創世の竪琴

創世の竪琴/その29・白き無の世界?

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イルが自分を助けに来てくれた?と思ったのもつかの間。目の前であつーい(?)ラブシーンを見せつけられてすっかりすねてしまった渚。
2人の心と心はまるで広い川に断絶された陸地のよう?ここから仲直りはできるのか?

その29・白い無の世界?

このページは、異世界スリップ冒険ファンタジー【創世の竪琴】の途中の展開です。
女子高生渚の異世界での冒険と恋のお話。お読みいただければ嬉しいです。
(異世界スリップ冒険ファンタジー【創世の竪琴】お話の最初からのINDEXはこちら
(前の話、創世の竪琴その28は、ここをクリック

ジプシー団にて

タタロスに着いた渚はリーと別れると、ジプシー団の占い師を探して、広場に来ていた。

「あのぉ~、こちらに占い師のシュメさんとおっしゃる方がいると聞いてきたんですが。」

忙しく動き回る彼らの間を聞いて回り、ようやく、シュメのいるテントを見つけ、中を覗いた。

「おお・・あんたは、あの時の、イルのお連れさんじゃったの。渚さんとか言ったかの?」

「え?…あのときのって?」

訳が分からずオウム返しのように聞く渚にイスをすすめると、シュメはこれまでのいきさつを話す。

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「そうだったんですか。しかも、おばあさんが、シュメさん?」

「そうじゃ。で?イルは一緒じゃないのかの?それにファラシーナは?」

「ファラシーナさんとおっしゃるんですか、あの人?」

「そうじゃ。わしの孫娘じゃ。・・・ん?なるほど、そうじゃったのか?」

渚の顔つきを見て、理解したシュメは、ほっほっほっと笑うと渚に事の経緯を話した。

そして、どれほどイルが渚の事を心配していたかを。

「とにかくじゃ、高熱の中ずうっとお前さんの名を呼び続けておっての。
目が覚めると、真っ先にお前さんの姿を探すし。
酷い怪我をしておるのに助けに行くんだ、と言って聞かなんだり・・・・ほっほっほ、よっぽどお前さんに惚れておるんじゃな。」

「で・・・でも・・・」

「ああ、孫娘の事か。
あいつはしょうもない娘での・・・まぁ、気にせんでおいとくれ。
あれは病気じゃで、治らんのじゃよ。
別にイルでなきゃならないなんていう事じゃないんじゃ。」

「は、はあ・・・。」

そうは言われても意地になってしまっていた渚は、果して今度イルに会ったとき正直になれるかどうか分からなかった。
イルにあんな態度をとってしまった後では。

「それはそうと、どうやって山賊の所から逃げて来れたんじゃ?」

「え、ええ・・実は・・・・」

渚は捕まって気がついたとき牢屋に入れられており、その中の怪我人を治す為に竪琴を奏でたら不思議な事に山賊が全員その心を入れ替え、町まで送ってくれた事を話した。

最も本当に町まで送ってきたのは、山賊に見えない術師だけで、あとの男たちは途中まで。何といっても人相が悪すぎる。

「はてさて、不思議な事があるもんじゃ。」

「ええ、でもこの竪琴は本当に優しくなるというのか、とにかく心が洗われるような気持ちになるんです。
これは、月の女神ディーゼの竪琴なんです。」

渚は今までの経緯をシュメに話し、神龍の居所を教えてくれるよう頼んだ。

「ふむ、なるほど。それで分かったわい。」
シュメは納得したように頷いた。

「な、何が分かったんですか?」
渚はイスから立ち上がり、水晶玉のおいてあるテーブルにもたれ、シュメの顔をじっと見た。

「このタスロー大陸南部の殆どを占めるファダハン王国の事じゃ。
国土の大部分が砂漠と化してから、ファダハンは緑豊かな土地を求めて領土拡大を図ったんじゃ。
その近隣諸国への侵攻は目に余るものじゃった。
・・・・酷い戦じゃった。
・・・このジプシー団にもそれで親を無くした子が多い・・・みな、飢えておっての
・・わしらのお頭が拾わなんだら・・・命はなかったじゃろう・・・。」

「シュメ・・さん・・・」

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世界が白くなっていく

しばらくシュメはその時の事を思い出しているのか黙っていたが、思いついたようにまた話しだした。

「おお、そうじゃ、話の続きじゃ。
これは、旅人やら吟遊詩人やらに聞いた話じゃがの、半年前の事じゃ。
そのファダハンの王宮の真上で、天を裂くような雷がなっての。
なんと、王を直撃したんじゃ。人々は自業自得だと噂しあった。
じゃが、異変はそれだけでは済まなかった。
王の葬儀も出さぬうちのことじゃ。
王宮の中心から真っ白になっていくんじゃ。
不思議な白色じゃそうな。
建物も木々も動物も人さえも、それに襲われると失くなってしまうのだそうな。
辺りは一面真っ白に化し、それは少しずつ広がってきておるそうな。」

「そ・・・そんな・・・・。」

渚の目は驚きで大きく見開かれていた。

男神ラーゼスはすで実行していたのだ。
世界を創世の前に戻すという事を。

渚はゼノーの言葉を思い出していた、『始まってしまった世界の崩壊を止めることはできぬ。』という言葉を。

「い、急がなくっちゃ・・・」
慌ててテントを出ていこうとする渚をシュメが呼び止めた。

「神龍の居場所は分かっておるのか?」

「あっ・・・・」

真っ赤になりながら渚はまた水晶球の前に座った。

「水晶の精よ、我に示せ・・・神龍の居場所を・・・・」

透明だった水晶の中心から、虹色の靄が出て、やがてそれは水晶一杯に広がった。
そしてその靄の真ん中に少しずつ景色が見えて来た。
そこに見えたのは吹雪の中にそびえ立つ真っ白な山だった。
それが消えると今度は、真っ赤な炎を映し出した。

「炎って事は、炎龍よね。でも炎龍が・・・雪の中・・・?」
渚は千恵美の言葉を思い出していた。

(ほ、本当に・・・なっちゃった!)

「炎龍はこの大陸の北にある雪山、フリーアスにおる、という事じゃな。」

「遠いんでしょ、そこは?」

「そうじゃな、2、3ヵ月はかかるじゃろ。
ここ、シセーラも高山地帯じゃが、それよりはるかに高い山々が連なるところじゃ。」

シュメは大きく溜息をついた。

「で、でも行かなくちゃ。何かいい方法は、ないんですか?
あ、あの・・空間移動の魔法とか、ないんですか?」

「ふむ・・空間移動、か。
わしのじっ様もそれはできなんだ。
孫娘も無理じゃろう。
イルも・・出来るのじゃったら、わしらと会うのにわざわざ歩いては来なんだろうし・・・」

考え込むシュメを渚は祈るような気持ちで見つめていた。

「おお、そうじゃ。精霊魔法じゃ。召喚じゃ。
精霊に頼めばできるかもしれん。じゃが・・・その術師がどこにいるか・・・」

一端輝いたシュメの眼が再び沈んでしまった。

「精霊使いは、だんだんいなくなっておるでのぉ・・・・。」

「私、知ってるわ!」

渚は思わず叫んだ。山賊の術師、リーがそうだった事を思い出した。

「ありがとう、シュメさん。私、急いで行って頼んでみる。」

「それはいいが・・・もう夕刻じゃ。
娘が一人で外に出るのは危険じゃぞ。
この女不足のおりじゃ・・真っ昼間からはできんが、夜なら・・・・」

渚はシュメの言葉にどきっとして、出ていこうとした足を止めた。

「狭いが馬車に2人くらいなら寝れる。
今から宿を探すのも大変じゃろう?
足元を見られるし、女1人じゃ・・・危ないでの。」

「す、すみません。お世話になります。」

渚はほっとした。
ここにいればイルもそのうち来るかもしれない。

(イルに会ったら謝らなくっちゃ。)

シュメの厚意を素直に受けて一泊することにした渚は、みんなと火を囲み、一緒に食事をとることにする。

キャンプファイヤーを囲んで、歌え、踊れの陽気な食事タイムだったが、渚の心は晴れない。

「イル…今頃どうしてる?」
シュメには大丈夫だと言われたが、ファラシーナのことがやはり気になった。

 

▼その30につづく…

創世の竪琴/その30・すったもんだの末

イルが自分を助けに来てくれた?と思ったのもつかの間。目の前であつーい(?)ラブシーンを見せつけられてすっかりすねてしまった渚。 2人の心と心はまるで広い川に断絶された陸地のよう?ここから仲直りはできる ...

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