闇の紫玉

闇の紫玉/その32・太陽神のイヤリング

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神官・エンキムラマッスの呪文により、闇王への道が開かれ、全身を包み込んだ光と共にゼノーは、神官の部屋から消えうせた。

闇の紫玉、その32・太陽神のイヤリング

このページは、異世界スリップ冒険ファンタジー【創世の竪琴】の番外編【闇の紫玉(しぎょく)】のページです。
闇王となったゼノーのお話。お読みいただければ嬉しいです。
異世界スリップ冒険ファンタジー【創世の竪琴】の番外編【闇の紫玉(しぎょく)】、お話の最初からのINDEXはこちら

太陽神と女神ディーゼ

「これは?」

ゼノーは、今し方いた所とは全く違った部屋に立っていた。
目の前には目も眩むような黄金の彫像があった。

そして、その左右の台座にはクリスタルの入れ物があり、その中にはやはり黄金のイヤリングのような物が片方ずつ入っている。

右側のものには、剣がついており、左側のものには竪琴がついていた。

ゼノーはその黄金の彫像には見覚えがあった。
それは、水鏡の回廊で見た水柱でできた男神の彫像と一緒だった。

「これは・・太陽神、ラーゼス?」

『そうです。ここは、男神ラーゼスの神殿、太陽神殿です。』
彫像を見ていると、ふいに優しげな女の声がした。
慌てて部屋を見渡したゼノーだが、そこには誰もいない。

「太陽神殿・・しかし、確か太陽神殿は海底深く沈んでいるのではなかったですか?」

ゼノーは、ドワーフの遊園地で会ったドラキュラにそう聞いた覚えがあった。

『そうです。ここは確かに海底です。
でも、神殿の中までは、浸水しておりません。』

「あなたは、どなたなのですか?・・もしかすると、女神ディーゼ?」

『そうです。』

「では、あなたが私をここへ連れて来たわけなのでしょうか?」

『そうです。そして、七つの私の涙の結晶、それらを通して話しているのです。』

「では、ここに闇の貴石が?」
『いいえ、ここは太陽神殿。闇の者は入れません。』

「しかし、現に私がこうして。」

『今はちょうど日食なのです。
皆既日食の今日この時間だからこそ、そして、ムーンティアを持っているからこそ、あなたは入れたのです。』

「しかし、何の為に?私は闇の貴石を手に入れなければならないんですよ。」

『そうです、ですからその為にここへ連れて来たのです。』

「その為?」

『そうです。・・闇の貴石は男神ラーゼスの負の心を封じたもの。
元はと言えば、同じラーゼスなのです。
・・・私にとっては闇も光もありません。
どちらも愛しいラーゼスなのです。
あなたをここへ連れて来たのは、闇の貴石に触れる前に、その資格があるかどうかを問う為です。』

「資格があるかどうか?」

『そうです。男神の彫像の左右にあるイヤリング。
それは、色こそ違えど私の物と同じなのです。
負の心を封じたラーゼスと私は、そのイヤリングを共に使い、人間の世界を創造しました。
私には、人間の世界もラーゼスの悪の心が創造した闇の世界も共に愛しい。
私にとって、太陽神も闇の貴石もラーゼス。
ですからあなたがその闇王になるにふさわしいかどうか、そのイヤリングで試してみたいのです。
今後あなたが闇王となり、私の力である、ムーンパワーを受けるに相応しいかどうかを。』

「イヤリングで試す?」

『そうです。もしあなたが闇王となる資格があれば、そのイヤリングを手にする事ができるはずです。』

「もし、なければ?」

『触れた時点で、消滅するでしょう。』

ゼノーは、しばらくイヤリングを見つめたまま思案していた。

闇王となるための資格

「迷っていても仕方ない事ですね。
私には他に取るべき道はないのですから。」

ゼノーは、まず右の台座に行くと、滑り込ますようにそのクリスタルの容器の中に手を入れた。
もう少しでイヤリングに触れるという所で一瞬その手が止まる。

そしてやおらイヤリングを掴んだ。

その一瞬、ゼノーは全身を熱い物が走ったような気がした。
が、消滅はしなかった。

消滅はしない、と確信したゼノーは、すぐ左側の台座にも行き、今度はすっとそのイヤリングを手にした。

「これでよいのでしょうか?」
姿の見えない女神に見えるように、ゼノーはイヤリングを両の手の平に乗せた。

『耳に着けてごらんなさい。』
ゼノーは剣のイヤリングを右耳に竪琴のイヤリングを左耳にそれぞれ着けた。

「どうやら私は合格のようです。
で、これからどうするのでしょう?」

返事は何もなく、ゼノーの指輪の中のムーンティアが再び輝き始めた。

そして、その光がゼノーを包み込むと、その黄金のイヤリングも共に輝き始めた。
そうして、ゼノーの姿と共にそこから消えた。

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闇に帰る

次にゼノーが目にしたのは、一歩先も見えない暗闇だった。

「闇の世界へ戻ってきたのか?」
ゼノーは、注意深く一歩足を出した。

すると、ムーンティアの指輪がするりとゼノーの指から外れ、道案内するようにゆっくり飛び始めた。
ゼノーはそれを見失わないよう着いて行く。

-ズブズブズブ・・・-

突然、沼地になった。

銀玉のみ見て歩き続けていたゼノーはそのまま腰まで沼に浸かり、その一瞬下を向いたゼノーが顔を上げた時、銀玉は何処にも見当たらなかった。

「どこに行ったのだ?」
辺りを見回していても、一筋の光さえ見当たらない。

と、突如、沼から無数の漆黒の手が伸びてきて、ゼノーを掴むと引きずり込もうと引っ張る。
同時に、上空から一筋の金色の光がゼノーの頭上に下りてきた。

まるで、こちらに来いと言わんばかりに。

「どちらに行くべきなのか?」

相変わらず、銀玉は見当たらない。これは自分で決めろということか、と判断したゼノーは、どちらを取るべきか、と考えた。

「私は、闇王。闇に住まう者。
眩いだけの黄金など私の趣味ではない。
漆黒の闇こそ、私に安らぎを与えてくれる。私の世界。」

事実、ゼノーは沼から出てくる手には、少しも嫌悪感を感じなかった。
それよりも切実に自分を必要としてくれているという感じを、それらから受けたのだ。

-とぷん-

一挙にゼノーは、群がる漆黒の手と共に沼の中へとその身を沈めた。

そこは、漆黒の沼、沈み始めたゼノーの周りには、もはや漆黒の手はなく、何処へともなく姿をくらましていた。

どんどん、どんどんゼノーは沈んでいった。

まるで限度を知らないように、真っ暗な沼の中を、下へ下へとゆっくり下がって行った。

不思議にも息苦しくはなかったが、その漆黒の色が自分を染めていくような感じをゼノーは受けていた。

 

▼その33につづく…

闇の紫玉/その33・完全なる決別

太陽神殿で女神ディーゼから科せられた闇王となるべく試練を難なく終え、ゼノーは再び闇へと帰る。心地よい闇へと。 Contents1 闇の紫玉、その33・完全なる決別1.1 幸せそうな弟との再会1.2 完 ...

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