月神の娘

続・創世の竪琴【月神の娘】4・忘れ時の塔

投稿日:

忘れ時の塔へ幽閉された姫巫女、シアラ。
シアラの中にいる渚のことは、シアラも感じていた。

月神の娘/4・忘れ時の塔

このページは、異世界スリップ冒険ファンタジー【創世の竪琴】の続編、【MoonTear月神の娘】途中の展開です。
渚の異世界での冒険と恋のお話。お読みいただければ嬉しいです。
(異世界スリップ冒険ファンタジー【続・創世の竪琴・MoonTear月神の娘】お話の最初からのINDEXはこちら
月神の娘のこの前のお話は、ここをクリック

シアラからの注意

「話しかけないでください。」

(え?)

塔での生活は、僧兵長が言った通り何不自由のないものだった。
ただ一つ外に出られない事を除けば。

毎日決まった時間に起床し、祈りをあげ、食事を取り、読書をし、決まった時間に床につく。
見張りがいるわけでもないのだから、もっと自由に気ままにしていればいいと渚は思ったが、シアラはそうではないようだった。

それまでの巫女生活の通り毎日を送っていた。
ただ、それまでと違い、食事の支度など、自分で何もかもしなくてはいけないということが増えたが、それとて別にたいしたことではない。

決まりきったその繰り返しと、そして、何よりも一人だということに、我慢ができなくなった渚が彼女の心に話しかけようとした時、それより先にシアラの口からその言葉が出た。

「私には分かります。あなたはこの世界の人でも、そしてこの時代の人でもないということが。」

「え?この時代の人ではない?」
シアラは渚の言葉を無視するように続けた。

「誰かが何かの目的の為にあなたを私の内に呼び込んだのでしょう。
・・・そうですね、あなたはきっとずっと未来の人のはず。」

(未来の・・・じゃー、今起きていることはイルの世界の過去?)

「ですから、何も話さないでください。
あなたの知っている事は私が知って良いことではないはずです。
いえ、私が耳を塞ぎましょう。何も聞こえないように。
ちょうど塔内では外の様子を知る事ができないように。」

スポンサーリンク

同調する恋心

(シアラ・・・・)

それでも、シアラの心の想いは確実に渚に伝わってきていた。
知ってはいけなかった恋と巫女としての責任感。
そして、分かっていても消し去ることができない闇王への想い。
なぜ闇王に恋などしたのかという自責の念とそれでも燃え上がる彼への恋慕。

(イルは・・・・今頃どうしてるの?)

そのシアラの心と同調するかのように渚もイオルーシムの事を考えていた。

間近で見た闇王はどんなにかそっくりというわけでもなかった。
が、遠目にイオルーシムだと思ってしまったのは確かだった。

それに、確かであり大きな違いは、その瞳の色。ゼノーのような冷たさこそなかったものの、紫色の瞳は、イオルーシムのものではない。

(ちょっと遠目に似てるっていうことよね?
・・それはいいんだけど、いつまで私ってシアラの中にいるの?)

不安を覚えずにはいられなかった。
外界とは一切遮断されている塔内は、まるで時が止まっているようにも思えた。

確かに窓から朝日は見え、夜の闇もやってくる。
が、日数の感覚が全くなかった。

ただ、シアラの闇王への想いだけが日々募っていっているのを、渚は自分のイオルーシムへの想いと重ねて感じていた。

おそらく一生忘れ去ることができない事、そして、それはとりもなおさず、一生この塔から出られないことを意味するのだと、悲しい覚悟を決めたシアラの中で。

 

▼月神の娘・その5へつづく

続・創世の竪琴【月神の娘】5・姫巫女の決意

いつまでこうして忘れ時の塔に幽閉されているのか、シアラの心の中にいるままなのか不安になってくる渚。 と、ある日不意に塔の壁に亀裂が走る。 Contents1 月神の娘/5・姫巫女の決意1.1 迎えに来 ...

-月神の娘

Copyright© 異世界スリップ冒険ファンタジー小説の書棚 , 2020 All Rights Reserved.