闇の紫玉

闇の紫玉/その30・ミイラの願い

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砂漠にある遺跡に入ったゼノー。
だが、内部は暗くしかも迷路。地下への入口さえ、なかなか見つかりそうもない。

どうしたものかと行き止まりの部屋にあったイスに腰を下ろして考え込んでいるゼノーの頭に一人の女性の声が響く。

闇の紫玉、その30・ミイラの願い

このページは、異世界スリップ冒険ファンタジー【創世の竪琴】の番外編【闇の紫玉(しぎょく)】のページです。
闇王となったゼノーのお話。お読みいただければ嬉しいです。
異世界スリップ冒険ファンタジー【創世の竪琴】の番外編【闇の紫玉(しぎょく)】、お話の最初からのINDEXはこちら

ミイラの願い

「ここは?」

再びどう進んだのか分からなくなったが、とにかく、行き止まりである突き当たりの扉を開けると、ゼノーはその部屋にあるイスに腰掛けた。

「さて、どうしたものか・・・?」
闇移動を試みてもどこも同じような為、結局自分がどこにいるのか分からなくなるのである。

ゼノーは、考え込んでいた。
すると、目の前を何やら白い靄のような物が横切った。

「うん?何なのだ?」
その靄は壁の中へ消えるように入っていった。

いくら目を凝らして部屋中を見ても、何も見えない。

「見えないのなら感じればいいのですね?」

ゼノーは目を閉じて、五感を研ぎ澄ました。

「闇王様・・・闇王様・・・」
しばらくそうしていると、細く弱々しい声が聞こえてきた。

「誰ですか?」
目を開けて見ると、部屋には誰もいない。
ゼノーは再び目を閉じた。

「闇王様・・・」
脳裏に女の顔をした蜘蛛が写った。

「お前は?」
目を閉じたままゼノーは言う。

「私は、ランチュラ。どうかお願いです。
レイミアの時のように、私にも闇王様の血をいただけないでしょうか?
ほんの一滴でよいのです。
御慈悲です、どうか、闇王様の血を。
私も生き返らせて下さいませ。」

「レイミアを知っているのですか?」

「はい。ここにはいろいろな魂が集まってきております。
レイミアも一時はそうだったのです。
ああ、闇王様、お願いです。生き返りあの人に会いたいのです。
今一度、あの人の元に行きたいのです。」

「あの人とは?」

「水蛇が守る沼に住む巨人グレンデルです。」

「グレンデル?・・しかし、彼は・・・」

そこまで言って、グレンデルとモーラのことは言うべきではないと咄嗟に判断したゼノーは口ごもる。

「彼は?彼がどうしたのですか?ご存じなのですか?」

「い、いや、ここへ来る前に会っただけで、別に・・・」

「・・良い人がいるのですね、あの人に。
そうでしょう?闇王様。
知っています、あの人がとても惚れやすい人だと。」

「ランチュラ・・・」

「いいのです、それでも。傍にいられるだけで。
・・私は、あの沼の側の木に住んでいました。
ある日、鳥に食べられそうになり、逃れようともがき、下に落ちてしまったのです。
その時、丁度そこを彼が歩いていたのです。
もう少しで彼の大きな足が、地面を這っている私を踏み潰すところでした。
でも、彼は小さな私に気づき、足を避けてくれたのです。
そればかりか、私を潰さないようそっと摘んで『もう落っこちんなよ。』と言って木の枝に乗せてくれたのです。」

(たとえ蜘蛛でも女なのだとグレンデルは本能で嗅ぎ分けたわけか。)
ゼノーは、グレンデルの言葉を思い出しながら、一人納得する。

「それからなのです、私はいつも沼の上に張り出した枝にぶら下がって彼を見ていました。
それである日、突風に吹き飛ばされてそこから落ちてしまい、溺れてしまったのです。
私は、夜間あの沼を覆う鬼火と一体化し、自分の亡骸を持ってここへ参りました。
後生です、闇王様、あの人にお会いしたい・・せめて、せめて、この想いを告げたい・・いいえ、あの時のお礼だけでも言いたいのです。」

「蜘蛛でなく、闇の者として生まれ変わりたいという訳ですね。」

「はい・・そのイスの下に私の亡骸があります。
それに、闇王様の血を。
そうすれば、私は再び生を受け、闇の者として生きることができます。
お願いです。」

「グレンデルがあなたを好くかどうかは、分からないのですよ。」

「それでも良いのです。
・・このままでは、私は永遠にこの遺跡の中を彷徨わなければなりません。
ここは、様々な者の住処となっております。
魂だけになった今でも、自分より力のある者に追いかけられる毎日です。
現世に想いを残してきた者の罪なのでしょうか。
生まれ変わる事も出来ず、毎日が地獄のようです。
レイミアは弱い私をよく庇ってくれました。
生き返ってからも、闇王様の事を教えてくれました。」

「ここは、現世に想いを残した者の魂の住処なのですか?」

「いいえ、そうでない魂もおります。
それにいろいろな闇の者も生息しておりますし。」

「・・あなたは、地下への入口をご存じですか?」

「はい、闇王様。地下へは行った事はありませんが、入口は知っております。」

「では、私の血を与える代わりに、そこまで案内願えますか?」

「も、勿論です。ありがとうございます、闇王様。」
ゼノーの瞼に写るランチュラは涙を流して喜んだ。

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ゼノーは目を開けると、イスから立ち上がり、その下にあるという蜘蛛の死骸を探した。

「これか。」
ほどなくゼノーは、埃にまみれ、かさかさに乾いた十センチ程の黒蜘蛛の死骸を見つけた。

その死骸をそっとイスの上に置くと、ゼノーは自分の小指を切って、その死骸に血をかけると、ゼノーの血は、その死骸に溶け込むようにしみ込んでいく。

ひからびた全身が徐々に生気を取り戻し、命を吸い込んでいくかのように丸みを帯びてくる。
そして、しばらくするとその前足がぴくっと動いた。

徐々に大きくなると30cm程の大きさになると同時に、蜘蛛の頭の部分が変化し人間の女の顔となり、それから徐々に胴体も人間の物へと変化していった。

そして、数分後、ゼノーの前には、白い肌、長い黒髪と黒い目の美しい女が立っていた。
胸のはだけた真っ黒なドレスがその曲線美を露にしている。

「黒いドレスがとてもお似合いですよ。」

「ありがとうございます、闇王様。」
ランチュラは深々とゼノーにお辞儀をし、悩ましいまでの微笑みを浮かべた。

「で、では、早速地下への入口へ。」
一瞬どきっとしたゼノーは、多少焦りながら言った。

「はい、闇王様。こちらでございます。」
ランチュラは、自分のその長い髪を、呪文で後ろに束ねると、扉を開けゼノーが部屋から出るのを待った。

 

▼その31につづく…

闇の紫玉/その31・遺跡の神官

案内人を得て、地下へと進むことができたゼノー。 が、またしてもそこは迷路になっていた。どこを通っていったら遺跡の神官のところへたどり着けるのか全くわからない。 Contents1 闇の紫玉、その31・ ...

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