創世の竪琴

創世の竪琴/その28・すれ違う2人

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自分が作った?ゲームの世界で山賊に襲われている旅人を助けようと駆け寄ったものの、イルは重傷、渚は山賊にさらわれ、旅立ち早々早くものバラバラ&窮地に陥る2人。
彼らは無事、元気な顔で再会できるのだろうか?

その28・すれ違う心

このページは、異世界スリップ冒険ファンタジー【創世の竪琴】の途中の展開です。
女子高生渚の異世界での冒険と恋のお話。お読みいただければ嬉しいです。
(異世界スリップ冒険ファンタジー【創世の竪琴】お話の最初からのINDEXはこちら
(前の話、創世の竪琴その27は、ここをクリック

同行者は?

「水晶の精よ、我が呼びかけに応えよ、我が願いを聞き届けよ・・・娘の居場所を、我に示せ・・・渚という名の娘の居場所を・・」

不幸中の幸い、助けようとして助けられた山賊に襲われていた旅人の一団は、イルと渚が探していた高名な呪術師シュメの属する(率いる?)ジプシー団だった。

そのシュメに、渚が捕らわれているだろう場所、山賊の住処を水晶球に映し出してもらったイルは、さっそく渚の救助に向かう。

イルの深手を癒やしてくれたジプシー団きっての舞姫、ファラシーナと一緒に。
ダガーの達人でもあり回復術も使えるからと言って、無理やりイルに付いてきたのである。
イルにとっては良い迷惑でしかないが、彼女はいくら無視しようが一向に気にしないといった様子でその妖艶なまでの身体を寄せるようにしてイルをくどき続けている。

「ねぇ、イルぅ~・そんな素っ気なくしないでさぁ~・・・ねぇ~ったらぁ~・・」

「・・・・・」

イルとしては、今の状態を見た渚がどう思うか、分かりすぎるほど分かるだけに、なんとか巻きたいところだったのだが、自分から全く離れないファラシーナでは、どうしようもない。

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思いもかけない遭遇

町から2、3時間程歩いてきた所で、前方に人影が見えてきた。

イルはその人影を認めると急に立ち止まる。

「イルー・・・イルでしょ?無事だったの?」

それは、渚だった。山賊に連れ去られたはずの。

「な・・渚?」

イルは訳が分からなかった。
渚の後には5、6人の男が付いてきていた。

呆然としてイルが見ていると、渚が何やらその男たちに話し、男たちは1人を残して来た道を帰っていった。

「何、何?もしかして、あの娘なのかい?助けに行こうとしてたのは?」

「・・・・・あ・・ああ・・」

「きゃははははっ!傑作だねぇ!騎士様が愛しの姫君をカッコ良く助けようと張り切ってたのに・・・お姫様は自分で逃げてきちゃったなんて・・・きゃははははっ!」

イルは苦虫を潰したような顔をしてファラシーナを睨んだ。

「おお。恐・・・でも睨んでるとこもなかなかいいねぇ・・・イルぅ?」

ファラシーナはいきなりイルの首に両腕をかけると、口づけをした。

「フ、ファ・・・・」

ファラシーナの腕を解こうとしても、絡みついたように、離れない。

イルがそうしてじたばたしているうちに、渚はすっと横を通り過ぎて行く。
その顔は明らかに怒っている顔。
それは、まさにイルが懸念していた事態。

「あっ、おい、渚!」

ようやくファラシーナから逃れたイルは、慌てて追いかける。

「渚・・・おい、渚、待てって!」
イルは渚の肩を掴むと、自分の方を向かせた。

「何よ、何か用?」
渚にしてみれば、イルがどうなったのか、心配で心配で仕方なかった。

それが、会ってみれば、他の女とのキスシーン。
怒らないほうが不思議である。
それも自分よりうんと大人で女っぽいファラシーナ。
渚の心の中は嫉妬の渦が巻いていた。

「何者だ、お前?渚様に何をするんだ?」

立ち去ったと思われた男たちが、慌てて駆けつけイルに剣を突きつけてきた。

囲まれてしまったイルは訳が分からず、どうすることもできない。

ファラシーナもその男たちには驚いて、ただ立ちつくす。

男たちは5人、その恰好からして普通の人間ではない。
まるで、山賊のような恰好だ。

「渚様、この男は?」

男たちのボス格と思われるがっしりした目つきの悪い男が、イルに剣を突きつけながらそのドスの利いた声で渚に聞いた。

「知らないわ、私。人違い・・・」
渚はそっぽを向いて答えた。

「な・・渚っ!」
イルは完全に焦っていた。

「あっ、でも、もう町も近いから、いいわ。リーがいれば。」

「し、しかし・・まだこいつの様な奴が・・」
男たちはしっかりイルに剣をつきつけたまま、睨んでいる。

「リーだって魔法を使えるんだし・・大丈夫。
・・・それに、その男だって懲りたでしょ。」

渚はイルを顎で指した。

「はっ。では、わしらは戻りますので。
またいつでもお立ちより下さい。
何か困った事があったら、何時でもご連絡を。
わしらでできることなら、何でもします!
お頭も待っておりますので。
では・・・野郎共、帰るゾ。
リー、無事、渚様を町までお送りするんだぞ。」

「はい。」
リーと呼ばれたフードをすっぽりかぶった男は、優しい声で静かに返事をした。

男たちはイルから剣を引くと素直に来た道を戻っていく。
イルとファラシーナは今の状況が理解できず呆気に取られてそれを見ていた。

「リー、行きましょ。」
そんなイルを無視し、渚はリーに声をかけるとすたすたと町の方向へ歩き始める。

「ちょ、ちょっと待てって、渚!」
慌てて追いかけるイル。渚は無視したまま歩き続けている。

「!」
渚に追いつこうとしたイルにリーがその杖を向け立ちはだかる。

「な・・何だ、お前?」

「・・の精霊たちよ、我に力を・・・・『疾風烈波!』」

「な・・」
ようやくイルは、リーが呪文を唱えている事に気づいた。
が、防御する間もなく、イルは強風に飛ばされ道筋の木に打ちつけられ、頭を強く打ったイルはそのまま気を失ってしまう。

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「イ・・・イル!」
ファラシーナがイルに駆け寄る。

渚はその光景をちらっと見るとリーを促し、足早に歩き去った。

「なんだい?意外とだらしないじゃないか?しっかりしなよっ!」

気がついたイルにファラシーナは笑いながら言った。
イルの頭はファラシーナの膝の上にあった。

「う、うるさいっ!油断してたんだよ!でなきゃ、やられるもんか、あんな奴に!」

イルは自分を抱いているファラシーナの腕を払うと、まだ痛む後頭部に手を充てながら立ち上がった。

「無理しなくていいんだって!今呪文を・・・」

「いい!このくらいどおってことない!」
イルは気が立っていた。
ファラシーナには関係ないのは承知していたのだが、気づかないうちに彼女にきつくあたってしまっていた。

「できるんなら、もっと早くやってもらいたかったねっ!膝枕なんかより!」

「そ・・そんなに、あたいは、・・邪魔だったのかい?・・・き、嫌われてたのかい?・・・あ、あたいは、あんたのこと、心配して・・あ、あたい・・・」

ファラシーナの大粒な瞳に涙が溢れ出てきた。

両手で顔を覆うと後ろを向き、堪え泣きし始める。
声も出さずに泣くファラシーナの両肩が震えている。

「ファラシーナ・・・」
いくらなんでも言い過ぎたと、ファラシーナに近づき後ろから彼女の肩を抱く。

「ご・・ごめん。・・俺が悪かった。」

「イルゥ~ゥ・・」

「お・・おいっ!」
いきなりイルの方を振り向くと、ファラシーナはイルの首に両腕をからめるようにして抱きつき、口づけをしてきた。
その顔に涙は一滴もない。

その代わりドキっとするような色香が・・・。

「フ・・フ・・・・」

騙したな?と慌てて彼女から離れようとするイルにしっかり巻きついた彼女は、その唇をなかなか離そうとしなかった。

 

▼その29につづく…

創世の竪琴/その29・白き無の世界?

イルが自分を助けに来てくれた?と思ったのもつかの間。目の前であつーい(?)ラブシーンを見せつけられてすっかりすねてしまった渚。 2人の心と心はまるで広い川に断絶された陸地のよう?ここから仲直りはできる ...

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