闇の紫玉

闇の紫玉/その14・魔物ハンター

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真の闇王となるべく魔界(闇世界)の探索を開始したゼノー。
そこには、魔界側からみれば異端の来訪者である人間がここの住人である魔物狩りを楽しんでいた。

闇の紫玉、その14・魔物ハンター

このページは、異世界スリップ冒険ファンタジー【創世の竪琴】の番外編【闇の紫玉(しぎょく)】のページです。
闇王となったゼノーのお話。お読みいただければ嬉しいです。
異世界スリップ冒険ファンタジー【創世の竪琴】の番外編【闇の紫玉(しぎょく)】、お話の最初からのINDEXはこちら

闇世界・第七層、侵略者は人間

ゼノーは第七層の大地に下りていた。

人間界にもっとも近い第七層は、戦いに巻き込まれる事が多く危険だとシアラから聞いてきたゼノーは、緊張していた。
それは、時に、人間界から霊力の強い戦士や修業僧、魔導士などが己の名を馳せる為に魔物狩りに来る為だった。

中にはそれを商売にしている者もおり、丈夫で寿命の長い魔物はかっこうの獲物となったのだ。

闇王さえいれば、例えいくら霊力が強くても、人間ごときが結界を越えて来るようなことはないのだが、ここ数年の間に、第六層まで下りれるようになってきていた。
それは、人間の霊力が上がったという訳はなく、とりもなおさず。闇の世界事態が弱まってきていることを示していた。

(ルチアから、よく魔王に立ち向かって世界を救う勇者の話を聞いたけど、まるっきり反対じゃないか。)

ゼノーは自分たちだけが正しいと思い込んでいる人間が憎く思えた。

彼らは何も悪いことをしていない、害を与えていない魔物まで、わざわざ修業をし霊力を高めてまでして、殺しにやって来る。

確かに人間界に行き、悪いことをする魔物もいる。
が、その事を口実にし、わざわざ自分たちの世界ではない所まで来て、静かに暮らしている魔物まで殺すことはない、狩ることはない、とゼノーは思った。

闇の世界にとっては人間こそが害を成す者、侵略者だった。

灰色の葉をつけた黒い木、黄色の土、灰色や茶の草、色は違ったがその形は人間界と同じであり、間違いなくこの世界ではれっきとした植物なのだから。人間界とは少しも違わず。

「キーキーキー!」

「何だ、こんな雑魚か・・これじゃ、高く売れねぇな。」

「そんな罠じゃ、それくらいのもんだぞ。」

「ペットくらいになるんじゃねーか?」

「そうだな、近頃貴族様の間じゃ、変わり種を飼うのが流行ってるらしいからな。」

何かの叫び声がして、そっちに駆けつけたゼノーの目の前には、ハンターらしき男が3人と、罠にかかり泣き叫び続けるプチデビルがあった。

少し様子を見ることにしたゼノーは、近くの木陰に身を潜めた。

「こんなもん飼ってどこがいいんだか・・・高貴な方のやることは、あっしらにゃ理解できねぇな。」

男の中の一人が逆さに吊るされたプチデビルを、棒でつっつきながら言った。

「キーッ!」
プチデビルは歯を剥いて怒ったが、どうする事もできない。

「全くだ!けど、そのおかげで商売が成り立つってもんだけどよ。」

「そうそう!・・・ところで、あのくそ坊主は何処に行きゃーがったんだ?
あいつがいねぇと帰れねぇんだけどよ。」

「どうせその辺の岩影で呑んでいるんだろうよ・・おっ、来た来た!」

ゼノーがいる方と反対方向から僧侶らしき男が千鳥足で歩いてきた。
脇には、自由になろうとばたばたと暴れているダークエルフをしっかりと抱えて。

「あの生臭坊主!・・・だけどダークエルフとは・・それもメスだし。高く売れるぞ。」

一人が呟く。

「おい、旦那、結構な獲物じゃないか。どうしたんだ?この辺りにゃいねーんだろ?」
他のもう一人が近づいてくる僧侶に大声で言った。

「ああ・・さっき勇者ご一行様ってのに会ってな。
下の層で捕まえてきたんだそうだ。
が、やはり下には強い魔物がいて、回復魔法のできる奴が死んでしまったとかで、命からがら逃げてきたらしい。
そこで、私がこのエルフと引き換えに回復してやった、と、こういう訳だ。」

この上なくご機嫌な僧侶は、得意気に言う。

「さっすがあ!」

「他にはなかったんですかい?」

「ああ、回復すると、すぐまた下の層に行ったよ。」

「はははっ!懲りなぇ奴らだな。」

「全くだ!」

わーっはっはっは、と全員で大笑いすると、エルフをからかい始めた。

「ちょっと若いが、あと2、3年もすりゃー値打ちがでるぜ。」

一人がその顎をひょいと持ち上げると、しげしげと顔を見ながら言った。

「いいや、このままでもロリコンのすけべ親父なら高く買うぜ。こりゃ、上玉だ!」

「んー、んー!」

手を後ろ手に縛られ、猿ぐつわをかませられているそのエルフは、それでも必死に抵抗していた。
その紫の瞳は涙で潤んでいる。

「なかなか生きがいいな!」
男たちは代わるがわるエルフをからかっていた。

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怒り爆発

「くっそー!」
それ以上我慢できなくなったゼノーは、男たちの前に躍り出る。

「いいかげんにしろっ!」

「な~んだぁ?このガキ?」

「おい、どうやってここまで来たんだ?」
男たちは小さなゼノーなど相手にもせず、笑った。

「エルフたちを放せ!」

「おいおい、俺たちの上前を跳ねようってのかい?」

「はははっ、こりゃーおもしれぇや!」

「仲間でもいるんかい?」

男たちは横目でゼノーを見ただけで、相変わらずエルフをからかっている。

「私一人だ。」
ゼノーは男たちを睨みながら言った。

「はっ!いっちょまえに、『私』だとさ。」

「おい、こんなガキの相手しておっても仕方ねーよ。
早く帰ろうぜ。思ってもみねーいいもん手に入れたからな。」

ぎゃーっはっはっは!と笑う男たち。

「放せと言っただろう?」
ゼノーの瞳は熱くなってきていた。
身体の周りから闇の気が立ち上がってくる。

「欲しけりゃとってみな!」

「じゃ、旦那、頼んます。」

完全にゼノーを馬鹿にしてかかっていた男たちは、そんなゼノーにも気づかず帰り支度を始め、僧侶はエルフをその中の一人に渡すと魔方陣を描くため気を集中し始めた。

-カーッ-

と、不意にゼノーの手から放たれた閃光が、エルフとプチデビルを避けて男たちを直撃し、一瞬にして彼らの姿はそこから消え失せた。

「大丈夫?」

ゼノーは慌てて駆け寄ると、プチデビルとエルフを自由にする。

「キーキー」

「あ、ありがとう。」

自由になったエルフとプチデビルはゼノーに礼を言うと、慌てて逃げるようにその姿を消していく。

「・・・なんかあっけないんだな・・。」

少しは話したりしていってもいいのに、とも思いながら、でも、やっぱりあんな事があったばかりだから、急いで仲間のいる所に帰りたいのも無理ないか。
と、一人納得し、ゼノーは溜息をつくと、当てもなく歩き始めた。

 

▼その14につづく…

闇の紫玉/その15・気さくな闇世界の住人

人間にとらえられていたプチでビルとダークエルフを助けたあと、闇雲に進んだゼノーは、大木に住居を構えるダークホビットの村に着く。 Contents1 闇の紫玉、その15・気さくな闇世界の住人1.1 闇世 ...

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