月神の娘

続・創世の竪琴【月神の娘】13・絶望

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王子の甘い誘惑に危機一髪逃れることができた渚は、一旦闇の浮遊城に戻ってから自分の世界に帰り、日常に戻る…のだが、作成中の「創世の竪琴の続編」の展開を高校の後輩から聞き青ざめる。
もしも「創世の竪琴」のときと同様、ゲーム通りに進むのなら、私はイルが倒すべき闇の女王?
このままだと……イルと戦うことになる?

月神の娘/13・絶望

このページは、異世界スリップ冒険ファンタジー【創世の竪琴】の続編、【MoonTear月神の娘】途中の展開です。
渚の異世界での冒険と恋のお話。お読みいただければ嬉しいです。
(異世界スリップ冒険ファンタジー【続・創世の竪琴・MoonTear月神の娘】お話の最初からのINDEXはこちら
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生きる権利

「そうよねー・・・彼らも生きてるのよね。みんながみんな悪者じゃなく、正直に一生懸命生きてる魔族だっているのよ。」

自分の世界に戻ってきた渚は机に頬杖をついて、窓の外を見ながら考えていた。

恐ろしい悪魔だとばかり思っていた闇の住人たち、魔族。
確かに人間の魂を糧とする者もいる。
人間界で人間を襲う者もいる。だが、それが全てではない。

「人間と魔族・・・仲良く暮らすってことできないのかしら?
それができないなら、せめて不可侵条約でそれぞれ平和に・・・とか?」

あれこれ渚は一人で考えていた。

向こうの人間界で確かに1月ほど過ごしたのだが、帰ってみると一夜明けているのみ。
これなら騒ぎにもなろうはずはない。

「それにしても、イルはどこにいるのよ~?!」

心に思い描いた人を写してくれるという水鏡も、なぜか水面が濁ってイオルーシムを写してはくれなかった。

「闇の女王って・・・なんでもありじゃないのね?」

それも闇王がいなくて不完全だからなのだろうか?と渚は思う。

「闇世界の女王というんだから、なんでもできてよさそうなのに。
イルの居場所さえ分からないなんて・・・・。」

それともシアラのように本物の巫女ではないから、やはり名ばかりの女王でしかない?と渚はふと思う。
たとえ月神のパワーを得ることができても。

再び高校の部活に

「姉貴、山崎さん。」

「え?」

こんこん!と軽くノックをして優司がドアの隙間越しにそう言って去っていった。

「お、おはよ・・・・」
のろのろと下りていくと、そこにばつの悪そうな顔の洋一がいた。

「おはよ。」

-し~~ん・・・・-
しばし気まずい沈黙が玄関を覆う。

「あ・・き、昨日はごめん。せっかく来てくれたのに・・オレ・・・」

「いいのよ、別に、そのことなら私は気にしてないから。」

-し~~ん・・・-
そして再び気まずい沈黙。

『あの・・・』
思い切って口を開けたとき、相手もまた同じく口を開いていた。

「あ・・何?」

「た、たいしたことじゃないから、部長・・先言って。」

「先って、言われても・・・・」
頭をかいてから、洋一は思いきって話す。

「き、今日は・・・・?オ、オレ、あいつらにまた今日も行くって約束しちゃったんだけど。」

「私は・・・・・」

洋一と行くのは躊躇われた。
洋一は夢だと思っているからいいとして、渚はそうもいかなかった。

が・・・ゲームの先が気がかりではある。
もしかしたら、イオルーシムの・・・そう、ゲームでは、前作の勇者がどう登場するのか分かるかもしれない。
そして、それは向こうで本当になるかもしれない。

「部長がかまわないんだったら、行ってもいいけど・・。」

「ほ、ホントか?」
洋一の顔がぱあっと明るくなった。
嬉しさで照れ笑い。洋一が悪いなどと言うはずはない。

「優司、ちょっと高校の部活に顔だしてくるから。」

「パソコン部?」

「そう。」

ダイニングで遅い朝食をとっていた優司は、渚が顔をだすと同時に警戒しながら答えた。
そんなときの定例事項、ひょいっと上前はねられるからである。

が・・・・

「じゃ、行って来ます。」

「あ?」
渚はにこっと優司に笑いかけてからダイニングを後にして出かけていった。

「あ・・姉貴?」
その笑顔がそれまでに見たこともないような上品な微笑みに見え、優司はトーストを口にほおばりかけたまま、唖然とする。

「姉貴・・・だよな、今の?」

こっちの世界では一夜、だが、向こうの世界での王宮での生活の約1ヶ月、王子が、そして、周りがすっかり慣れてきたと判断したのも当然、渚本人が意識していないのみで、貴人の待遇で扱われているうちにすっかりそれが板についたというか・・・いつもと変わらずバタバタしているようでいて、ふっとした時、貴人の仕草が出るようになっていた。

それはともかく、部活に顔を出したことで渚の疑問は解決した・・・・のではなく、その正反対の状況となった。

闇対光

「どうして?闇世界の人たちだって生きてるのよ?
闇があるから光があるんじゃない?
光があるから闇があって・・・魔族だって悪人ばかりじゃないわ!
人間だっていろんな人がいるみたいに、魔族にだって・・・。」

「おい!桂木!いいかげんにしろよ!」

「だって!」

ゲームの展開、つまり、どんなゲームにするのかで後輩ともめにもめてしまった。

「ごめんなさい・・」

「あ、いや、オレはいいけど。」

「オレたちが作るゲームなんだから!」
と最後に現部長にきつく言われ、渚は洋一に引っ張られるようにして部室を後にしていた。

前日の話だとRPGらしかった。
が、それでは面白みにかけるから、ということで、今日の話では、アクションRPG、しかも、闇世界での展開であり、その大元である闇の紫玉をみつけだし破壊するのが最終目的のゲームに変わっていた。

そして、当然そこに到達するためには、主人公の前に立ちふさがる魔族や闇王復活を計る闇の女王を倒して進む設定である。

「桂木・・・」
一応自宅まで送ったものの、終始無言で元気がない渚に、洋一はかける言葉が見つからなかった。

絶望感

「姉貴・・なんかあったのか?」

「え?」

その日の夕食後、居間でTVを見ていた優司は、ぼんやりとしている渚に気づいて声をかける。

顔を合わせれば喧嘩ばかりしている優司だが、その日の渚の落ち込みようは普通ではなく、ふと心配になる。

が、そこはいつもの喧嘩姉弟。
心配とは相反して口からはからかい半分の言葉が出てしまう。

「ぼけーっとしてんなよな。そんなんだから振られるんだぞ?」

「なにそれ?」

「デートの約束は忘れるし、ぶすっとしてるし、おまけにそんなにぼけーっとしてたんじゃ、百年の恋も冷めるってやつなんじゃない?」

何のことだろう、と不思議そうに問いかけた渚におもしろ可笑しく答えた優司の言葉は、的はずれだとはいえ、渚をより一層深く沈ませるのに十分だった。

「あ・・?あね・・き・・・?」

『そんなんじゃないわよ!』と反撃してくるだろうと思った優司の思惑は外れた。

いつもならムキになって機関銃のごとく言い返してくる渚が今日は、ぎゅっと唇を噛み・・その瞳からは涙がにじみ始めていた。

「姉貴!?」

くるっと背を向けそのまま自分の部屋に駆け込んでいった渚に、優司は言い過ぎた事に気づき青くなる。
・・が、今更どうしようもない。
ばつの悪そうな顔を残して優司もまた自分の部屋へ戻っていった。

(もしもゲーム通りに進むとしたら・・・・)

振った振られたなどどいう生やさしい問題ではなかった。

創世の時のようにゲーム進行と向こうの世界での状況が同じだとしたら、それは最悪の展開となる。
イオルーシムと再会どころか・・・戦わなくてはならなくなる・・?

(イルが・・・敵?・・私を、殺すの?・・・殺して闇世界も破壊・・する?)
暗く重い不安が渚を覆っていた。

「ううん・・イルならそんなことないわ。
話せばきっと分かってくれるはずよ・・イルなら。
それに、ホントにゲーム通りになるかなんて、分かりゃしないわ・・・ゲーム通りなんて・・・。」

不安を追い払おうと、自分にそう言い聞かせながら眠ってしまった渚の頬には、幾筋もの涙の跡があった。

 

▼月神の娘・その14へつづく

続・創世の竪琴【月神の娘】14・突然の再会

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