創世の竪琴

創世の竪琴/その36・白き世界の創世

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斬りかかってくるイルに対峙するのではなく、回復魔法を唱えた渚の気持ちに応えるべくイルも自分を操っているゼノーの意識と戦い、押さえ込むことに成功。
そんな2人を太陽神である男神ラーゼスは認め、世界を無に帰すことを保留。
2人はすでに真っ白な無の状態になってしまった地域を復活させるべく、そこへと向かう。

その36・白き世界の創世

このページは、異世界スリップ冒険ファンタジー【創世の竪琴】の途中の展開です。
女子高生渚の異世界での冒険と恋のお話。お読みいただければ嬉しいです。
(異世界スリップ冒険ファンタジー【創世の竪琴】お話の最初からのINDEXはこちら
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決別の予感

「ファラシーナ、リー!」

塔から下りると、扉の外で倒れていたファラシーナにイルが、リーに渚が駆け寄った。

「酷い怪我・・・でも息はしてる!」

「こっちもだ!」
渚は竪琴を取り出すと、回復の音を奏でた。

「ああ・・渚、大丈夫だったのですね。」

「ん。リーもね。」

気がついたリーは、渚を見て微笑んだ。
もっとも、相変わらずフードをかぶっているので、渚からは口元しか見えない。

「ん?・・あ、あたい・・?やられて・・・イルっ!」

ファラシーナは気づくと同時に抱き起こしていたイルの首に巻きついた。

「フ、ファラシーナ!」
驚いたイルが、ファラシーナの腕を解こうと焦る。

「もうっ!リー、先に行きましょ!」

見慣れた光景だが、やはり面白くない渚は、リーを促すとさっさと歩き始めた。

「渚っ!待てよ!」
イルが慌てて立ち上がり、尚も絡みついているファラシーナと一緒に追いかけてきた。

「いいわね、もてて・・・。」

渚はちらっとそんなイルを見るとそっぽを向きひたすら神殿の出口へと歩いていた。

「再び海底に沈むようですね。」
神殿を出ると、リーが辺りを見渡しながら言った。

「急ぎ、ここを離れた方がいいようです。」
リーが魔方陣を描き始める。

渚は後ろを振り返り、ため息をつくとまだ出て来ないイルとファラシーナを呼ぶ。
「イル、ファラシーナ、帰るわよ!」

一行が空に上がるとほぼ同時、地響きがし、海原がざわめき、神殿は再び海底へと、その姿を消していった。

「ふう・・・」
渚は神殿の沈んでいった後の渦潮を見ながら、溜息を付いた。

「さあて、まだまだやる事は一杯あるわ!」

「一端、お頭たちの所に戻りますか?」

「ん、そうね。リー、お願いね。」

ザキムたちと再会し、その夜はそこで泊まる事にした。

ファラシーナとリーに塔での一件を話し、今までの礼を言い、後は自分たち2人でやるからというイルと渚に、2人は断固最後まで付いて行くと主張した。

無の世界はこれ以上広がらないにしても、魔物たちは相変わらず地上を徘徊している。

それに2人が竪琴を使っている間は、完全に無防備状態となるだろうから、その時の守り手として、どうあっても付いて行くという事だった。

「じゃ、引き続き、よろしくお願いします。」
根負けした渚は、2人に頭を下げた。

「水臭いですよ、渚。」

「そうだよ。それにあたいは、イルと離れたくないからなんだし・・・ネ。」

ファラシーナはイルにウインクして言った。

「だ、だから、本当はファラシーナは・・」

「えっ?何か言ったかい?」

小声で言ったのが聞こえたのか、ファラシーナが渚の方を向いた。
渚は慌てて打ち消した。

「う・・ううん、別に。」

(あーあ、またイルと2人っきりで旅ができると思ったのに。
でも、2人の言うことも当然だし。仕方ないわ。
・・とにかく、もうじき終わり。
そうすれば、またこの竪琴が光って家に帰れるのかしら?
それとも、ディーゼ神殿へ行って、これを返すと女神様が帰してくれるの?)

渚はいろいろ考え込んでいた。
そして、ふと思いつき、どきっとした、イルの言った言葉を。

(確か、イルは、イヤリングが黒い限り、私には触れないって言ったよね・・とすると、もしかすると・・あ、危ない?・・・でも、イルなら・・・う、ううん、駄目、駄目!)

「駄目だってばっ!」

「何が駄目だんだ?」

思わず声を出してしまった渚を、不思議なそうな顔をしてイルが見る。

「な・・何でもない。」

「何でもないって・・
渚?お前熱でもあるんじゃないのか?顔が真っ赤だぞ。」

「大丈夫だってば。」
渚の額に手を充てようとするイルの手を振り払うと渚は立ち上がった。

「もう遅いから、私、休むわ。お休みなさい。」

そそくさとその場を離れ、渚とファラシーナの為に用意してくれた小屋に行き、1人ベッドに入る。

自分の考えた事が恥ずかしくて、イルと目が合わせられなかった。

(ファラシーナがいるから・・・大丈夫よね・・2人っきりにはさせてくれないだろうから・・それに・・それに、全部終わったら私は家に帰るんだし・・そうすれば、もうイルとは会えないんだし・・・もう・・・・)

いつの間にか渚の目には涙が溜まっていた。
渚は布団を頭までたくし上げると、堪え泣きしていた。

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無法地帯の町

そして、一行は最終目的地である、白き無の地に一番近い町、元ファダハン王国の『ファイロン』に来ていた。

ファダハン王国はその圧倒的な権力と軍力で治めていた国王を失ってから、その秩序は完全に失われ、乱れていた。

近隣の国王は白の世界が自国まで広がってくるのを恐れ、秩序を保つ為の援軍も、食料等の物資の援助もしようとしなかった。

砂漠に囲まれた町、そこは、今や完全なる無法地帯と化していた。

「イル・・何か町の人の視線が・・・・」

一行が町に入ると同時に、通りを行き交う男たちの目が集中した。
まるでまとわりつくような視線。渚は気持ち悪くなってきた。

「ああ・・女連れの旅人なんて珍しいからな。
それに、国王という抑えを失って、今や完全に無法地帯だからな。」

イルは気にしてないとでもいうように、さらっと言う。

「とにかく、宿屋でもとって、それから行ってみる事にしよう。」

一行は町外れにその町ただ1つという宿屋を見つけるとそこに入った。

「いらっしゃい、お泊まりかね?」
中に入ると、何か胡散臭そうな主人が出てきた。

「ああ、4人一緒か部屋を2つ。」

「4人様ご一緒で、という部屋はありませんので、2部屋でよろしいですか?
女の方と男の方用で?」
主人はじろじろ見ながら聞いた。

「いや、それなら、俺とこいつで1部屋、後の2人でもう1部屋。」

「イ・・」
イルは焦って大声を出しそうになった渚の口を抑え、自分の後ろに渚を押しやった。

「はいはい、かしこまりました。
では、前金でお願い致します。」

主人は宿賃を受け取ると、一行を2階の部屋に案内した。

「では、どうぞごゆっくり。
食事は真向かいの酒場でお願いします。」

主人は頭を下げると階下に戻って行った。

「渚、何してるんだ、入らないのか?」

入口で立ち止まっている渚に、先に部屋に入りイスに座ったイルが言った。

「だ、だって・・・」
渚は自分の顔が少し赤らんできたのを感じていた。

「お嬢ちゃん、あの主人を見たろ?
隙あらばって顔して。
ああでも言わないと、夜、こっそりあたいたちだけ誘拐しようとするだろうからね。」

後ろでファラシーナが笑いながら小声で渚に言う。

「そうです、渚。心配はいりません。」

リーにまで言われ、自分が何を考えていたのか、みんなに分かってしまったと、益々渚は赤くなる。

「もっとも、俺は渚の考えた方でもいいんだけどな。
いや、その方がいいな。」

「イルっ!」
意地悪そうにわざとそう言ったイルを思わず渚は睨む。

「はっはっはっ!まぁとにかく入れって!」

宿の主人が聞き耳を立てている事を予想し、全員その部屋に入って相談する事にした。

「ですが、やはり別に眠るというのは、危険だと思いますよ。」
リーが真剣そのものの顔をして言った。

「そうだな・・・」
イルも考え込む。

「あたいは・・イルと一緒でいいよ。」
2つあるベッドの1つに腰掛け、ファラシーナはイルにウインクした。

「では、私は渚と。大丈夫ですよ。ただ眠るだけです。」
いつものように静かに言うリーに、動揺しながらも、リーなら信用できるだろうと渚は思った。

「し、仕方ないから・・それで。」

「ち、ちょ・・・」
今度はイルが焦ったようだった。

何か言おうとしたのを止め、窓の外に目を向けた。

「と、とにかく、まだ泊まるかどうかは決まってはいないんだからな。
まだそう決めなくても・・」

「なにさ、あたいじゃ、不服なのかい?」
ファラシーナが不服そうに言った。

「い、いや、そう言うわけじゃ。
と、とにかく、行ってみよう、白の世界の近くへ。」

「そうね、行ってみましょっ!」
窓から遠くに見える真っ白な空を見つめ、答えていた。

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創世の竪琴に想いを乗せ

不思議な光景だった。

目の前に広がっている空間は全くの無、真っ白な無の世界。

そこから先は何もない。
見ていると感覚がおかしくなってしまうように思えた。

(真っ白・・普通、無の世界って暗闇なのよね。
混沌とした暗黒の空間にまず光がっていうのが普通なんだけど。
これだと・・・まるで白紙の状態に戻すって言うか・・ディスクの初期化って言うところ?)

「渚!」

1人ぼけーっと考え事をしていた渚はイルの声で、はっとした。

(いけない、またやっちゃった!)

「ごめん、ごめん、イル。
じゃ、やってみましょう?」

イルと渚が各々の竪琴を取り出す。
渚は女神ディーゼの銀色の竪琴。
イルは男神ラーゼスの黄金の竪琴。

その2人の後ろでは、リーとファラシーナが砂漠に住むモンスターや肉食獣の攻撃に備え警戒している。

「ふぅー・・・・」

大きく息を吸うと渚は竪琴を奏で始める。
イルも慣れない竪琴を指で爪弾き始めた。

(心を込めて・・そこにあるべき世界を想い描いて・・・)
初めは戸惑ったイルも少しずつ慣れてきた。

その竪琴は、手で奏でるものではない、その調べは心で奏でるもの。

自然に目を閉じた2人はその調べの中に入っていった。

2人の心が竪琴の音になり、その調べが1つになっていく・・

と、イルの竪琴から赤、青、緑の3色の龍玉が光を放ちながら出てきた。

それは2人の竪琴の間で少しずつ溶け合い、様々な色に変わっていった。

ファラシーナとリーは目の前に展開されている世界創造に我を忘れて目を見張っていた。

2人の琴の音に乗るようにして、色が舞い、まっ白な世界を染めていく。

それはまるで夢でも見ているよう。

大地が、空が色がつくと同時に立体的になる。
草が、木が生え、花が咲いていく。

心の中にしみ込むような優しい調べが舞う中で、世界が創造されていく。

 

▼その37につづく…

創世の竪琴/その37(完)・いつかどこかで

創世の男神が真っ白の無の世界に帰した世界のほころび(?)を、イルと一緒に再生していく。女神ディーゼの銀の竪琴と男神ラーゼスの黄金の竪琴をイルと2人で奏でて。心を一つに合わせて。 その2人が奏でる調べに ...

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