闇の紫玉

闇の紫玉/その12・闇王への道

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闇王となり、崩壊に向かう闇世界の救助をと求められるゼノー。
闇世界だとて住人は人間界と同じように生きている。
その闇世界を救ってほしいと懇願されれば心は動く。
自分を排除した人間の世界と比べ、闇の世界は優しくゼノーを受け入れてくれる。

闇の紫玉、その12・闇王への道

このページは、異世界スリップ冒険ファンタジー【創世の竪琴】の番外編【闇の紫玉(しぎょく)】のページです。
闇王となったゼノーのお話。お読みいただければ嬉しいです。
異世界スリップ冒険ファンタジー【創世の竪琴】の番外編【闇の紫玉(しぎょく)】、お話の最初からのINDEXはこちら

闇の貴石

「今、ここから見える闇の世界はごく一部なのです。
人間が闇の世界とか魔界とか呼んでいるこの世界は、7つの層に別れていて、現在この浮遊城は人間界と最も近い、第7層の上空に浮かんでおります。

各層は異次元空間で繋がっており、各々の魔力により移動できる範囲が決まります。
勿論、この浮遊城はどの層へも移動可能です。
層を1つずつ下りる毎にそこに住む者の魔力は強くなっていますが、他の者のテリトリーを侵す者もなく、小さな争いを除けば、住民相互は平和に暮らしております。

ただ、崩壊が進むと同時に、同じ層での争いが最近増えてきてはいますが。

・・・ゼノー様にしていただきたいのは、7層から順に下りて行ってもらい、最後にはこの深層部、第1層にある闇王の心と言われる闇の貴石を手にしていただきたいのです。」

「闇の貴石?」

「はい、闇の紫玉とも呼ばれるそれは、闇王の瞳の色をしたとても美しい石です。
つまり、ちょうどゼノー様の瞳の色をしているのです。
その石を手に入れることによって闇と同化する事ができ、この世界の糧である月からのパワーを受け取ることができるのです。

そして、その時こそ、この闇の世界の崩壊を止める事ができる真の闇王となれるのです。

その石は、闇王の意思。
遥か昔、人の世と共にこの闇の世を造ったのは、他ならぬ創世の神、男神ラーゼスなのです。
太陽神、男神ラーゼスの負の心がこの闇の世界を造り上げたのです。
男神は女神と共に人間の世を造るとき、自分の負の心をその貴石に封じ込め、幾重もの結界を施しました。
それがこの闇の世界なのです。

が、その貴石は自分の分身を産み、闇王を作り上げ、同時にここに住まうべき生き物までも造り上げたのです。

そう、ちょうど男神と女神が人間の世界を創造したように。

そして、負の心ではあるが、男神の一部には違いない、それ故、月の女神ディーゼは、闇の世界を反故する事もできず、その恵を送り続けて下さっているのです。」

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「じゃ、最初からそこへ行けばいいじゃない?」

「いいえ、今のゼノー様では、その貴石の力を受け入れる事はできないでしょう。
今まで何人となく、魔力の強い者が貴石に触れようと第1層に行きましたが、帰って来た者は1人もおりません。
その貴石に認められなければ、そのパワーを受け入れることができなければ、何人たりとも闇王にはなりえないのです。」

「そ・・そんな事が僕にできるの?」

話を聞いているうちに不安になったゼノーが小声で聞いた。

「できるはずです。あなた様にはその資質がございます。
まずは、第7層から旅立たれ、徐々に魔力を付けていくべきでしょう。」

「でも、そんなにゆっくりしてていいの?闇の世界の崩壊は?」

「今まで千年も待っていたのです。
それに、今までと違って闇王となられる方が見つかっているのです。
急いては事を仕損ずる。機が熟すのを待つべきです。」

ブラコスはにこりとゼノーに微笑みかけた。

「それとこれを。」
ブラコスは銀色に輝く丸い玉をゼノーに渡した。

「これは?」
その玉を受け取り、その輝きに心引かれながらゼノーは聞いた。

「これはムーンティア、その名の通り、月の女神の涙です。
この玉と同じものが各層のどこかにあるはずです。
誰が持っているのかは分かりません。これをあと、6つ集めて下さい。
7つ集まった時、闇の貴石への道が開けるでしょう。
それは、第1層にあるべき物、私が前闇王から、万が一の時の為にと、お預かりしていたものです。」

ムーンティアを手に

「ブラコスも一緒に来てくれるの?」
ゼノーは何故だかこのままブラコスが消えてしまうような気がした。

「私は、ご一緒できません。
今わたしがあるのは、そのムーンティアのおかげなのです。実際の私は千年前、前闇王と共に塵となりました。
ゼノー様が目にしているのは、私の心、ムーンティアが作りだした幻影です。」

「で、でもちゃんと触れるよ!」

驚いてブラコスの腕を掴み、その存在を確かめながらゼノーは叫んだ。

「ムーンティアの、女神のパワーのおかげなのです。
ですが、ゼノー様にこうしてお渡しした以上、もうこの姿をとどめおく事も無理でしょう。」

ブラコスはゆっくりと立ち上がるとゼノーの前に跪き、頭を垂れた。

「いやだ!1人にしないで!ブラコス!」

ゼノーは立ち上がるとブラコスに抱きつき、ムーンティアを返そうとした。

「ゼノー様、これはこの世界の理、定まっている事なのです。
そのムーンティアは、もはや私には属しません。ゼノー様の物なのです。」

「そんな!ブラコスなしで、僕はこれからどうしたらいいの?何にも分からないんだよ!」

ようやく手に入れた心から信頼できる仲間、心の拠り所。

ゼノーはブラコスを失う事が身を切るような辛さに思えた。

泣くことを忘れてしまったゼノーの目に大粒な涙が溢れ出ていた。

「ゼノー様なら必ずやり遂げれます。
そして、その時、私をお忘れでなかったら、私の名前をお呼び下さい、ゼノー様がつけて下さった名前を。
さすれば、私は再びゼノー様の御前に、ゼノー様に仕えるべく生命をそして肉体を賜ることができるでしょう。」

徐々に薄くなり消えていきながら、ブラコスは、その微笑みをゼノーに向けていた。

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「うん!絶対!絶対、僕ブラコスを呼ぶよ!」

ゼノーは涙を目に溜めながら消えていくブラコスに叫んでいた。

「闇をまとい、強く念ずるのです。
さすればそこにゼノー様の欲しいものが現れるはずです。
さあ、ご出発下さい。世界があなたを待っています!」

ブラコスは微笑みながらゼノーの前から消えていった。

 

▼その13につづく…

闇の紫玉/その13・闇の巫女

ひとりぽっちになってしまったゼノーが闇の浮遊城で出会ったのは闇の巫女。 闇王がいなくなってたった1人で浮遊城に残っていた彼女は、時代の闇王となるゼノーを心から歓迎した。 Contents1 闇の紫玉、 ...

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