月神の娘

続・創世の竪琴【月神の娘】23・投獄されたストーカー

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渚に事情を聞こうと思っていた洋一と弟の優司だが、渚に避けられていてなかなかそのチャンスがない。
仕方なく実力行使?…渚が異世界に行った後だと思える彼女の部屋で、彼女のパソコンをつけ、月下蝶の花まで持ち込んで異世界トリップを試みた2人は、かつて渚が世話になっていた王城の中庭に出てしまい・・・・。

月神の娘/23・投獄されたストーカー

このページは、異世界スリップ冒険ファンタジー【創世の竪琴】の続編、【MoonTear月神の娘】途中の展開です。
渚の異世界での冒険と恋のお話。お読みいただければ嬉しいです。
(異世界スリップ冒険ファンタジー【続・創世の竪琴・MoonTear月神の娘】お話の最初からのINDEXはこちら
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尋問

「言うに事欠き、月巫女殿の弟だと申すか?」

縄でがんじがらめに縛られた上、槍を突きつけられ、洋一と優司は、王子らしき人物の面前に引きだされていた。

「は。誠に持って無礼千万!
月下蝶に乗って月巫女殿に逢いに来たなどと。」

兵長らしい男が、頭を垂れながら王子に言う。

「まこと弟君ならば、今、月巫女殿がここにおられないことくらいご存じであろう。」

兵長がぐいっとその鋭い刃先を優司の面前に突きつる。

「そ、そんなこと言っても・・・こっちのどこにいるか・・知らないから・・・」

いつその槍で突き殺されるかと、冷や冷やしながら、優司は小さく答える。

「まー、待て。」

「ですが、王子。」

「そっちの男は知らぬが・・・見れば、月巫女殿にどこそこ似ておるところもある。」

「そ、そうおっしゃられれば・・そうかもしれませぬな。」

兵長は、ぐいっと優司の顔を押し上げてじっと見る。

「もしそうだとしたら、月巫女殿にどう言い訳するのだ?」

はっとして兵長は、優司の顎から手をひく。

「お、王子・・・・」
その無骨な顔を真っ青にし、兵長は王子を見つめる。

「あ・・し、しかし・・証拠が何もございません。」

「うむ、そうだな。
しかし、門番に咎められることもせず庭まで入ったということ。
・・それに、あの場所は月巫女殿がお姿を消された・・月へお戻りになられた場所だ。」

「そ、それでは・・・」
ますますもって兵長の顔は青ざめる。

「が、証拠がないことも確かだ。」
イスに座っていた王子はすっと立ち上がると、優司に近寄る。

「もし本当に月巫女殿の弟君ならば、あってはならない失態だが、ここは王宮。
見ず知らずの侵入者であれば、取り押さえるのは当然。そうであろう?」

「は、はい。」
王子の威圧感に思いっきり押された感じで答える優司。

「うむ。弟君もそこのところはご理解して下さっているご様子。
とすれば、あとは、貴殿がそうであるという立証が必要となるのだが、何かあるのか?」

一応の懸念事項を無くせば、尚も威圧する王子。
いや、本人は威圧している気はないとも思える。
そこは、王子の王子たる所以。自然とにじみ出る支配者としての貫禄かもしれない。

「えっと、ひとまず縄を解いてほしいんだけど。」

「ふむ、縄くらいいいだろう。」

王子は目配せをし、兵長に優司の縄を解かせる。
が、警戒は怠ってはいない。

「ど、どうするんだ?」
まだ縄にしばられたままの洋一が小声で自由になった優司に囁く。

「うん・・・山崎さん、携帯持ってない?」

「は?・・そ、そりゃ、携帯ならズボンのポケットに。」

「オレ、机の上に置き忘れてきちゃったんだ。貸してくれない?」

「あ、ああ・・・だけど・・ここで使えるのか?」

「さー?分からないけど、何もしないよりはましでしょ?」

「あ、ああ、そうだな。」

中継地も何もない。電波が届くかどうかも分からない。
が、とにかく連絡を取れるとしたらそれしかなかった。
でなければ、牢獄行きは確実。悪くすれば死刑。

役に立つはずはないと思ったが、思いつきで月下蝶の花をアンテナの先につけてみる。

心の中で手を合わせてそれにかける優司。
念を込め祈るように。

そして・・・

-トゥルルルル・・・-

聞こえた呼び出し音に期待が高まり、心臓が止まりそうなほど早く大きく鼓動する。

-トゥルルルル・・・-

いつまでたっても呼び出し音はするのだが、応答はない。

「どうしたのだ?その小さな箱で何をしておる?」

兵長が優司にににらみをきかす。

「え、えっと……あっちの世界ならこの箱で連絡ができるんだけど」

しどろもどろに答える優司。

「あっちの世界とは?月巫女殿の世界、ということか?」

「そ、そうです。」

「だが、連絡は付かぬようだな?」

「・・・・え、ええ・・・・そのようです。」

やっぱりダメかと冷や汗たらたらの優司と洋一。

「ええい!つまらぬ時間稼ぎをしおって!
王子!こやつらは月巫女殿を調べに来た大陸内外の間者に違いありません!」

「そうだな。先週も確かネズミが一匹、月巫女殿がお姿を消された中庭でごそごそしておったが。」

「や、山崎さん・・・」
「優司…くん・・」

再び槍の切っ先を突きつけられ、2人は真っ青になって固まる。

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投獄

ーガッシャーーン!ー

2人は後ろ手にしばられたまま、有無を言わさず牢へと放り込まれた。

「どうしよう、山崎さん?こんなところにいたら姉貴だって気づかないだろうし。」

「だよな、オレたちがこっちの世界に来てるなんて思わないだろうし。」

「明日の朝になれば、姉貴、オレがいないって気づくかな?」

「いなくても部活に行ってるか友達(ツレ)のところに遊びに行ってるくらいに思うんじゃないか?
それに、それまでオレたちの命があれば…だな。」

両手を後ろで縛られたまま、洋一は鉄格子の向こうをあごで指す。

「え?」

洋一があごで指し示した先には、気絶した罪人を引きずってくる兵士の姿があった。
罪人と思われる男の服装はぼろぼろ、髪もぼさぼさで顔は無残なまで腫れ上がり、ぼぼろぼその衣服の隙間から露出している肌には、負ったばかりを感じさせる痛々しい傷が無数にあった。

「ご、拷問?」

「…だろうな。」

顔を合わせた2人は、顔色を完全に失っていた。

そして、そんな生きた心地がしない2人の耳に、見張りの牢番のひそひそ話が。

「なに?また月巫女様をかどわかそうとした輩が潜入したのか?」

「おお、どうやらそうらしい。」

「先週に続きまた…か?」

「殿下との婚礼の儀の前にさらって、自国の王妃にと企む奴ばかりだな?」

「ああ、しかも今度は言うにことかいて、月巫女様の弟だとか言ったんだそうだ。」

「はあ?そんなバレバレのウソついたのか?」

「らしいが、馬鹿な奴だな。証拠がなくて、よけい殿下の怒りを買ったってわけさ。」

「良くて拷問の上、炭鉱送り。さもなきゃ拷問の上、見せしめに処刑場で縛り首」

「いや、月巫女さまの弟と言ったんだ。闘技場で猛獣と戦わせるんじゃないか?」

「なんでだ?」

「本当に月巫女様の弟君なら、弟の窮地を感じないわけはあるまい。」

「おお!そうだな!なるほど、それでコトの真偽も分かり一石二鳥か?」

「ああ。」

「よし、あいつらの今後の処理を賭けないか?」

「おお、いいぜ、オレは闘技場だ。」

「なんだ、オレだって闘技場にかけようと思ったんだぞ?」

「や、山崎さ~~~ん・・」

「う、うろたえるな!な、なんとかなる……」

「なるの?」

「………ゲームなら主人公は、いや、主人公パーティーだったとしても、危機にあっても結局は助かるんだが……」

「これ、ゲームじゃないっスよ、山崎さん……」

恨めしげに、そして不安げに洋一を見る優司。

 

▼月神の娘・その24へつづく

続・創世の竪琴【月神の娘】24・姉貴はお姫様

王宮の中庭に出てしまった洋一と優司。 兵士に取り囲まれて王子から尋問を受ける。 そして、投獄。2人を待っているのは拷問か、野獣との決闘か? Contents1 月神の娘/24・姉貴はお姫様1.1 救世 ...

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