闇の紫玉

闇の紫玉/その23・ひとめぼれの2人

更新日:

魔の気でみごと巨人グレンデルを沼から飛び出させたゼノー。
勢い余って空中に飛び出たグレンデルの巨体は、岸辺で待っていたダークエルフのモーラ姫の上に落下する。

闇の紫玉、その23・ひとめぼれの2人

このページは、異世界スリップ冒険ファンタジー【創世の竪琴】の番外編【闇の紫玉(しぎょく)】のページです。
闇王となったゼノーのお話。お読みいただければ嬉しいです。
異世界スリップ冒険ファンタジー【創世の竪琴】の番外編【闇の紫玉(しぎょく)】、お話の最初からのINDEXはこちら

空中に飛び出す巨体の落下地点

(飛べ・・・グレンデルの身体よ、沼から飛びだせーっ!)

必死の思いで、ゼノーは心の中で叫んでいた。

が、どうやら駄目のようだ。
ゼノーは、一端集中を止めると、自分を落ちつかせるため、両手を下ろすと目を閉じた。

「どうした、やらぬのか?」

身動き一つしないゼノーに、グレンデルがしれを切らして言った。

「いいえ、これからです。
お待たせしてしまってすみません。」

じっとして自分の気を探り、今度はいける!と自信をつけると、ゼノーはゆっくりと目を開け、再びその両手をグレンデルに向けた。

「行きますよ!」

「ああ、勝手にやってくれ。」
あぐらをかいたまま、目も開けずグレンデルは投げ捨てるように言った。

「行けーーっ!!」

ーシュゴーーーーー・・ドコッ…ゴゴゴゴゴォォーーー!ー

ゼノーが叫んだと同時に、グレンデルの巨体は館の天井を突き抜け、沼を突き抜け、空中に飛び上がった。

ーザッパーーーーン!-

「わっわっっわあああああ!」

まさかと思っていた空中のグレンデルは焦った。
そして、その身体が勢い良く地面に落下し始めた時、その落下地点にモーラがいるのに気づいた。

「きゃあああ!」

余りにも咄嗟のことで、モーラは動けなかった。
もう駄目、押しつぶされると思い、グレンデルの影の下、彼女は頭を抱えてうずくまった。

「あら?」
彼女はそっと目を開けた。

影はそのまま彼女を覆っていたが、落ちてこない。
不思義に思って見上げる彼女にグレンデルが苦しそうに話しかけた。

「お、おい、早く退いてくれ。も、もう、持ちそうにない・・・早くっ!」

何と、グレンデルは、必死の思いでブリッジを作っていた。

「は、はいっ!」
慌ててその影から走り出たモーラにほっとして、グレンデルは地響きを起こし、そこに沈んだ。

ーズ・ズズン!ー

「あ・・あの、大丈夫ですか?」
地面にのめり込みじっと倒れているグレンデルを覗き込み、モーラが心配して尋ねる。

「ああ・・・・・」

「起きれますか?」
その間に沼底から上がってきていたゼノーがグレンデルに聞く。

「ああ、大丈夫だ。」
ゆっくりと身体を起こし、そこに座ったグレンデルはその間に湖から出たゼノーを見た。

「闇王様・・・か。本物の。」
ようやくグレンデルは確信していた。

「今まで偽物が多く来たという事ですか?」

「そうだ。」

「で、ムーンティアの事を話してもらえますね?」

「いいだろう。」
グレンデルはゼノーの前に畏まると話し始めた。

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惚れやすい巨人

「確かに、俺の手元にあった。が・・」

「が?」
真っ赤になったグレンデルは頭を掻いた。

「俺は、どうも女に弱くてな、男なら一発でのして食べてしまうんだが・・それで、その・・ヴォジャノーイ族の、女にやってしまった。」

「ヴォジャノーイ族?」

「そうだ、とても綺麗な女だった。
指輪にするから譲ってくれ、と。オレとの誓いの指輪にすると言ってた。」

「ちょっと待って!ヴォジャノーイ族って言ったら、蛙の顔をした半魚人よ!
あなた騙されたんじゃない?化けるのがとっても上手いって聞いた事あるから!」

「本当か、それは?」
驚いたグレンデルが叫ぶ。

「多分、そうだと・・・」

「くっそう!なんてこった!騙されたとは!この俺様を騙したなんて!あの、アマっ!」
グレンデルは地団太踏んで悔しがった。

「人間を騙すのならまだしも、同じ闇の世界に住む者を騙すとは!
闇王様、是非あの腐れアマをこっぴどく罰して下さい!」

「わ、分かりました、分かりましたから、その大きな顔をそれ以上近づけないで下さい。」

真っ赤に怒った顔をゼノーにくっつけるようにして懇願するグレンデルに、ゼノーもたじたじ。

「だいたい女なんて言うもんは・・・」

「悪い女ばかりじゃないわよ!」
モーラがきっとグレンデルを睨んだ。

「あっ、ああ、すまん。あんたは?えーと、・・誰なんだ?」
ゼノーにモーラとの関係を聞くグレンデル。

「ダークエルフの姫君です。ですが、私とは一切関係ありません。」

「そう・・か。」
グレンデルはほっとしたように、モーラの顔を見た。

「そうだな・・悪い女ばかりじゃないだろうな。
・・・あんたは、とても優しそうだ。」

「な、何よ?急に?それに私はゼノー様の・・」
ゼノーはモーラが全部言わないうちに彼女の口を抑えた。

「ゼノー様の?」
グレンデルが首を傾けて聞く。

「い、いや、モーラはただ、城で世話になっただけで、それと、あなたが持っているらしいと教えてもらっただけです。」

ゼノーは焦りながら答えた。
その気がないのに思い込まれると始末が悪い。

「もう!ゼノー様っ!」

一瞬ゼノーを睨んだモーラだが、ゼノーから睨み返され、びくっとしてそれ以上言うのをやめる。
一緒に城で暮らすうちに忘れていたゼノーの恐さを、一瞬のにらみで思い出した。

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お互いにひとめぼれ?

「モーラ姫・・これ。」
グレンデルは嬉しそうに微笑むと、呪文でぱっと花束を出しモーラに差し出した。

「え?こ、これ、私に?綺麗!」
真っ赤になりながらモーラはその花束を受け取った。

「さっき落ちながら見た時から、そ、その・・・可愛い人だな・・・と。」

「それで、私を潰さないでくれたの?」

「あ・・ああ・・まぁ・・・」
グレンデルはその巨体を恥ずかしそうに、もじもじさせた。

「それで、そのヴォジャノーイ族はどこに住んでいるのですか?」

花束を挟んでお互い真っ赤になっているグレンデルとモーラの邪魔するようで、気が引けたゼノーだったが、聞かないわけにはいかない。

「この沼の底の方にある横穴が、奴らが住んでいる沼と繋がっているはずだ。」
グレンデルは、はっとしてゼノーを見ると答えた。

「それでは、案内願えますか?」

「勿論、と言いたいんだが、奴らの沼は第四層にあって、俺の魔力じゃ行けれないんだ。重圧で押しつぶされちまう。」

「では、その横穴の入口まで。」

「それなら合点承知!任せてくれ!・・それと・・あ・・あのその前に・・・」

「その前に?」
態度と言葉を改め、グレンデルは心配そうな顔で言った。

「あの・・私へのお咎めは?」

「咎めるつもりはありません。私も館を壊しましたしね。」

「あ、ありがとうございます!」

「良かったわね、グレンデル!」
グレンデルとモーラはお互いの顔を見合わせると微笑んだ。

「モーラ、第四層へ行ったら、多分ここには戻りません。
あなたは、城に帰りなさい。そして、父王によろしく伝えて下さい。」

「はいっ!」
元気良く答えるモーラに、その反対を予想していたゼノーは面食らった。

「私、グレンデルがここに戻ってきたら、一緒にお城に行きます。
いいでしょ、グレンデル?」

ゼノーからグレンデルに目を移したモーラは彼に微笑んだ。

「お、俺でいいのか?エルフと巨人だぞ?」
グレンデルは驚き、目を丸くした。勿論、ゼノーも。

「愛があるなら、種族の差なんてどおって事ないわ。」
グレンデルの顔を見てモーラは言い切った。
そして、真っ赤になってうつむいた。

「あ、あの・・・私、まだ子供だけど・・・グレンデルさえ嫌じゃなかったら。」

「モーラ!」
答える代わりにグレンデルはモーラの前に正座し、彼女の頭に手をやると、そっとその大きな手で包み込み、彼女の顔を自分の方に向けさせた。

もはや、二人には自分たち以外何も目に入っていなかった。グレンデルはモーラを自分の膝の上に立たせじっと見つめ合った。

「ごほん、ごほん!」
ゼノーが咳払いをして2人の注意を自分に向けさせた。

「お取り込み中、悪いんですが、横穴まで案内願えますか?」

「あっ、はい、はい。」
グレンデルはばつが悪そうに頭を掻くと、モーラを膝から下りさせた。

「グレンデル、待ってるから・・私…ここで……。」
モーラが熱い瞳で見送る中、ほっとしたゼノーと後ろ髪を引かれる思いのグレンデルは沼に飛び込んだ。

 

▼その24につづく…

闇の紫玉/その24・種の絶滅の危機

水中から第四層に入ったゼノー。 その水底に、巨人グレンデルからムーンティアをだまし取っていったヴォジャノーイ族の女性が住んでいるはずだった。 Contents1 闇の紫玉、その24・種の絶滅の危機1. ...

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