闇の紫玉

闇の紫玉/その27・成長の繭

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ドワーフの遊園地で、思いっきり子供になって(子供心を取り戻して)遊び回ったゼノー。
その最後のミラーハウスの姿見には、生まれたばかりからの自分の姿が映っていた。

闇の紫玉、その27・成長の繭

このページは、異世界スリップ冒険ファンタジー【創世の竪琴】の番外編【闇の紫玉(しぎょく)】のページです。
闇王となったゼノーのお話。お読みいただければ嬉しいです。
異世界スリップ冒険ファンタジー【創世の竪琴】の番外編【闇の紫玉(しぎょく)】、お話の最初からのINDEXはこちら

世界樹の根元

「ここは?」

ゼノーの目の前には、天まで届かんばかりの黒銀の大木がそびえ立っていた。

大きく枝を張ったその大木は緑銀の葉を持っていた。
その小島の周りはどこまでも青く澄んだ泉が広がっている。

「・・世界樹?」

「さようでございます、闇王様。」
ふと呟いたゼノーの声に、優しげな声が応えた。

世界樹の幹の前、ゼノーの目の前に銀色の光が現れ、30十センチくらいの大きさの3つの人型を作っていった。

そして、しばらくするとそれらは、緑銀の薄衣を纏った三姉妹となった。
銀色に輝く四枚の薄羽、黒銀の髪と瞳、真っ白な肌をした美しい妖精の姉妹だった。

「初めまして、闇王様。」
3人は同時にゼノーに挨拶をした。

「は、初めまして。」

「私は、ウルズ、運命を決める者。」

「私は、ヴェルサンディ、授ける者。」

「私は、スクルド、死を定める者。」

3人はゼノーに額ずくと順序よく自己紹介をした。

「事情は水魔から聞きました。」
3人は再び声を揃えて言う。

「あとほんの少しです。さあ、瞳を閉じて下さいまし。」

そのメロディーとも言える心地よい声にゼノーは魔法にでもかかったように、ゆっくりと瞳を閉じた。

3人はそれぞれゼノーの銀色の髪を手に持つと、ゼノーの周りを飛び始めた。
不思議にもゼノーの髪は伸び続け、その限度を知らなかった。

そうして、ついにはゼノーの身体は、三姉妹によって作られた銀色の繭にすっぽりと包まれた。

三姉妹は、黒銀に輝く杖を操り、その繭を静かにそこに横たえた。

そして、その杖を振りながら繭の周りを飛び、黒銀の光を繭に浴びさせる。
繭はその光に呼応するかのように銀色の光を放ち、鼓動し始める。

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繭の中での年月

その中でゼノーは、忘れ去った過去に戻っていた。

自分の生まれた直後、荒野の一軒家での平和な生活と崩壊、リーと狼の親子との初めての旅、ソマー城での出来事、山奥を目指しての旅、熱が出て臥せっていた事、その間のリーとシャンナの様子、村人の仕打ち、ブラコスとシアラ、闇の世界での出来事・・・直接自分が体験しなかった事さえも全て、手に取るように体験していた。

喜びと悲しみと痛み、そして、憎悪を。

それから真っ暗になり、しばらく沈黙がゼノーを覆った。

その沈黙の中でゼノーの煮えたぎった思いは少しずつ冷め、落ち着きを取り戻してくる。ゆっくりと時の流れに癒されるように。

すると、急に眩い光がゼノーを覆う。
その眩しさにゼノーは目を細め、それを遮るために手をかざした。

「ごきげんうるわしゅう、闇王様。」

三姉妹の声が聞こえ、繭を破って出たゼノーは、ドワーフのミラー屋敷の最後の姿見に写っていた姿、大人となっていた。

「お急ぎ下さい、闇王様。」
三姉妹は声を揃えて言う。

「あれから5年たっております。
ヴォジャノーイ一族が今か、今かと、闇王様をお待ちしております。」

「5年?」
意外な事にゼノーは聞いた。

「はい、ドワーフの遊園地で3年、この繭の中で2年経っております。」

「で、では、女王は?」

5年も経っていた事に驚き、女王を心配して聞くゼノーに三姉妹は悲しげに答えた。

「4年半前にお亡くなりになられました。」

「では、私が来るとすぐ?何故もっと早く教えてくれなかったんですか?」

「お教えしても、どうしようもない事なのでございます。
闇王様が無事ご成人あそばされる為には、5年という歳月がどうあっても必要だったのでございます。」

「彼女たちはすぐさま成長させれると思ったのでございましょう。」
ウルズが言った。

「でもそれは、普通の者の場合。
私たちがその寿命を定める事ができる者の場合。」

ヴェルサンディが続けた。

「私たちが死を授けれる者の場合。」
スクルドが言った。

そして、再び三人、口を揃えて同時に言う。

「闇王様はこの世界の源。
私たちではその運命は到底量り得る事は出来ません、触れる事さえ出来ないのでございます。
それ故、闇王様のご成長には、五年という歳月が必要だったのでございます。」

「しかし、女王との約束が・・・」

「闇王様、今の闇王様は昔の闇王様ではございません。
そのお力も昔のものとは雲泥の差となっておりますでしょう。
ですから、ヴォジャノーイ一族の中の一人を選んで、闇王様の気をその人にお与えになれば、その人は女王となられるはずでございます。
それで全て解決となります。
新女王は自分の相手を自ら求めて水面へと出て行くでしょう。
そして、闇王様はムーンティアを探す旅をお続けになられればよいのです。」

三姉妹は言い終わると、ふっとその姿を消し、その後にはムーンティアが光りながら空中に浮いていた。

ゼノーはそっとその銀玉を摘むと指輪にしまった。

「感謝します、ノルニル三姉妹。そして、リカルド、ドワーフ一族。」

記憶が新しいドワーフの遊園地での思い出。
遊園地を作ってくれたドワーフ一族と、己の成長のために一緒に遊んでくれたリカルドにその場で礼を言うと、己の帰りを待っているだろうヴォジャノーイ族の宮殿へとその身を飛ばした。闇に乗せて。

 

▼その28につづく…

闇の紫玉/その28・黄金の砂漠

世界樹の女神の三姉妹による不思議な魔法で、心身ともに大人に成長したゼノーはさっそくヴォジャノーイ族の元へと移動した。 Contents1 闇の紫玉、その28・黄金の砂漠1.1 銀色の空と黄金の砂1.2 ...

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