闇の紫玉

闇の紫玉/その7・ひとときの穏やかな日々

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少女がくれた薬草とビスケットを手に持ち、急ぎゼノーが待つ洞窟へと山道を急ぐリーを野生の狼が襲わんとしていた。
その窮地を救ったのは、他ならぬともに旅をしてきた母狼

リーは助かり、ゼノーも徐々に回復する様子を見せ、リーを訪ねてきた村で出会った少女シャンナとの穏やかな日々が過ぎていた。

闇の紫玉、その7・ひとときの穏やかな日々

このページは、異世界スリップ冒険ファンタジー【創世の竪琴】の番外編【闇の紫玉(しぎょく)】のページです。
闇王となったゼノーのお話。お読みいただければ嬉しいです。
異世界スリップ冒険ファンタジー【創世の竪琴】の番外編【闇の紫玉(しぎょく)】、お話の最初からのINDEXはこちら

危機一髪

「ガルルル・・ガオッ!」
茂みから3匹の狼がリー目指して飛び出てきた。

駄目だっ!食べられるっ!
頭をかかえ、そこに座り込んだ時、リリーの声が聞こえた。

「ウワンワンワン!・・・ガオッ!」
リリーは3匹の狼に突進すると攻撃を始めた。

「ギャワン・・ワン・・ガアッ!」

「ガオッ!・・ギャン・・・・」

「リ、リリー・・」
呆然とそこに尻餅をついたままリーはその様子を見ていた。
そのすさまじさにリーの身体は震える。

数分後、リーは、酷い怪我をしながらも三匹共倒したリリーと共に洞窟へ向かっていた。

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洞窟へ着く早々、リーはゼノーに薬草を差し出す。

「兄様、これをかむと熱が下がるよ。」

まだ熱の下がらないゼノーは、何も聞かず素直に差し出された薬草を受け取ると口にほおばる。

「兄様・・苦い?」
顔をしかめながら噛みつづけているゼノーにリーは聞いた。

「う・・・・ん・・・。」
ゼノーは汲んであった水を一口飲むと、再び横になった。

リーはゼノーの額に濡らした布を充てると、洞窟の外へ出る。
そこには狼と戦い傷ついたリリーが苦しげに横たわっている。
その横には心配したゼノアが。

「キュ~ン・・・」

「リリー・・・僕の為に・・ごめんね。・・僕、風さんに頼んでみるよ。」

リーは荒野で死にそうだったルチアを回復させた事を思い出していた。

もしかしたらまた風さんが力を貸してくれるかもしれない、と思ったリーは試してみようとリリーの横に座った。

リリーの腹部に手を充て、目を瞑るとリーは必死に祈りはじめる。

「風さん・・・お願い・・リリーの傷を治して・・・風さん!・・・・」

どれほどたっただろう、実際には数分でさえ経ってないのかもしれなかったが、リーには何十分にも思えた。

あのときのようにはならないのか、とリーが諦めかけた時、さあっとやさしい風が吹き、リリーを包み込んだ。

そして、その痛々しい傷は徐々に消えてなくなっていった。

「ありがとう、風さんっ!」
リーは嬉しかった。

何をするにもゼノー任せで自分が何も出来ないことを悔やんでいたリーは、これで一つ役に立つことができる、と嬉しかった。

「クーン、クーン。」

「こら、リリー、くすぐったいよ。リリーってば!」

リリーは傷を治してもらったその喜びをリーの顔中を舐める事で示した。

ゼノーの熱も少し下がったような感じがし、その夜は久しぶりにぐっすり眠れたリーだった。

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少女の訪問

翌日、川に水を汲みに行こうと洞窟を出たリーの前にシャンナとジロが現れた。

「シ、シャンナ・・・それにジロ!ど、どうしたの?何故分かったの?」
驚くリーにシャンナは得意気に言った。

「ジロはね、とっても鼻がいいの!それに昼間は山に入ってもいいって言われてるし。」

シャンナはバスケットに入った固パンと薬草をリーに見せて微笑んだ。

「いいの?」

「うん。いいの。あたしの取り分だから。」

「じゃ・・・じゃ、シャンナのが減っちゃうよ!」

「大丈夫だって!」
差し出されたバスケットを押し返そうとしたリーのお腹の虫が合唱した。

『グキュルルル・・・・』

「あははっ!無理しない、無理しない!じゃ、遅くなるとばれるから。」

そう言うとリーにそれを渡し、シャンナはジロと共に駆けて行った。

そうして、シャンナがそうやって洞窟を訪れ、しばらくその近くでリーと話してから帰って行くという穏やかな日々が続いた。

リーは他の人に見つかったということがばれるとまた心配かけることになるのでは、と思ってゼノーには黙っていた。

と同時に、リーにとっては初恋かもしれなかいその少女シャンナは、この地方には珍しい黒髪と黒い目の活発な女の子だった。

シャンナが来るようになってから一週間がすぎ、ゼノーも少しずつ熱が下がって、ようやく起きれるようになった。

その日は雨だった。

あまり一か所にいても見つかるといけないということで、熱の下がったゼノーは翌日ここを発つ事を決め、リーはシャンナとの別れを思い、一人そわそわしていた。

「リー、どうしたんだ?」

「う・・ううん別に。」

「変な奴。」

ゼノーはリーが女の子の事を考えているとは思いもつかず、これからどうしたら、何処へ行ったらいいか、それを考えていた。

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出立の日

翌日、冷たいその雨も上がり、2人はもっと山奥へ向けて出発しようとしていた。
完全に冬にならなうちに何とか落ちつく場所を見つけたかった。

リーは、多分雨のせいで昨日は来なかったであろうシャンナの事を思っていた。
できたら昨日会ってお礼だけでも言いたかった。
それができなかったから、なんとかシャンナが来る頃まで出発を伸ばせないかと思案しながら。

まさか、その前日の雨の日、シャンナが狼に襲われ喰い殺されていたとは、知るはずもない・・・。

 

▼その8につづく…

闇の紫玉/その8・狂気の狩人

リーに会いに来る途中、村の少女シャンナは運悪く狼に襲われその命を落とす。 その無残に食い散らかされたシャンナの残骸を発見した村人は、彼女の日記から双子につながる少年のことを知り、狼におそわせたのが悪魔 ...

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