまで私を悪魔扱いするのですね。)

そう思ったゼノーには、そのリーの本当の気持ちは分かるはずがなかった。

リーは、最後にゼノーと別れた時、あの時、結果としてゼノーを見捨てて逃げた事に、罪悪感を持っていた。
たとえ、逃げろとゼノーが言ったにしろ、一人にするべきではなかったのだと。

ゼノーは決して許してはくれないだろうと思っていた。

そして、今、目の前にゼノーとそっくりな青年が立っている。
リーはその罪悪感とゼノーに対するすまなさで一杯だった。

と、同時にあの時の恐怖が蘇り、自然と震えてきてしまったのだ。
その紫の瞳を懐かしくそして愛しくは思っても、悪魔の瞳などとは、思うはずのないリーだったのだが。

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完全なる決別

「忘れなさい。」

ゼノーは二人の頭に手を乗せ、静かに呟いた。
すると、ゼノーはすうっと自分の身体が浮き上がるのを感じた。

リーとヨーキムが下の方に見える。
二人はゼノーと会った事を忘れ、泉で楽しそうに遊び始めた。

「キャッ、キャッ、キャッ!」

「あははははっ!ほーら、冷たいぞ!」

「やったわね!リーも濡れちゃえ!」

泉の浅瀬で無邪気に遊ぶ2人。

その様子を見ていても、もはやゼノーは何も感じなくなっていた。

そんな2人の姿は少しずつ薄れていき、下へ沈み始めたゼノーは、自分が再び漆黒の沼の中にいるのに気づいた。

それからどのくらい沈んだだろう、ようやく沼底に着いたゼノーは、前方に銀玉が光っているのを見つけた。

「やはり道はあっていたんですね。」
リーへの想いを完全に断ち切ったゼノーは、そう呟くと自分を待っているように感じる光り輝く銀玉へと歩を進めた。

 

▼その34につづく…

闇の紫玉/その34(完)・闇王誕生

肉親のきずなをも完全に断ち切ったゼノーは、ただひたすら自分を導いてくれる銀玉の後を追う。 Contents1 闇の紫玉、その34(完)・闇王誕生1.1 闇の貴石1.2 闇王誕生1.3 闇王の力1.4 ...

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