妖アパ、妖怪アパートの幽雅な日常は、読んでいるだけで、登場人物のその活き活きとした様子が溢れ出てくる。その様子に私自身も活気づいてくる。
そして、脳内劇場に、彼らは勝手に登場♪…多少(?)私色には染まっているが、妖アパのキャラには違いない。
そんな私の脳内劇場で動き始めた「妖怪アパートの幽雅な日常」番外編のお話を書いていこうと思う。
Contents
妖アパ・プチの世界探検記、はじめに、お断りとお願い
ただ、登場人物は、すべからく私カラーに染まっていると思うので、その点はお許し願いたい。特にプチワールドの魔の仲間たちは、特に。
香月氏のような才能はからっきしないし知識もない為、しょぼくなる点は平にお許し願いたい。
m(__)m
そして、そんな私のない想像力のわきたて・かきたて役として、pixabayのステキな写真・画像を使わせていただいている。ステキなフリー画像の提供に、心から感謝だ。
プチの世界探検記、イントロ・0
「ご主人様、ご主人様っ!起きてください!大変なんです!!」
「ん~~・・・・」
深夜、妖怪アパート寿荘の一室である稲葉夕士の部屋に、助けを求める声が響く。
だが、部屋主であり、助けを求められた本人は、うるさいなぁと言わんばかりに軽く顔をしかめただけで、ごろりと寝返りを打つ。
「ご主人様!ご主人様っ!大変なんです!どうかお助けください!でないと私どもの存在が!」
「なんだよ、存在がって・・・・」
「ご説明しますから、寝言なんかで答えてないで、起きてくださいましっ!」
(ん~~・・・面倒だなぁ、今何時だと思ってんだ?)
髪の毛をくいくい引っ張られて、目をこすりこすり起きた夕士の寝ぼけ顔は、目の前にある光景に、一気に生気を取り戻した(笑)
「なんだ、こりぁあ?」
思わずそのまま後ずさる。
「おい、フール、なんだよ、これ、どうなってんだよ?」
上体を起こした自分の肩の上に乗っていると思われた、髪の毛を引っ張って起こした魔道書「プチ・ヒエロゾイコン」の案内人であるフールをわしづかみにし、目の前に引き出すと…。
「な、なんだ?お前、フールじゃないじゃないか!、あ、いや、もしかして、フールか?」
その姿を見た瞬間、手につかんでいる存在が、自分が想定していた人物(?)ではないと判断したものの、すぐそれを否定した。理由は、自分を呼んだ声と、そのものが発する気が、想定した人物(?)、フールだと悟らせたからだ。
「なんだよ、その姿は?どうしたんだ?衣装替えか?」
「はい、あ、いえ、ご主人様、衣装替えというのは違います。こうなってしまったというのも、今現在大変なことになっている状況が起因しておりまして、ですから、ご主人様にお助けいただこうと、お起こしさせていただいたのでございます。」
いつもどおり、華麗に片膝を織って礼をつくそうとしたフールだが、丸々と太ったピエロのぬいぐるみの姿ではそうはいなかかった。
「ぷっ!」
思わず吹き出すところだった夕士だが、尋常ではないフールの雰囲気と目の前の光景が、そうさせるのを押しとどめた。
「お願いって?…お前がそんな姿になったのと、目の前のこのおかしな光景と関係あんのか?」
「はい、さようでございます、ご主人様。ご主人様の目の前に開いている本の光景は、我々プチ・ヒエロゾイコンの世界へと続く道なのでございます。」
「プチの世界へ?」
「はい、さようでございます、ご主人様。」
フールは今一度、丁寧にお礼をしようとして、出っ張ったお腹がつっかえて、コトン♪と転がる。
「ぷ・・・いけね、笑うとこじゃねえ!」
そして、再び笑いかけた夕士は、その笑いをこらえ、真剣な表情に戻して問う。
「”助けてくれ”と言ったってことは、プチの世界で何かあったのか?」
「はい、さようでございます。」
「それはマズイことなのか?オレでどうにかできることなのか?」
「はい、というより、ご主人様でなければできぬことでございます。」
「オレでなくては?」
「はい。お願いでございます。わたくしどもプチ・ヒエロゾイコンの世界におみ足をお運びくださいまし。そして、封印されし我が輩、ご主人様の下僕を解放してくださいまし。」
「封印された?あいつらが?」
「はい、さようでございます。わたくしもこの身体は仮の身。本体は封印されているのでございます。しかし、私は仮にもご主人様とプチの住人である仲間の仲介人。精神を飛ばし、このピエロのぬいぐるみに入ってご主人様のところへと参ったわけでございます。」
「な、なるほど。で、なんで封印なんかされたんだ?」
「はい、事情は…おいおいご説明させていただきますので、ひとまず、私どもの世界にいらしていただけないでしょうか?今のままですと、世界は無に帰してしまいます!」
「無に?……まるで、ネバーエンディングストーリーだな?」
「はい?」
「いや、知らなければいいんだ、しらなければ。ま、いいや、とにかく、プチのみんなが危機ってんなら、行かない道理はないからな!」
「ありがとうございます、ご主人様!さすがは、われらがお慕いするご主人様です!」
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プチ・ヒエロゾイコンの世界へ!
「それでは、枕もとのランプと時計、そして水差しをお持ちください」
フールにそう言われて、オレは枕元に置いてあるそれらに目をやった。
「ん?これ、持っていくのか?」
「はい、ここに帰るときのアイテムとなります故、あちらの世界で決して失くされませんように。」
「なるほどな。帰るためのアイテムになるんじゃ、持っていかないはずはないか。しかし、手で持つと手がふさがっちまうから、リュックにでも入れていくか?」
「いえ、ベルトにつけていけば大丈夫でございます。」
「ベルトに?大きすぎるぞ?」
「その点は大丈夫でございます。ひとまず手早く身支度をお願いできますでしょうか、ご主人様。」
「よっしゃ!」
なにやら悪いことが起こっているらしいが、まったく未知のプチの世界に行けるというんだ。これが興奮せずにはいられないのが当然だろ?
『$&%$>$#%…』
そんな場違いなわくわく感を押さえつつ手早く着替えると、フールが何なら呪文をとなえた。
すると、枕元に置いてあった結構大きめのランプ、水差し、置き時計の3つのアイテムは、ちょうど手頃な大きさになってオレのベルトに装着された。
「水、こぼれねぇんだな?ガラス同士なのにランプとぶつかっても平気か?」
「はい、魔法がかかっております故、大丈夫でございます。」
「なるほど。」
「では、参りましょう、ご主人様!」
「おおっと待った!オレを置いていかせはしねーぜ!」
「長谷、なんでアパートに?」
ドアを勢いよく開けて飛び込んで来ると同時に叫んだ人物。親友の長谷が景色を写しだしている本とオレたちの間に立ちはだかった。
「寝ていたらな~~んか悪い予感がして目が覚めたんだ。だからバイクに飛び乗ってやってきたってわけさ。」
はー、さいですか・・・
オレはフールとお互い肩をすくめ合うと、長谷に視線を戻す。
「ダメつって、はいそうですかと引き下がるお前じゃねえだろ、長谷。いいか?足手まといにはなるなよ?」
「それはこっちのセリフだぜ!」
ポキポキと指を鳴らす長谷。どうやらすでに臨戦態勢?わくわく感はオレにもフールにもすっっげぇ伝わってくる。
「ま…ともかく、行くか?」
「はい、ご主人様。くれぐれもご用心を。人の世ならざる場所であります故。」
「わかってるって。」
「行こうぜ、稲葉!」
こうしてオレたちは、目の前で光を発し、本の奥へと続く道を示している本へと足を踏み入れた。
そう、そのときは軽く遊びに行く感覚だったんだ。
あのプチたちとフールのこと。助けを求めてきたといっても、そんな切羽詰まった非常事態というわけでもなく、軽く解決できるんだろう、そう思ってたんだ。
オレも、長谷も。
気分は、異世界プチ冒険旅行。
すぐ帰ってこられると思っていた。
その部屋と本との境界線を越えた瞬間、一瞬だがフールが不気味な笑みを浮かべた気がした。が…そんなことなどそのときのオレには全く気にかからなかっただけにと止まらず、一瞬後にはそんなことも忘れ去っていた。
後で思えば、あのとき、プチ(魔道書)を取り出してフールを喚べばよかったんだ。本物のフールを。